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原子力土木委員会

原子力土木委員会は、原子力利用についての土木技術に関する問題の調査研究を行い、学術、技術の進展に寄与することを目的として1970年に設立されました。

2011年の東日本大震災による原子力設備の被災やその後の社会状況を踏まえ、以下を重視して活動を行っております(レター「原子力土木に係る基本的な考え方と今後の研究の方向性について」、令和 2 年 5 月 1 日)

① 客観性・公開性の一層の確保

② 社会への積極的な情報発信

③ 自主的かつ多面的な調査研究活動の展開

 


 

ホームページ更新履歴(過去の更新履歴)

・2022.10.11 委員会資料を更新しました
・2023.01.20 公開講演会を更新しました
・2023.01.30 委員会資料、委員会名簿、公開講演会を更新しました
・2023.02.03 公開講演会実施報告(2023/01/27)を公開しました
・2023.03.02 委員会資料を更新しました

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新着情報

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公開講演会実施報告(2023/01/27)

投稿者:吉井 匠 投稿日時:金, 2023-02-03 09:23

公開講演会(2022年度第3回原子力土木委員会第1部) 実施報告

 

原子力土木委員会幹事団

 

1.講演会開催情報

 

  日時:2023年1月27日(月)13:00-14:30

  場所:オンライン開催(Zoomウェビナー)

  講師:糸井 達哉 様(東京大学 大学院工学系研究科 建築学専攻 准教授)

  演題:「外的事象に関わるリスク評価技術の標準化に関する最近の取り組み」

  概要:

 2011年福島第一原子力発電所事故以降の日本原子力学会などにおける外的事象に関わるリスク評価技術の標準化に関係する取り組みなどを概観しながら、事故の教訓が日々の活動にどの程度反映ができているか、また、そもそも教訓として学べていないことは何かについて私見を述べる。

 参加人数:143名

 

2.講演会報告

 

 講演会冒頭で、原子力土木委員会 中村委員長より開会の挨拶があり、続いて岡田幹事長より糸井氏の経歴が紹介された。

 糸井氏の講演では、①2012年以降のリスク評価技術の標準化などに関わる活動、②原子力安全の議論の場の創成の試み、といったテーマに関する講演が行われた。

 まず、前提として、福島第一原子力発電所事故の教訓は学協会を含む研究開発・高等教育の諸活動に根付いたのか、という問題意識が述べられた。

 ①においては、この問題意識のもと、2011年以降の福島第一原子力発電所事故の教訓の反映,リスク評価技術などの標準化に関わる活動と②で述べられる関連する大学での活動の紹介を通して、事故の教訓が日々の活動にどの程度反映ができているか、また、そもそも教訓として学べていないことは何かについて、多岐にわたる資料に基づき説明された。

 ②においては、東北地方太平洋沖地震を踏まえた東京大学の取り組み、福島第一原子力発電所事故を踏まえた東京大学における原子力安全に係る教育、これまでに東京大学で講演いただいた方々(2021年以降)の紹介、リスクマネジメントにおけるリスクとコストの比較(安全文化)、人材育成に関わる課題、原子力安全規制の本質、原子力安全のマネジメントの課題、地震ハザード評価の不確かさへの対応で重要なこと、標準化において重要なこと、地震リスク評価の本質、人材育成に必要と考えられる要素、等について説明された。

 質疑応答の時間においては、以下のような質問があり、各質問への応答がなされた。

Q:示方書の改定の審議においてもよく議論されることではあるが、リスク評価と設計とは別もののように捉えられることもある中、本質的には両者の検討プロセスの中で、同じようなことが実施されているようにも考えられるがいかがか?
A:その通りである。本来は、耐震設計の中でも同じようなことは行われなければならないが、現状ではそれぞれの専門分野における個別の検討が中心になっている場合が多いのではないか。本質的には、地震PRAも耐震設計もその目的は同じであって、将来的にどのように耐震設計に地震PRA的な視点を入れていくか(同時に地震PRAに耐震設計の視点をより取り入れていくか)、これらは対立する概念ではなくて、将来的には統合されていくべきものと考える。現状の耐震設計で足りない部分というのは、重要度に応じて安全余裕をどのようにつくり込んでいくか、それにより、極めて重大な事故をどう防ぐか、というところまで含めて充実させていくこと、そういうところがPRA的な考え方に基づいて行われていくのであれば、どちらの方が大事なのかという議論は不要になる。

