初回公開日時:2019年 8月 2日
最終更新日:2021年5月17日
2000年代以前の活動については、「土木学会の100年」(2014)への掲載文を再編集しています。なお、委員会および外部動向の変化に沿って記載しているため、一部で年代順となっていない箇所があります。
1957年4月、原子力土木委員会の前身である原子力土木技術委員会が設立された(福田武雄委員長)。1957年7月に原子力土木技術委員会に改称(福田武雄委員長)し、原子炉の耐震問題、遮蔽コンクリート、廃棄物処理問題などの情報収集を行った。1962年7月に左合正雄委員長に交代。「理工学における同位元素研究発表会」、「原子力総合シンポジウム」など各学協会との共催行事や原子力コンクリート小委員会への研究協力を行うほか、「特集・原子力と土木技術」を取りまとめた(土木学会誌第53巻第2号、1968年2月発行)。この間、原子力発電所の建設に伴う土木工学上のさまざまな課題を提起した。
1970年7月、原子力土木委員会として改組(永田年委員長)し、原子力立地部会、原子力耐震部会、原子力廃棄部会の3部会を組織し、研究活動に入った。「特集・原子力発電のよき理解のために」(学会誌1972年2月号)、「特集・原子力発電への期待」(1978年4月号)を取りまとめ、会員の原子力発電への理解を深めた。
各部会の活動内容として、原子力コンクリート部会は、1972年に「原子炉構造物文献集」を、1973年に「プレストレスト・コンクリート原子炉構造物(圧力容器、格納容器)設計施工要領」を、1976年に「同上・設計施工要頷」本文解説」を刊行した。原子力立地部会は1971年に「わが国における原子力発電所の立地現況」を刊行した。科技庁原子力平和利用研究委託費により「原子力発電所の地下立地方式に関する試験」(1973)および「同上・地下立地の安全性評価に関する研究」(1973)を報告。1974年に「原子力発電所沖合立地方式調査研究報告書」を作成した。原子力廃棄部会は、「原子力発電所の廃棄物処理処分について」を土木学会誌1971年5月号に掲載するとともに、1973年に「放射性廃棄物の地中処分の検討-特に処分場が内陸・島に立地する場合の安全性の評価について-」、「放射性物質焼却炉からの排気による拡散沈着の評価に関する報告」を作成した。原子力耐震部会は、「原子力発電所の耐震設計に関する研究 I」(1971)および「原子力発電所の耐震設計に関する研究 Ⅱ~Ⅴ」(1973)を作成した。各部会とも所期の目的を達成し、1979年4月の改組に伴い解散した。
1979年9月、千秋信一委員長のもと新部会(地盤部会)が発足し、「原子力発電所の重要構造物が設置される地盤や周辺斜面の調査試験法および耐震安定性の評価手法」に関する調査研究を開始した。原子力発電所の立地・建設技術の標準化・基準化を通して、在来の岩盤立地技術の高度化に取り組み、1985年に「原子力発電所地質・地盤の調査・試験法および地盤の耐震安定性の評価法」として取りまとめた。この研究成果は1988年2月、国の安全審査内規に取り入れられ、原子力発電所の設置許可申請時の実務において参考とされ、安全かつ合理的な立地・建設に貢献している。1984年10月に地中震度部会を設置し、「地中震度の評価に関する研究」を開始する。1987年、地盤および地中構造物の等価静的解析で用いるべき設計震度を標準化し、委員会報告にまとめた。同年、限界状態設計部会を設置し、「限界状態を考慮したAクラス土木構造物の耐震設計に関する研究」を開始した。耐震重要度の高い鉄筋コンクリート地中構造物の限界状態設計法を基準化し、その成果を「原子力発電所屋外重要構造物の耐震設計に関する安全性照査マニュアル」(1992)として刊行し、講習会を開催してその普及に努めた。
