福岡 捷二 著 森北出版株式会社 2005年1月初版発行
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河川工学に関する教科書はこれまでにもさまざまな良書が出版されているが、河川工学一般を幅広く取り扱い、基本的な知識と考え方を土木技術者が身につけることを助けることを目的としているものが一般的である。本書は、河川における洪水流の挙動、洪水外力の評価とそれに対する河道の応答を河川技術の中心課題と位置づけてそこに特化し、きわめて高度な専門的知識を詳細に展開している。 著者はこれまで、東京工業大学、建設省土木研究所(当時)、広島大学において、河川工学に関わる技術に携わっており、本書は著者がこれまで河川技術者として考え、実行してきた河道設計の全体像を体系化した大部な労作である。本書では、河川の本質が洪水と河道の応答にあると捉え、そこにかかわる問題を水理学的な視点から合理的に捉え、河道の設計に役立つ技術として関連付けることを取り扱っている。ここでは、実河川での大規模な調査・観測、基礎実験や大型実験、水理学的解析、河道の設計や河道計画に関する提案が、それぞれ相互の関係を含めて詳細に記述されている。 このような技術書は、わが国はもとより、海外においても例を見ないものであり、これらは河川工学という技術分野の技術の発展に著しく貢献するものである。
以上により本書を高く評価し、平成17年度土木学会出版文化賞を贈ります。 |
篠原 修 著 東京大学出版会 2003年11月初版発行
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本書は、景観研究とデザインの第一人者である著者が、自らの豊富なデザイン実践の蓄積を包括的かつ体系的にまとめあげた集大成の書であり、わが国では初めての土木デザイン論である。 土木という仕事の本質とその風景形成への関わりについて、独自の論を展開するとともに、特に橋梁、ダム、河川のデザインについては自身の仕事を具体例にして、その思考プロセスと方法論を分析的・体系的に、かつわかりやすく述べており、長年にわたって土木デザインの最前線に携わってきた著者にしかなし得ない、貴重な成果が示されている。 とりわけ、土木がデザインの対象として極めて魅力的であり、また風景を後世に残す貴い仕事であるという全編に満ちた思想と信念は、土木の仕事に取り組んでいる実務者、若いエンジニア、そして次代を担う学生に誇りと将来の展望を与えるものである。 さらには近隣分野である建築、都市計画、造園、デザイン等の専門家、あるいは一般読者に対しても、風景をつくるという仕事の価値をメッセージとして発信している。これらの意味で、本書は将来にわたって広く参照されるべき知見と示唆に富んだ土木デザイン論の古典とも称すべき良書であるとともに、景観法時代における指針、一般に対する啓蒙書としての役割をも、期待できるであろう。 以上により本書を高く評価し、平成17年度土木学会出版文化賞を贈ります。 |