Q:これからPRAを設計の実務に実装していく時に何が課題になるか?
A:本来は設計者がPRA的なこともできて、PRA技術者がディテールをサポートするという形でも良いが、分野として違う人が独立に評価すれば良いわけではなく、それらの専門家のインテグレーション、インタラクションを考慮して設計していくところが実務に実装していく時に課題になる。

Q:地震PRAは不確実さが大きいから使えないという意見がよく出される。一方、本日の講演を踏まえれば、地震リスクは不確実さが大きいことは事実であるから、不確実さが大きいから使えないと言っている人は公衆に対して正直でないと解釈して良いか?
A:PRAは確率の値を見てOK、NGを判定するだけのものと解釈される場合は、地震PRAは不確実さが大きいから使えないという反論で十分となる。一方で、PRAはもう少し違う形でとらえて、まず事故の分析をきちんとしている、その中でどういう設備が重要だということをきちんと評価している、そういうことをきちんと最終的な判断に使うという形でPRAを活用し、説明をする人に対して、不確かさが大きいから使えないという反論はナンセンスと考える。不確実さが大きいから使えないといわれる場合には、加えて、PRAを使う側に問題となる理由があるケースがある。PRAを行ったときに、前提条件の設定によって結果が異なる場合もありうるが、そのような検討を裏で評価をしているだけで、表に出さない(PRAの不確実さに含めない、または、前提条件として明示しない)で、良い結果だけを出しているとか、そういうようなことがあれば、そういう結果を見たら、その反論として不確かさが大きいから使えないと差し戻すというのはあり得るかもしれない。

Q:伊方SSHACが成功裏に終了して以降、まだ他のサイトへ展開されていない。多分、理由は、一連の検討を実施するのに時間がかかる、費用もかかるといったこと。そういうサイトでは、伊方SSHACをベースに使って、水平展開を行うようにすれば時間も費用も合理化できると考える。そういう展開をしていくためのガイドをすぐにでも出すべきと考えるがいかがか?
A:進みは遅いが、共通認識ができて来ている。多くの人に理解頂かないとSSHACは実現しないので、遅いと言うこともできるが、周りからそう言って頂きつつ、粛々と水平展開を行うという進め方が良いであろうと考えている。

Q:最近、SSHACを表面的にとらえた論文が多く見られる。査読論文でも表面的に扱われ、例えば判断の幅が対数正規分布とされたりして、SSHACの真髄に当たるところが誤解されている状況が目に付く。このような現状についてどう考えるか?
A:論文や報告書などで、専門家にアンケートを取って、それをロジックツリーにならべるだけで認識論的不確実さの評価になるというような記載も散見される。アンケートは「意見」でしかなく、SSHACの考え方(Technically defensible interpretations [技術的に抗弁できる判断])とは全く相いれない。ロジックツリーをつくるということはどういうことなのか、なぜつくるのか、ということを筆者が理解できているかどうか、筆者が認識論的不確かさの評価と言っていても、それが本質的にSSHACの考え方に基づくものであるのか読者側が気をつけなければならない。判断の幅が対数正規分布になることはありえない。判断には上限と下限があるので、認識論的不確実さを対数正規分布とするのは、近似としては正しい場合もあるかもしれないが、一般には正しいとは言えない。
 

 

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Tsunami Assessment Method for Nuclear Power Plants in Japan 2016