原子力利用についての土木技術に関する問題の調査研究を行い、学術、技術の進展に寄与することを目的に委員会活動を実施。委員長は、1994年度に千秋信一委員長から桜井彰雄委員長に、さらに2001年度に加藤正進委員長に交代した。当期間における主要な活動は以下のとおりである。
将来にわたる電力の安定供給、エネルギーセキュリティ、地球環境問題などを考えると、わが国にとって原子力発電所の推進は不可欠なシナリオである。一方、発電所の新規立地点の確保は容易ではなく、電力の大需要地からは一層の遠隔化が進み、送電コストの増大や系統の信頼性などが大きな問題となってきた。このような状況に鑑みて、1991年に新立地部会を設置し、「原子力発電所の新立地土木技術の体系化に関する研究」を4か年計画で開始した。この研究は、第四紀地盤立地、地下立地、海上立地などの立地拡大技術の体系化を行うとともに、それら新しい立地方式が地域に円滑に受け入れられ、かつ自然と共存して、価値観の高い地域環境や海洋環境を新たに創造するといった立地拡大を支援する技術の開発を行うことを目標としており、開発と環境の調和を目指した地球環境時代にふさわしい研究として取り上げられた。多方面の専門家の参加による最新の知見に基づいた種々の検討を行い、1996年3月に「原子力発電所の立地多様化技術」を土木学会から刊行した。引き続き新立地部会では主に技術の高精度化、実証を目的とした「人工島式原子力発電所の立地技術の体系化に関する研究」を1996年から4か年にわたり検討し、1999年に「原子力発電所の立地多様化技術(追補版)」を刊行し、活動を終了した。
新立地部会のうち、活断層については、兵庫県南部地震以降、国、地方自治体、各種機関において活断層調査が行われていることから、耐震設計における断層活動性評価技術の重要性を踏まえ、新立地部会(断層活動性分科会)を発展的に解消し、新たに活断層評価部会を2003 年度に発足させた。活動成果として2004年3月に「原子力発電所の活断層系評価技術-長大活断層系のセグメンテーション」を刊行(断層活動性分科会として)した。
耐震構造工学面では、1997年に耐震性能評価部会を発足させ、「原子力発電所鉄筋コンクリート製地中構造物の耐震性能照査法の体系化研究」を実施した。この研究は、兵庫県南部地震における鉄筋コンクリート構造物の甚大な被害に鑑み、原子力発電所屋外重要土木構造物の耐震安全性のさらなる向上を目的としたものである。コンクリート構造および地盤に関する研究者、技術者、実務者がそれぞれ互いの領域に踏み込んだ議論を重ね、4か年の研究成果として2002年に「原子力発電所屋外重要土木構造物の耐震性能照査指針・同マニュアル」を、さらに上下地震動に対する詳細検討を行った成果を「原子力発電所屋外重要土木構造物の耐震設計における動的上下動の影響評価」(土木学会論文集V 部門 2004.5)にとりまとめた。2005年に「原子力発電所屋外重要土木構造物の耐震性能照査指針(改訂版)」を刊行し、部会活動を終了した。
1999年、北海道南西沖地震を契機とした津波対策への機運の高まりを受け、原子力発電所の一層の安全性向上を目指すために津波評価部会を設置した。それまでに培った津波の波源や数値計算に関する知見を集大成して、原子力発電所の設計津波水位の標準的な設定方法を提案した。提案した手法の特長は、津波予測の過程で介在する種々の不確定性を設計法の中に反映した点である。成果物として、2002年に「原子力発電所の津波評価技術」を刊行した。
原子力発電所の基礎地盤および周辺斜面の地震時安定性評価手法の高度化ならびに体系化を図ることを目的として地盤安定性評価部会を2001年度に発足させた。上下地震動に対する詳細検討を行った成果を委員会報告「上下動を考慮した原子力発電所基礎地盤及び周辺斜面の地震時安定性評価」(土木学会論文集第Ⅲ部門2004.3)として公表した。引き続いて、基礎地盤、周辺斜面のすべり安定性に対する確率論的評価手法の検討、岩盤物性の合理的な評価、地盤減衰の慣用値の妥当性、すべり安定性評価基準値について検討を進めた。
