概要
佐久間ダムは電源開発(株)により1953年4月に着工され、1956年10月に完成とわずか3年半の工期で、愛知県と静岡県境の天竜川中流部に建設された。ダムの高さは155.5mで、重力ダムとしては1962年に完成した奥只見ダムの157mに次いで日本第2位で、発電所の最大出力は35万kwである。ダムの建設にあたっては米国から大型建設機械や施工技術を導入して大きな成果をあげ、ダム建設技術の発展に貢献した。当作品は第1部から第3部を再編集した総集編にあたるが、その間の事情は以下に述べられている。
「電源開発会社の委託で岩波映画が製作した佐久間ダムの建設記録は、次の4作である。
『佐久間ダム第1部』(1954)。着工からバイパストンネル完成、仮締め切りによる流路変更までを描く。第9回毎日映画コンクールで教育文化映画賞を獲得、映画館で上映された。推定観客数300万とされる。多くの人に記憶されている『佐久間ダム』である。
『佐久間ダム第2部』(1955)。ダムサイトの掘削、工事用道路やコンクリート製造供給施設の建設、国鉄飯田線の付け替え工事等、ダム本体工事の準備段階を描く。推定観客数250万程度とされる。
『佐久間ダム第3部』(1957)。ダム本体工事と発電所工区工事、完成まで。推定観客数は大きく減って30万程度とされる。
『佐久間ダム総集編』(1958)。第1~3部の原版ネガを解体して再編集し、建設の一部始終を纏めたもの。映画館向けではなく、技術記録、教育利用、企業PRとして利用された。現在、原版として残されているのは、この版である。」
[吉原順平著「ショートフィルム再考-映画館の外の映像メディア史から Ⅴ 2 「PR映画」の発展と大衆化の試み 映画館とフィルムライブラリー――2つの「佐久間ダム」から引用]