投稿者:松山 昌史 投稿日時:月, 2021-05-31 10:18

The 2011 Tohoku earthquake tsunami (the 2011 off the Pacific coast of Tohoku Earthquake), which struck off the Pacific coast of eastern Japan on March 11, 2011. The earthquake recorded a moment magnitude of 9.0 with an extensive tsunami disaster area measuring 200km east to west and 500km north to south. 
Academic advances with respect to tsunami are truly progressing at a rapid rate after 2011. New research results have been provided and the remarkable progress made in the numerical analysis technology for predicting tsunami impact. We have been able to conduct detailed analyses of the conditions of this tsunami to verify our previous knowledge, and we have also been able to raise the  academic level of tsunami evaluation. These results have been compiled here in this publication “Tsunami Assessment Methods for Nuclear Power Plants in Japan: 2016”. This is a technical reference book that summarizes the elemental technologies related to the tsunami evaluation.

Tsunami Assessment Methods for Nuclear Power Plants in Japan: 2016

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レター「委員会活動の客観性・公開性の確保に向けた今後の検討方針」

委員会活動の客観性・公開性の確保に向けた今後の検討方針

令和2年12月23日
土木学会 原子力土木委員会

 

1 背景

 本委員会では、令和2年5月1日にレター「原子力土木に係わる基本的な考え方と今後の研究の方向性について」を公開し、委員会の今後の進む方向性を外部に示した。その中では、①客観性・公開性の一層の確保、②社会への積極的な情報発信、③自主的かつ多面的な調査研究活動の展開、を活動指針として掲げており、今後これらの項目を具現化する必要がある。原子力という社会的影響の大きな施設を対象としている本委員会においては、社会的説明性のためにも、②③の活動を行う前提として、「①客観性・公開性の一層の確保」が必要であり、継続的に取り組む必要がある。本資料は「①客観性・公開性の一層の確保」に関わる経緯と現状認識を示し、原子力土木委員会における今後の検討方針をまとめたものである。

 

2 震災後の原子力土木委員会の取り組み

 東日本大震災後の国会事故調報告書(東京電力福島原子力発電所事故調査委員会、2012)は、本委員会が策定した原子力発電所の津波評価技術(2002)を「電力業界が深く関与した不透明な手続きで策定された」ものと指弾した。事故調報告書ではその根拠として、(1)この津波評価技術(2002)では、研究費および審議のために土木学会に委託した費用を全て電力会社が負担していること、(2)委員会メンバーが電力業界に偏っていたこと、(3)議事録の公開が不十分であったこと、の三項目を挙げている(国会事故調報告書92ページ)。このため、原子力土木委員会では、平成25年度に委員会規則の改定を実施し、委員構成の電力比率(1)を1/3以下とすること(内規)、委員会議事録等をウェブページに公開すること(規則)を定めた。更に令和2年11月20日の委員会において、研究成果の責任および議決権の所在を明示する規則・内規改正を承認し、委員会活動の透明性、公平性を向上させた。しかし、第一点の「研究費および審議のために土木学会に委託した費用を全て電力会社が負担しており、公平性に欠ける」とした指摘については未だに直接的に答えてはいない。

 

3 現状の課題認識

 日本国内においては、民間の電気事業者11社のみが原子力発電所を保有しており、原子力の諸問題を検討するためには、電気事業者および電気事業者以外の幅広い分野からの参加を得て、多角的な視点からの共考・協働が必要である。電気事業者が保有する原子力発電所の安全性を向上させるために研究費を出資し、安全性・信頼性の向上に努めることは、土木学会としての公益を重んじる立場と姿勢を崩さない限り、極めて正当な行為である。本委員会において電力会社が出資するという理由だけで研究費を拒絶し、研究活動を減速・後退させることは、「原子力施設の安全・安心の向上と学術・技術の進展に寄与するとともに、学会活動を通じて社会に奉仕する」という本委員会の目的に背くものであり、活動趣旨にそぐわない。