原子力発電所の放射性廃棄物の処分に関わる調査研究の重要性の高まりを受けて、1994年に地下環境部会を設置した。高レベル放射性廃棄物の処分は、原子力発電を進めていく上で不可欠であり、日本では地下数百m~千m 程度の坑道内に処分する概念が検討されており、土木関連技術の寄与する割合は大きいものとなっている。地下環境部会では、処分を実現させる上で特に重要と考えられる処分候補地選定の基本的考え方、ならびに人工バリア・地下施設の設計・安全評価など処分技術の体系化を図ることを目的とした。成果の土木学会会員への還元と調査研究の推進に役立てるため、毎年の年次講演会で研究討論会を開催し、2004年に「高レベル放射性廃棄物地層処分技術の現状とさらなる信頼性の向上に向けて―土木工学に関わる技術を中心として―」を、2006年に「精密調査選定段階における地質環境調査と評価の基本的考え方」を成果物として刊行し、部会活動を終了した。
この期間の原子力土木委員会活動には、以下の技術動向・災害が大きな影響を与えた。原子力土木委員会では、これらの課題解決に対応するため、活断層、地盤、構造物、津波などの分野において必要な調査研究テーマを設定して、関連技術分野の体系化・標準化とその成果公表、被災原子力発電所の調査分析、情報発信などの活動を進めた。
1)運転年数30年を超える原子力発電所における鉄筋コンクリート製土木構造物の経年化対応
2)原子力安全委員会(当時)による発電用原子炉施設に関する耐震設計審査指針の改訂(2006年9月18日決定)
3)2007年新潟県中越沖地震による柏崎刈羽原子力発電所被災
2005年構造健全性評価部会を設置し、原子力発電所屋外重要土木構造物の構造健全性評価手法の体系化・高度化について調査・研究を実施した。研究成果を「原子力発電所屋外重要土木構造物の構造健全性評価に関するガイドライン」(2008)として取りまとめ、講習会を開催し、技術の普及を行った。さらに、「原子力発電所屋外重要土木構造物の構造健全性評価に関するガイドライン2012」(2012)を刊行し、2012年10月に講習会を開催した。
地盤安定性評価部会にて、引き続き、基礎地盤および周辺斜面の安定性評価手法の体系化について調査・研究を実施し、研究成果を「原子力発電所の基礎地盤及び周辺斜面の耐震安定性評価技術〈技術資料〉」(2009)として刊行した。同年3月に「原子力発電所の基礎地盤及び周辺斜面の耐震安定性評価技術に関するシンポジウム」を開催し、成果の還元を行った。
2007年7月の新潟県中越沖地震による柏崎刈羽原子力発電所被災を受け、新潟県中越沖地震後の柏崎刈羽原子力発電所土木構造物の健全性WGを発足させ、新潟県中越沖地震後の柏崎刈羽原子力発電所土木構造物を対象にして、構造物の点検方法、健全性の評価ならびに現地調査・点検結果を踏まえた現状の健全性を評価した。柏崎刈羽原子力発電所土木構造物の被災状況等について、2007年度に「新潟県中越沖地震被害の緊急報告会」を土木学会全国大会で報告するとともに、「2007年新潟県中越沖地震後の柏崎刈羽原子力発電所土木構造物の被害・復旧状況」に関する報告会を2010年4月に開催し、WG活動を終了した。
津波評価部会では、2002年に刊行した「原子力発電所の津波評価技術」をより高度化させるために、確率論的津波ハザードの解析手法や、津波波力、津波による海底砂移動などについて調査・研究を実施した。2007年に委員会報告「津波評価手法の高精度化研究-津波水位の確率論的評価法ならびに分散性と砕波を考慮した数値モデルの検討-」を土木学会論文集に掲載した。
