メインコンテンツに移動
土木学会 出版文化賞選考委員会 土木学会
出版文化賞選考委員会

メインメニュー

  • 土木学会
  • 土木学会賞受賞一覧
  • 土木学会委員会サイト

メニュー

  • ホーム
  • 受賞作品一覧

出版文化賞選考委員会

出版文化賞は土木に関連する出版物で、土木工学・土木技術の発展に貢献し、あるいは読者に感銘を与えることにより、土木文化活動の一環となりうると認められた出版物を対象とし、その著者を表彰しています。 

  • 土木学会表彰規程
  • 出版文化賞選考委員会規則
  • 土木学会出版文化賞候補・推薦にあたっての留意点
  • 令和3年度土木学会出版文化賞 募集要項 募集期間:2021年10月1日(金)~2021年12月17日(金) 17時必着 令和3年度募集は終了いたしました。

 

  • 出版文化賞選考委員会 についてもっと読む

令和3年度 出版文化賞授賞作品

投稿者:事務局 投稿日時:月, 2022-05-16 11:30

令和3年度 土木学会出版文化賞は以下の2作品に決定いたしました。


「近代化遺産」の誕生と展開-新しい文化財保護のために

伊東 孝 著 / 岩波書店 2021年
「近代化遺産」の誕生と展開-新しい文化財保護のために

 

わが国は平成4年に世界遺産条約を批准し、翌年には日本の物件としては初めて「法隆寺地域の仏教建造物群」、「姫路城」、「白神山地」、「屋久島」が世界遺産として登録された。その後も世界遺産リストに登録された物件は増え続け、平成26年に「富岡製糸場と絹産業遺産群」、翌27年に「明治日本の産業革命遺産」など、日本の近代化に重要な役割を果たした建築物や施設等が世界遺産として登録されることで、社会の大きな関心を集めている。

 本書は、このような日本の近代化を担った建造物や施設等に着目して、その価値を見直すとともに、遺産という概念が誕生してから社会に定着するまでの経緯や背景、さらには古くなって使われなくなったものを保存する意義を解説する。保存にあたっても、純粋に保存することを重視した展示や見学のための維持管理をするだけでなく、さらに遺産を利活用することで地域の活性化や町おこしに繋げ、地元の人びとを生き生きとさせる資産へと再生させた事例などを紹介し、維持管理に必要な費用の問題についても、いくつかの取り組み事例を紹介している。

以上のように、本書は専門技術者や一般の読者を対象とし、過去に蓄積された社会資本に対する関心を高め、今後、これらを維持管理していくことへの理解を深めることに大きく貢献するものと評価される。

著者近影 伊東孝
著者近影 伊東孝


洪水と確率-基本高水をめぐる技術と社会の近代史-

中村 晋一郎 著 / 東京大学出版会 2021年
洪水と確率-基本高水をめぐる技術と社会の近代史-

 

令和元年東日本台風や令和2年7月豪雨など、甚大な被害をもたらす水害に毎年のように襲われている我が国では、現在、気候変動を踏まえた河川整備基本方針の改訂や集水域に加えて氾濫域までを含めて対策を行う流域治水の導入など、治水に関するパラダイムが大きく変わろうとしている。しかしそのような変化の中でも、治水の基本は、その川で流すことのできる基本高水をどのように設定するかにあるということは変わらないだろう。

 本書は、明治維新以降の近代的な治水計画と河川工学の展開を、自然と社会の条件変化を踏まえつつ、関連する膨大な資料を根拠として詳述する力作である。具体的には、基本高水の設定の仕方に関して、1)なぜ既往最大洪水から「確率主義」へと転換したのか、2)その転換後、なぜ計画規模が大幅に引き上げられたのか、という2つの問いをめぐり、それらへの回答を社会的ならびに技術的に探究している。また最後には、環境の保全と気候変動への対応を踏まえた確率主義からの脱却とそれに対する課題を指摘し、現在と今後の治水政策に対して一定の視座を与えている。

 専門的な主題ながらも、一般の人々にとっても重要な問題について、明快かつ説得力を持って記述されており、その内容には良質なルポルタージュを読んで感じるような迫力もある。専門家のみならず一般の人々にも触れてほしい、本質的かつ時宜を得た書籍である。