 原子力に関わる研究に限らず、研究委託元(研究費出資元)に何らかの便益が生じうる研究を受託し、実行することは、他の広範な研究分野(医学、薬学、工学、農学など)においても見られるものである。このような研究実施体制下における研究結果の公平性・公益性を担保するために、近年は、『利益相反(責務相反)マネージメント』の導入が多くの公的研究組織で定着しつつある。土木学会においても、「土木技術者の倫理規定」の改定(平成26年)において、「公衆、事業の依頼者、自己の属する組織および自身に対して公正、不偏な態度を保ち、誠実に職務を遂行するとともに、利益相反の回避に努める」と、その重要性に言及している。さらに土木学会では2020年11月20日の理事会で、土木学会受注研究取扱規程を一部改正し、特定の個人又は団体の利益に係わるものでないこと(公益性、第3条2項)、利益相反に十分配慮すべし(第5条2項)との条項が新たに加えられた。国内諸大学や主要な公的研究機関では、受託研究を含む産学官連携活動における職員・研究者の利益(責務)相反関係の自己申告が義務付けられ、また利益相反⾏為防⽌規則や利益相反に関するセーフ・ハーバー・ルールなどが詳細に定められている。

 当委員会において避けるべき利益相反は、個人的・組織的な利害を考慮することで公益を重んずる立場の専門家として行う判断に妥協もしくは偏向が生じ、その客観性が失われる状況である。委員会内規に記載された電力比率の制限は確かに委員会としての利益相反マネージメントを行う方策の一つではあるが、利益相反⾏為防⽌規則やセーフ・ハーバー・ルールのような、個々の内容に厳格に踏み込んで規定するものではない。このため事故調で指摘された第一点の指摘への回答は残念ながら未だに不十分な状況にあると考える。

 事業者および学識経験者が積極的に原子力の安全性向上の議論に参加し、且つ、その成果の審議過程に公益性・公平性を確保するためには、土木学会や他学会、公的な研究機関等での事例を参考に、実効性のある利益相反マネージメント手法を委員会運営に取り入れていくことが求められる。これらの公平性確保の取り組みを継続することが「①客観性・公開性の一層の確保」、ひいては当委員会の社会的信頼性の向上に繋がると考える。

 

4 今後の検討方針

 前述した震災後の経緯と現状の課題認識を踏まえ、原子力土木委員会として客観性・公開性・公平性の一層の確保のために、以下の取組を行うこととする。

(1)出版物の意見公募手続きについて、他委員会や他学会での動向を小委員会や幹事会で調査し、当委員会におけるふさわしい方法を模索する。

(2)出版物の審議過程について、他の委員会や学会での動向を小委員会や幹事会で調査し、出版物の性格に応じたふさわしい審議過程の確立を目指す。

(3)委員会参加者において、専門家として行う判断に妥協もしくは偏向が生じ、またその客観性が失われる可能性のある状況(利益(責務)相反)を避ける具体的方法を模索する。

(4)他学会等との情報共有、情報発信を積極的に進めるために、各小委員会から他学会の原子力土木に関連する情報を収集する。永続的に情報集約を実施するために、専門の小委員会を設置するなどの体制を検討する。

 

 

以上

 


(1) 国会事故調報告書は委員・幹事等の比率を問題として指摘しているが、最終的な議決権の比率が重要であることから、原子力土木委員会では電力比率を委員比率のみに適用した。

 

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レター「原子力土木に係る基本的な考え方と今後の研究の方向性について」

原子力土木に係わる基本的な考え方と今後の研究の方向性について

令和2年5月1日
土木学会 原子力土木委員会

 

 2011年3月11日の東北地方太平洋沖地震により発生した福島第一原子力発電所での炉心溶融と、これに伴う放射性物質の放出を伴った一連の事故は、原子力への安全神話を打ち砕き、私たちの技術への過信を大いに戒めるものでした。震災から8年を経過した令和元年に至っても、福島県から県外への避難者は3万人を越え1)、困難な避難生活を強いられているのです。一方で、炉内には放射性デブリが残留したままで、アクセス不能の炉内で進行した事故の一連のシークエンスは、未だ完全な解明には及んでいません。そして未知の要素は含みながらも、廃炉には今後30~40年はかかるとされています。