活断層評価部会において、引き続き「海域活構造評価、活断層調査による震源・断層評価法の信頼性向上、震源断層のための活構造調査手法、などについて調査・研究」を実施した。2012年に「原子力発電所の耐震設計における最近の検討事例に見る活断層調査・評価技術」(2012)電子版を公開し、委員会報告「『原子力発電所の耐震設計における最近の検討事例に見る活断層調査・評価技術』の公開について」を土木学会誌2012年9月号に掲載した。後述する原子力土木委員会規則の改変に伴い2014年度に活動を終了し、断層活動性評価の高度化小委員会へと発展的に改組された。
2011年東北地方太平洋沖地震津波による原子力発電所被災が発生する。東日本大震災における原子力発電所の甚大な津波被害は技術面のみならず社会的にも関心を集めた。このことから、原子力土木委員会では「原子力発電所の津波評価技術(2002)」による東北地方太平洋沖地震津波を評価して公開するとともに、当該地震および津波の解明とその教訓について土木学会東日本大震災対策本部と連携して情報発信を行うとともに、委員会の改革に取り組んだ。
社会からの問い合わせに対応するために、2011年4月に「原子力発電所の津波評価技術(2002)」策定の経緯、社会一般からの質問への回答ならびに同書電子版を委員会サイトで公開した。続いて、「原子力発電所の津波評価技術(2002)」の検討経緯や学術的性格などについて土木学会長見解を公開した(2011年5月)。一方、津波評価部会では、2002年以降に取り組んでいた確率論的津波ハザードの解析手法を「確率論的津波ハザード解析の方法(2009)」として2011年11月に原子力土木委員会サイトで公開した。同月に「津波研究成果報告会」を開催し、報告会資料を委員会サイトで公開した。『土木学会原子力土木委員会津波評価部会策定の報告書「原子力発電所の津波評価技術(2002)」について』を土木学会長見解として土木学会東日本大震災情報共有サイトで公開(2012年8月)した。
原子力安全土木技術特定テーマ委員会(委員長:当麻純一)を組織し、土木学会主催震災シンポジウム(2012年3月、2013年3月)において成果発表するとともに、2013年7月に講演会「いま、原子力安全を考える」を開催した。委員会活動成果物として「原子力発電所の耐震・耐津波性能のあるべき姿に関する提言(土木工学からの視点)」を土木学会東日本大震災情報共有サイトで公開した(2013年7月)。「津波推計・減災検討委員会」に委員派遣して、「津波推計・減災委員会報告書」に「原子力発電所の津波評価技術(2002)」の主要部分を反映させ、本評価技術を一般化・汎用化した(2012年6月)。また、東日本大震災報告書編纂委員会に委員派遣し、東日本大震災合同調査報告土木編5「原子力施設の被害とその影響」の編集を実施した。
2011年7月に就任した当麻純一委員長の招集により「臨時委員会」が開催され、今後の委員会運営にあたって、①客観性・透明性の一層の確保、②社会への積極的な情報発信、③委員等関係者の自主的な調査研究活動と意見交換、を重視する方針が表明された。2013年1月に委員会声明「原子力土木委員会の改革について」を委員会ホームページにて公開し、上記方針に対する具体的な施策を示した。同年5月に委員長選挙にて選出された丸山久一委員長の下、2013年度には原子力土木委員会の委員会規則や申し合わせ事項、委員構成などについて改革が行われた。特に、原子力発電所の立地に関連する調査・研究が活動の主体であった点を改め、原子力施設の安全性にかかわる研究・調査を主体に、国際的な技術支援・人材育成など、近年の原子力の置かれた状況を踏まえたより幅広い適用性を有する活動内容へと変革が行われた。これらの委員会改革については土木学会誌2014年5月にて紹介された。
