メインコンテンツに移動
土木学会 Web版「行動する技術者たち」 土木学会
Web版「行動する技術者たち」

メインメニュー

  • 土木学会

Web版「行動する技術者たち」について

  • ホーム
  • Web版開設にあたって
  • 取材班の紹介
  • 森地先生、古木顧問からのメッセージ
  • メールフォーム

これまでの掲載一覧

  • Web版 第41回~
    • 第47回 首藤 勝次氏
    • 第46回 建山 和由氏
    • 第45回 清水 善久氏
    • 第44回 篠原 修氏
    • 第43回 阿部 玲子氏
    • 第42回 安江 哲氏
    • 第41回 下里 哲弘氏
  • Web版 第31回~
  • Web版 第21回~30回
  • Web版 第11回~20回
  • Web版 第1回~10回
  • 土木学会誌掲載分
    • 第19回 小口健蔵氏
    • 第18回 岩田鎮夫氏
    • 第17回 佐伯浩氏
    • 第16回 猪爪範子氏
    • 第15回 中村良夫氏
    • 第14回 青山俊介氏
    • 第13回 熊谷靖彦氏
    • 第12回 片田敏孝氏
    • 第11回 桃井徹氏
    • 第10回 中川大氏
    • 第9回 久保田尚氏
    • 第8回 Frederick P.Salvucci氏
    • 第7回 和泉晶裕氏
    • 第6回 鈴木忠義氏
    • 第5回 三戸部春信氏 竹内典之氏
    • 第4回 徳島征二氏
    • 第3回 石島修二氏
    • 第2回 稲村肇氏
    • 第1回 森川高行氏

現在地

ホーム › 土木学会誌掲載分

【第5回】 高齢者はまちの宝!伊達市ウェルシーランド構想

伊達市役所 三戸部春信氏 竹内典之氏
三戸部氏と竹内氏
三戸部氏(左)と竹内氏(右)

 温暖な気候や近郊の自然・文化資源という地域の魅力に加え,「高齢者が住みやすいまちづくり」をすすめ,全国から高齢者を「誘致」して地域社会・経済の活性化につなげた,「マイナスからプラス」への発想の転換


■■人口減少社会でも人口増の伊達市

 北海道有数の観光地である有珠山や洞爺湖の近くに位置する伊達市は、近接する室蘭市のように大きな産業を持たないながらも、近くの観光資源を活かしながら、野菜や乳業を中心とする道内の食料供給地として成長してきました。また四季を通じて比較的温暖な気候を有しており、「北の湘南」と呼ばれ、道内でも定住・移住の地と言われてきました。
 人口は約3万8,000人、65歳以上の人口が全体の約27%を占めています(2006年4月現在)。15年後の高齢化率は約50%に達すると予想され、全国や道内の他都市と比べても高齢化が進んでいます。
 北海道全体で人口減少が続いている状況にもかかわらず、伊達市は6年間で約1,000人もの人口を増やし、特に大きな産業のなかった地域に新たな生活産業に携わる中小企業を増やすことに成功しました。この健闘の背景には2人の行政職員がいました。伊達市役所の三戸部春信さんと竹内典之さんです。

人口推移
伊達市および伊達市と同規模の道内都市の人口推移

■■高齢者はまちの宝!高齢者が住み良い町をめざす
プロジェクト概念
プロジェクト概念

 1999(平成11)年に現市長の菊谷秀吉氏が就任し、雪が少なく温暖な気候や観光資源、食資源を活かし、他都市にはない方法で定住・移住を進めたいと考えました。また、大きな産業がないことや有珠山噴火による観光産業への影響、全国的にも高齢化率が高いことなどのマイナス要素もプラスの発想に転換し、人口減少、高齢化を食い止め、自主・自立のまちづくりを進めたいと考えました。
 『高齢者が住み良い町をつくろう。高齢者が増えれば、新たな生活産業も増え、新たな雇用も創出され、若者にも住み良い町になる』と考えました。

■■若手中心の官民協働組織づくり

 菊谷市長はまた、『民間事業者を元気にすればまちは活性化する』と考えて、官民協働の体制づくりを行いました。そこで、三戸部さんと竹内さんは、市長の想いを行動に移すべく、行政職員有志や地元企業が入った、民間主体のボランティア組織「伊達ウェルシーランド構想プロジェクト研究会」を立ち上げて、まちづくりの施策について勉強したり、身近なまちづくりのアイデア出しを行いました。その後、事業化に向けて官民協働組織「豊かなまち創出協議会」を設立し、その推進に取り組みました。
 この協議会は、『できるだけ柔軟な発想で施策を考えていきたいと』の市長の想いから、これからの伊達市のまちづくりを担う若手の事業主や地元金融・商工関係者を中心に結成するとともに、協議会に対してすぐに事業化に結びつけられるように権限も付与しました。
 こうした市長の想いと三戸部さん、竹内さんの行動で、他に例を見ない、高齢者を増やしてまちを活性化させる『伊達ウェルシーランド構想』が動き出したのです。

安心ハウスの入居者
団らんの中の伊達版安心
ハウスの入居者の皆さん
■■住まいの安心“伊達版安心ハウス”

 まずはじめに協議会は、高齢者が安心して住める住まいづくりが必要と考えて、食事サービスや病気の際の緊急通報などのサービスを備えた賃貸型の集合住宅を民間主導でつくりました。伊達市の居住形態は持ち家一戸建てがほとんどであり、このような居住形態は珍しく、事業者も入居する高齢者も事業の仕組みがイメージしにくいため、市の広報などを通じて周知しながら、資金の確保から建設・入居開始まで4年をかけて進めました。現在は、実際の居住者からの口コミによる広がりを期待しているところです。