 この事故以降、原子力発電の相次ぐ停止に伴い、我が国のエネルギー自給率は僅か6%程度まで落ち込みました2)。これは、OECD 34カ国中、下から2番目、非資源産出国のスペイン(26.7%)、イタリア(20.1%)、韓国(17.5%)と比較しても極端に低い、懸念すべき水準となっています。2018年7月3日に「第5次エネルギー基本計画」が閣議決定されました3)。この中では、原子力発電への依存度を低減し、再生可能エネルギーの導入を促進することが謳われていますが、上述のように、低いエネルギー自給率の改善、頻発する異常気象災害の誘因と考えられる温室効果ガスの削減という、将来の私たちに欠かすことのできない重要な目標を達成するためには、しばらくは、原子力発電への依存度を20~22%あたりまでには留めておかざるをえない事情も、また反映された記述になっています。しかしながら、現状では石炭火力に大きく依存せざるを得ず世界第5位の二酸化炭素排出国となっている日本には、国連気候変動枠組み条約第25回締約国会議(COP25)等で厳しい批判の目が向けられているのです。

 この基本計画に盛り込まれた方針については、いまだ多くの国民の同意が得られているとは思えません。広島・長崎の原爆、そして東海村での臨界事故などを通して、放射線被ばくの恐ろしさを知る多くの国民にとっては、日常のエネルギーの享受以上に、その諸刃の剣の危うい面を強く意識するのは当然のことと思われます。また基本計画に盛り込まれた長期のエネルギー比率の方針も廃炉技術や再生可能エネルギー技術の革新、そして社会情勢、国際情勢の変化に大きく影響されていくものと考えられます。土木学会原子力土木委員会は、この政策そのものに踏み込んだ情報の発信を行う場ではありません。それは、私たちが土木技術者としてできる範囲を大きく超えています。しかし、諸刃の剣の危うさを孕みながらも、原子力が現状で、我々が依存していかなければならない重要なエネルギー供給源の一つであり続けるのであれば、原子力施設だけでなくそれに付随するライフライン施設、周辺地域全体も含めて、地震、津波、豪雨、斜面災害などが与えるリスクを科学的に調査し、先進的な土木技術に裏打ちされた実現可能な対応策を提示し、今後のエネルギー政策を考えるうえでの客観的なデータとして、わかりやすい形で提示していくことは、本委員会が社会に向けて果たすべき重要な責務の一つと考えるのです。

 私たちの学会は、昭和13年(1938年)に「土木技術者の信条および実践要綱」4)なる技術者要綱をわが国で初めて制定した学会です。この年は、国家総動員法が制定された年でもあります。日中戦争、太平洋戦争に向けて人的・物的資源、文化、言論が厳しく統制されていった当時の日本で、このような倫理要綱を自主的に制定したことは、私たちが大いに誇りに思うところです。その後、平成11年(1999年)に、この要綱は「土木技術者の倫理規定」と形を変え、平成26年(2014年)の改訂を経て今日に至っています5)。この規定の中に、「人類の生存と発展に不可欠な自然ならびに多様な文明および文化を尊重する」、「専門的知見および公益に資する情報を積極的に公開し、社会との対話を尊重する」ことが謳われています。福島第一原子力発電所の事故を受け、私たちはこれまで以上にこの倫理規定を意識し、これに則り、委員会の研究成果を公表し、最先端の土木技術をもって成し得ること、いまだに困難なことを社会に示し続けていく不断の努力が求められていると考えます。