委員会規則の変更により、従来の部会は、小委員会として随時再編されることとなった。地盤安定性評価部会が改組され2013年に設置された地盤安定性評価小委員会では、原子力発電所の基礎地盤および周辺斜面の安定性評価手法の高度化ならびに体系化を行い、公開シンポジウム「原子力発電所周辺斜面の安定性評価の高度化-地震作用の増大にそなえて-」を開催(2015)し、研究成果を公表した。また、2013年に断層変位評価小委員会を発足させ、断層変位を合理的に評価し、可能な対応を地域全体で考えていくための方法論を探るとともに、地域社会に客観的な情報を発信した。2015年7月に断層変位評価に関するシンポジウムを開催するとともに、断層変位評価小委員会研究報告書を公開した。活断層評価部会の活動成果については前述のとおりである。
2017年7月、委員長選を経て小長井一男委員長に交代。当麻前々委員長、丸山前委員長の意思を継承し、電力会社からの受託研究に依らない自主的な調査研究活動の拡充を図るとともに、原子力土木委員会の活動の透明性を確保するために委員会規則の改正などに取り組んだ。特に、震災後の当委員会への批判や、他分野における研究不正の発生状況を踏まえ、大学における利益相反マネージメントや受託研究締結審議などの最新の取り組みを積極的に委員会活動に反映させた。
東日本大震災後に研究活動のほとんどが電力会社からの受託研究であったとの指摘を受けたことをから、委員会活動における自主的な調査研究活動の拡充を行った。2015年7月に、国際機関における地盤ハザード、断層変位関連タスクに関するレポート作成について、国内専門家として技術サポートすることを目的に、国際規格研究小委員会を設置した。また、2019年7月には、社会との原子力発電の安全性についての共考と協働の向上を目指し、リスクコミュニケーション小委員会を設立した。続く2020年11月には、原子力土木委員会における技術資料の標準化のあり方を検討し,原子力関係の他学協会での活動情報に関する情報の収集と当委員会の成果の発信を行うために、規格情報小委員会を設置した。これらの自主的な研究活動を実施する小委員会は、電力会社からの受託研究資金には一切依存しない体制で活動を実施している。
委員会活動の透明性を確保するために、委員会ホームページを大幅に更新し、これまでの活動経過も含めた委員会活動の内容や成果物を積極的に情報発信した。さらに、後述する委員会規則改正の議論を踏まえ、委員会議事録に加え、委員会資料の公開を開始した。また、当委員会における考えや姿勢を社会一般に発信することを目的に、レターの公開を開始した。2020年5月に「原子力土木に係る基本的な考え方と今後の研究の方向性について」を公開し、今後の活動方針として、①客観性・公開性の一層の確保、②社会への積極的な情報発信、③自主的かつ多面的な調査研究活動の展開を掲げた。2020年12月には、「委員会活動の客観性・公開性の確保に向けた今後の検討方針」を公開し、基本方針①客観性・公開性の一層の確保に関して、現状では利益相反への対応が不十分であることを認めた上で、土木学会や他学会、公的な研究機関等での事例を参考に、実効性のある利益相反マネージメント手法を委員会運営に取り入れていくことを掲げた。
2021年に東日本大震災から10年の節目を迎えることを受け、震災直後に寄せられた当委員会への批判と対応状況を再度見直し、委員会改革が不十分であった点を改善するために、2020年11月に委員会規則・内規の改正を行った。この改正では、成果物審議における議決権の所在や、委員の指名に関する方針を明記するとともに、委員会資料を原則公開とするなど、委員会における透明性の一層の確保が図られた。新規則は2021年6月に施行された。さらに、2021年4月には、土木学会受注研究取扱規程の一部改定により研究の公益性と利益相反への配慮が求められることになったことを受け、受託研究契約の締結前に、研究内容および利益相反に関する事前審議を実施することを必須とした。また、技術資料などの委員会成果物の透明性・信頼性を高めるために、前述した規格情報小委員会を設立し、当委員会における成果物の審議過程についての検討を開始した。