■■お年寄りの外出機会を増やす“伊達版ライフモビリティ”

 次に協議会は、元気な高齢者が増えれば、介護保険料の自治体負担も軽減できるのではと考えて、高齢者の外出機会を増やすために会員予約制の乗合いタクシーを導入しました。通常のタクシー利用の1/2~1/3の低価格で、ドアtoドアの移送サービスを買物代行などの生活支援サービスを付けました。これまでに2回実証実験を行いましたが、現在は料金や乗車の予約システム、運行時間帯などの残された課題を整理して、本格実施に向けて奔走しているところです。

■■生活全般を支える“高齢者生活支援センター”

 また協議会は、高齢者が安心・安全に生活できるようにするためには、情報へのアクセスを良くすることが必要と考えて、地域情報の照会相談や代行サービス支援、輸送サービス支援などに関する情報を管理し、行政機関や医療・防災機関、商工業、学校、コミュニティなどの地域ネットワークと利用者とを結びつける地域情報センターを開設予定で、2006(平成18)年3月にその受け皿となる民間会社が設立されたところです。

■■土木技術者の知恵を活かす機会は多い

 伊達市のように人口減少、高齢化、産業の衰退などの問題を抱えている都市は全国に多数存在します。今回の伊達市役所のお2 人は土木技術者ではありませんが、土木技術者は、様々な経験と幅広い知識で、総合的な視点から地域づくりを考え、適切なアドバイスができる存在です。同様の悩みを抱える他都市でも、こうした地域づくりに知恵を活かして貢献できる可能性はあるのではないでしょうか。

室蘭工業大学 田村亨教授に聞きました

田村亨教授
田村亨教授

 2001(平成13)年からの3年間は、「ウェルシー」という豊かさ・積極さを標榜する構想を決め、同時に高齢社会に対応するビジネスづくりの調査研究を行っていた。成功の要因はエンパワーメント(権限を与えること)に尽きる。
 行政は民間主体ボランティア組織に権限を与え、民間組織はマーケティングなどの専門家に意見を求め、そしてまちづくりの過程を市民に公開した。
 今、伊達市は「北の大地の移住促進戦略(北海道)」の重要なパートナーであるばかりか、新しい価値観による市場づくりのトップランナ-となっている。


行動する技術者たち取材班
島田敦子 SHIMADA Atsuko  (財)計量計画研究所都市・地域研究室 研究員
正会員

土木学会誌vol.91 no.7 July 2006

土木学会誌掲載分
添付サイズ
PDF icon 第5回 高齢者はまちの宝!伊達市ウェルシーランド構想(PDF)410.3 KB
  • 新しいコメントの追加

コメント

高齢化社会に対する地方の取り組みについて紹介されていました

投稿者:金沢大学大学院 平野貴宣 投稿日時:金, 2009-01-16 00:00

高齢化社会に対する地方の取り組みについて紹介されていました。その中の『高齢者の住み良い町をつくろう。高齢者が増えれば新たな産業も増え、新たな雇用も創出され、若者も住み良い町になる』という考え方は大変関心の持てるものでした。具体的な取り組みは官と民の連携による体制で協議や実験を繰り返すことによるもので、現在は住宅やタクシー事業の改革で今後の発展が期待されています。高齢者は町の伝統の継承や地域行事などで大変貴重な存在といえ、このことは町の活性化にも深くつながってきます。高齢化社会が進む中で、私自身も高齢者のことを考えた土木技術者になれるよう精進したいと思います。

  • 返信

これからの日本の未来に光をあててくれるような記事だと感じ、

投稿者:前田建設工業 武部篤治 投稿日時:金, 2009-01-16 00:00

これからの日本の未来に光をあててくれるような記事だと感じ、非常に興味深く読ましていただきました。土木技術者は物を作る技術や経験だけを身につけていくのでなく、それらをツールとして地域づくりという分野で社会に大きく貢献できることを示しています。広い視野を持てば私たちの知識を大きく活かせる所があるという希望が湧きました。ただ希望としては、もう少し詳細に、ページをとって紹介してほしかったです。地域づくりということでは、日本にまだまだ問題を抱えているところが多くあります。成功例を幅広く伝えることで、地域がより発展していくことを願っています。

  • 返信

人口減少社会における地方都市の取り組みの成功事例を紹介して

投稿者:九州大学 梶田佳孝 投稿日時:金, 2009-01-16 00:00

人口減少社会における地方都市の取り組みの成功事例を紹介しています。プロジェクト、協議会などの組織づくり、活動の概要が記述してあり、同様の問題を抱える各地の地方都市にとって、非常に参考になるといえます。取り組みでの困難だった点や課題について触れられていたらよかったと思いました。

  • 返信

************************
行動する技術者たち~行動と思考の軌跡~
(土木学会創立100周年記念出版)のご案内

************************

************************

あなたのまわりに行動する技術者はいませんか?

新しい発想で、国土・地域づくりや地域に貢献する活動に取り組んでいる技術者をご紹介ください。自薦・他薦は問いません。

●申込先:
行動する技術者たち取材班
→ mailform
************************

************************
行動する技術者たちセミナー
~沖縄で育む「行動する技術者」~ を開催しました。

************************

************************
シニアに学ぶ『退職後の輝き方』
(成熟したシビルエンジニア活性化小委員会)

退職後も生き生きと活動されているシニアのシビルエンジニアの方々へのインタビュー記事を公開中
************************

 

(c)Japan Society of Civil Engineers