 原子力土木委員会では、東日本大震災の半年後、当時の当麻委員長の召集で、平成23年(2011年)10月24日に開催された臨時委員会において、①客観性・透明性の一層の確保、②社会への積極的な情報発信、③自主的な調査研究活動、を重視する運営方針を示しました6)。これは上記の「倫理規定」を意識したものであると同時に、福島第一原子力発電所の事故を受けて、俗に言う「原子力村」と揶揄された私たちに向けられた批判に、私たちが襟を正し、改めて今後の活動の指針を示したものでした。そして同年および平成30年の委員会規則の改訂に則り、従来の研究部会は、小委員会として随時再編されることになり、以降8年の間、「屋外重要土木構造物の耐震性能照査」、「津波評価技術」、「基礎地盤及び周辺斜面の地盤安定性評価技術」などに関する指針、マニュアル、研究報告書の見直し、改定を他分野の委員にも幅広く参加いただく形で継続的に進めてまいりました。さらに国際原子力機関(IAEA)などの国際関係機関と連携を図りながら、国際基準の調査・規格文書案の作成支援を行う国際規格研究小委員会を2015年に、また原子力発電のリスクとは何なのかを社会の視点で改めて考え、その上で、原子力発電に関するリスクコミュニケーションのあり方を検討するリスクコミュニケーション委員会を2019年に設立するなど、活動の幅を広げてまいりました。そのような中で、改めて私たちが行ってきた活動を見直し、評価すべき点、反省すべき点を踏まえて、これからの活動の指針を以下のように示すことにいたしました。

 

①客観性・公開性の一層の確保

 電力以外の幅広い分野からの委員の参加を得て、多角的な視点からの共考・協働の検討プロセスを経た研究成果を論文誌などに積極的に投稿する。併せて外部識者からの意見やパブリックコメントなどの聴取を行うとともに、分野を超えて有識者を招聘し、公開講演会を実施する。また関連する分野が多岐にわたることから、他学会等との情報共有、情報発信を積極的に進めていくとともに、原子力土木委員会も参加して令和元年(2019年)から新たに発足した土木学会第Ⅷ分野(分野横断)の一員として、開かれた活動を展開していく。

 

②社会への積極的な情報発信

 調査研究成果は公開を基本とする。公開講演会、報告会を行い、研究成果や、関連する情報を示し、幅広い層に向けた議論の場を提供する。これには土木学会年次学術大会における研究討論会の企画・実施、土木学会誌への委員会活動状況の報告、そして国際会議での関連セッションの企画、国際ジャーナルでの成果発表、国際規格研究小委員会の成果発表など国際的な情報発信も含まれる。

 

③自主的かつ多面的な調査研究活動の展開

 本委員会は、科学・技術の最新の知見を原子力施設の安全な稼働に反映させるべく、様々な技術課題に対して小委員会活動を展開させてきた。これらの活動は機軸としつつも、今後のエネルギー問題等も見据え、社会に貢献できる多面的な活動を模索していく。具体的には、土木学会の調査研究部門のいくつかの委員会が参加する形で令和元年に新たに発足した土木学会第Ⅷ分野(分野横断)において、原子力施設のプラントライフ(立地、廃炉技術など)、また施設周辺地域の安全と発展性(放射能汚染地域の再生技術、地層処分技術、情報共有とリスクコミュニケーションなど)に関わる多様な将来課題を自主的・多面的に検討する場を設ける。これに応じた新たな小委員会の立ち上げと研究推進を積極的に支援していく。

 

以 上

 

参考文献:

  1. 復興庁:全国の避難者数、令和元年10月29日

https://www.reconstruction.go.jp/topics/main-cat2/sub-cat2-1/hinanshasuu.html

  1. 一般社団法人海外電力調査会:主要国の一次エネルギー消費構成と自給率(2015年), https://www.jepic.or.jp/data/g01.html
  2. 経済産業省資源エネルギー庁:第5次エネルギー基本計画(平成30年7月),

https://www.enecho.meti.go.jp/category/others/basic_plan/

  1. 土木学会:土木技術者の信条および実践要綱,

 https://www.jsce.or.jp/library/jsce_history/70/jsce70-00-03.pdf

  1. 土木学会:土木技術者の倫理規定, (平成26年改訂),

https://www.jsce.or.jp/outline/soukai/85/rinnri.htm

  1. 土木学会原子力土木委員会:委員会の活動経緯(3)原子力土木委員会の改革,

http://committees.jsce.or.jp/ceofnp/node/108

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