Ikuo Towhata (東畑 郁生) / Springer-Verlag 2008 springer/ springerlink
本書は,著者の30年近い地盤耐震工学に関する教育・研究の集大成ともいえる大著である.土質力学の基礎知識から,被害調査や模型実験結果等に基づく現象の理解,地震時の地盤応答解析法の詳細,室内土質試験や原位置試験による地盤材料特性・状態の把握,液状化対策工法に至るまで,広範な地盤耐震工学を網羅しつつ,その理論と実際について詳述した教科書である.全体が700頁にも及ぶ大部の書ではあるが,各節は1~3ページにまとまっており,必要な箇所だけ拾い読みできるようになっている.また,初学者から専門家まで,必要な部分を選択して読めるような工夫がなされている点も,好感が持てる. 本書には,著者自らが実施した国内外の地震被害調査や実験の写真が豊富に掲載されているとともに,著者自らが撮影した地盤耐震工学に関連するアジア各国の歴史的遺産の写真や,入手が困難な文献から貴重な写真や図面も多数転載されており,これも本書の魅力の一つである.また著者は,国外での多数の地震被害調査等において,現地語会話での協働作業を通じて現地の方々との友好的な関係を築くことのできた経験を踏まえ,日本語を含む11カ国語の簡単な会話集を付録に掲載しており,著者の現地主義を垣間見せる部分もある. 以上のように,本書は,貴重な写真や図面を数多く収録し,地盤耐震工学の全貌が理解できるように配慮された英文図書であり,我が国のみならず世界の土木工学・土木技術の発展に大いに貢献することも期待される. よって本書を高く評価し,ここに土木学会出版文化賞を贈呈する. |