高橋 保 著 近未来社 2004年9月初版発行
藤井肇男 著 アテネ書房 2004年12月初版発行
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本書は、幕末から昭和までの時代に活躍した土木の分野に関わりが深い日本人500人について、多くの写真や図版とともに解説を付し、重要人物については参考文献の一覧を掲げるなど、長年の地道な準備作業に裏付けられた、類を見ない人物事典としてまとめられたものである。この種の事典は元来多くの執筆者が関与して編集されることが多いにもかかわらず、たった一人の手で人物の履歴や仕事の内容、著作その他の成果について歴史的事実を確認する作業を行ったことは驚くべきことであり、想像を越える時間と労力と根気がなければ持続できるものではない。その意味では、長年土木学会の付属図書館で土木史料の収集、整理に携わってきた著者にしかなし得ない、重要な作品である。退職後の時間と心血を本書の編集に注いだ著者の意欲は、多くの研究者のそれと何ら遜色がないものと言える。 ともすれば事業そのものに関心が向けられ、携わった人々には興味が持たれない場合が少なくない土木の分野において、人物を真正面からとらえようとした本書は、オリジナリティあふれる貴重なものである。今後の土木の分野において、本書が有効に寄与する機会は相当多いものと考えられ、特に土木史研究の基礎的な文献の一つとして今後欠かさず参照すべき基本書となることは疑いなく、その価値は極めて高い。 以上により本書を高く評価し、平成16年度土木学会出版文化賞を贈ります。 |