著者近影 中村晋一郎
著者近影 中村晋一郎

 

  • 令和3年度 出版文化賞授賞作品 についてもっと読む

令和2年度 出版文化賞受賞作品

投稿者:事務局 投稿日時:月, 2021-05-17 11:48

令和2年度 土木学会出版文化賞は以下の2作品に決定いたしました。

洪水と水害をとらえなおす 自然観の転換と川との共生
大熊 孝(著)
株式会社 農文協プロダクション 2020年刊

大熊 孝 (おおくま たかし)

 

【受賞理由】

 ここ数年、国内では毎年のように大規模な水害が発生しており、そのたびに地球温暖化に伴う気候変動の影響が取り沙汰される。確かに近年の傾向としてみられる水害の頻発化・激甚化は気候変動にも一因はあろうが、本書ではむしろ、人が自然とのかかわり方を忘れたこと、そして無防備に活動域を広げてきたことが根本にあると喝破している。

 日本人は古来、自然を畏れ敬う観念をもち、慎ましやかな生活を営んでいた。しかし明治以降、西洋的な科学技術文明に基づく価値観が導入されるや、国家主導の国土開発が急速に推し進められた。その過程で整備された社会インフラは、豊かさや快適さと引き換えに、人々が古来よりおのずと知っていた自然本来の姿を見えにくいものとした。その結果がダムなどの治水設備への過信や、本来災害に遭いやすい場所でのまちづくりなどであり、いわば人の方が自然の怖さを忘れ、無防備にも災害に近寄っているようだと筆者は指摘している。一方で筆者は、科学技術が今ほど発達していなかった時代では治水でできることにも限界があったが、現代に生きる私たちがかつての自然観を取り戻すことができれば、防災も含めた、新しい形での自然共生社会が実現できるとの希望を見出している。

 以上のように本書は、治水技術や防災についてだけではなく、社会と自然との関わりをどう構築するかという土木の本質を問う書籍と言える。よって、ここに土木学会出版文化賞を授与する。


ドボジョママに聞く 土木の世界(全10巻)
福手勤(監修)/應家洋子,山口理(構成・文)/谷川ひろみつ,伊東ぢゅん子(イラスト)
株式会社 星の環会 2019-2020年刊

福手 勤 

(ふくて つとむ)

應家 洋子

(おういえ ようこ)

山口 理

(やまぐち さとし)

谷川 ひろみつ

(たにかわ ひろみつ)

伊東 ぢゅん子

(いとう ぢゅんこ)

 

【受賞理由】

 本書は、土木工学の果たす役割、意義、重要性等を身近な施設であるダム、地下都市、橋、道路、トンネル、水道、川、港湾、鉄道および空港の紹介を通して、主として子供向けに説明した全10巻のカラー絵本である。一般社団法人土木技術者女性の会などの協力も得て、ドボジョママと子供たちによる対話にイラストや写真を織り交ぜた構成とすることにより、土木工学を分かりやすく解説している。

 子供が飽きないような工夫、土木工学に興味、関心がない児童、生徒および学生にとっても読み進めやすいような工夫が随所にみられる。各施設に関するコラム、ミニ知識、クイズおよび偉人の紹介のほか、女性技術者へのインタビューなどがその例である。時折、現れる専門用語についても簡潔に説明されており、子供だけでなく大人の知識欲をもほど良く刺激する。また、表面的な情報だけでなく、維持管理、防災対策や今後の施設整備のあり方など、多様な視点から土木施設をバランスよく紹介している。これらは、誤解されがちな土木工学を、より多くの人々に正しく理解して頂きたい、という著者の強い思いの現れであると言える。

 以上のように本書は、平易な文章や、イラスト、写真、クイズ等の配置により子供を主な対象としているものの、子供に限らず幅広い世代の人々の土木工学への理解および関心を高めることに大きく貢献するものと高く評価される。よって、ここに土木学会出版文化賞を授与する。

  • 令和2年度 出版文化賞受賞作品 についてもっと読む
土木学会 出版文化賞選考委員会 RSS を購読

(c)Japan Society of Civil Engineers