2015年7月、断層変位評価小委員会は研究成果として、「断層変位評価小委員会研究報告書・断層変位評価に関するシンポジウム講演論文集」を刊行した。2018年には断層活動性評価の高度化小委員会として改組し、上載地層法が適用できない場合に断層破砕部の性状から活動性を評価しうる手法の確立を目指した研究を実施した。国内の活断層、非活断層の調査結果に基づき、非活断層抽出の調査フローと留意点をとりまとめた。
2015年、鉄筋コンクリート製地中構造物の耐震性能照査手法を高度化するとともに、屋外重要土木構造物に対する標準的な方法を構築することを目的として地中構造物の耐震性能照査高度化小委員会を設置した。小委員会の研究成果を取り纏め、2018年に「原子力発電所屋外重要土木構造物の耐震性能照査指針(2018年版)」として刊行した。2020年度には2018年度以降の研究成果を、屋外重要土木構造物の耐震性能照査指針[2021]として取り纏めた(2021年度発刊予定)。
時刻歴非線形解析手法、不連続体の解析手法および断層変位評価の解析手法のさらなる高度化を行うために、2015年に地盤安定性高度化小委員会を設立した。当小委員会は2018年に研究成果として「地盤安定解析高度化小委員会研究報告書」を刊行し、同小委員会活動を終了した。同年7月、2009年以降に活動してきた「地盤安定性評価部会(2010~2012)」、「地盤安定性評価小委員会(2013~2014)」、「地盤安定解析高度化小委員会(2015~2017)」の部会・小委員会で審議・検討した結果の一部を体系化することを目的とした、地盤安定性評価小委員会を設立した。当小委員会は2018年に公開シンポジウム「地盤・斜面の安定解析技術の高度化を目指して」を、2019年度に土木学会年次学術講演会において研究討論会「地震・津波に対する重要インフラのリスク評価への高性能計算の活用」を、2020年に講演会「原子力施設に関する地盤安定性評価技術の現状-どこまでできて、何が課題か-」を開催し、技術の現状に対する認識を深めるとともに、将来の検討課題についての意見交換を実施した。これらの活動内容も踏まえて、研究成果を技術資料「原子力発電所の基礎地盤及び周辺斜面の安定性評価技術<技術資料>(2020年度版)」として取り纏めた(2021年発行予定)。
原子力発電所の津波に対する安全性評価技術を高度化・提案することを目的として2016年に津波評価部会を改組し、津波評価小委員会を設置した。同年、2002年に刊行した「原子力発電所の津波評価技術2002」以降の研究成果を取り纏め、「原子力発電所の津波評価技術2016」として公開した。2020年には同評価技術の英語版を公開し、国内外への技術の普及を図った。また、2019年度には津波漂流物衝突評価ワーキンググループを小委員会内に設立し、小型船舶等の漂流物が津波防護施設(防潮堤など)に与える現実的な評価手法の構築に着手した。研究成果の一部は、学会等で査読付き論文として公開された。
原子力土木は多分野にまたがる技術が必要とされる総合工学であり、原子力施設の安全性向上には多分野の協働が欠かせないとの観点から、地震工学委員会、地下空間研究委員会、地球環境委員会と共同で土木学会内に第Ⅷ部門(分野横断)という新しい枠組みを構築した。これにともない、原子力土木委員会は、従来の第Ⅶ部門(環境・エネルギー)から、第Ⅷ部門(分野横断)へと移行した。また、原子力分野以外からの意見を収集するために、土木学会年次学術講演会における研究討論会の企画や、原子力土木委員会開催に併せた公開講演会を継続して実施し、様々な分野からみた原子力安全のあり方、課題について情報収集・意見交換を行った。これらの情報については、研究小委員会(リスクコミュニケーション小委員会)の設立や、研究計画の立案などに活用された。
2021年6月、委員長選を経て中村委員長に交代。原子力施設の安全に関わる技術的課題に多角的に取り組むとともに、委員会成果物の審議体制確立に向けた活動を実施中。