これまで土木技術者は、市民の要望に対し、社会資本をつくることを通じ社会や地域を変えることを使命として、国土・地域づくりのプロデューサーの役割を果たしてきました。
その結果として、この国は、狭い国土や複雑な地形、たび重なる災害などの制約や困難を克服しつつ、著しい経済成長を遂げ、今日の社会や地域をつくり上げてきました。
ですが、近年の国土・地域づくりにおいては、多様化する市民のニーズ、グローバル化など、複雑化する課題や社会経済情勢を踏まえた対応が不可欠になっています。地域に貢献することを本務としてきた土木技術者の原点に立ち帰り、それぞれの専門的知見を生かしつつも従来の技術分野を越えて行動する人びとがいます。
今回の連載では、近年の多様化する市民ニーズや複雑な課題、めまぐるしく変化する社会経済情勢を踏まえ、これからの国土・地域づくりに取り組む土木技術者や同様の意思と実績をもつ技術者を「行動する技術者」と呼ぶことにしました。
この企画は、各地域の再生に向けて、新しい価値をつくり出している技術者を紹介し、新たな時代の国土・地域づくりに対する先駆者たちの努力と挑戦の取組みを紹介することを通じて「行動する技術者」に求められる資質を探っていこうとしています。
取材班では、平成18年2月から平成20年4月まで20回にわたり、土木学会誌の誌面で「行動する技術者」を紹介してきました。この連載では、単なる事例紹介にとどまらず、これからの国土・地域づくりにおいて土木技術者が「核になる人材」となることができるということを、読者の方々に伝えられるよう執筆して来ました。幸いにもご好評のもとに誌面での連載を終了することができましたが、今なお土木技術者の活躍するフィールドは広がりをみせており、今日も各地で「行動する技術者」が地域の新しい価値をつくり出していると確信しております。
そこで、連載「行動する技術者たち ―地域に貢献する土木の知恵の再認識―」は、学会誌上から土木学会HPに場所を移し、これからも行動する技術者を紹介していきます。
なお新連載でも、皆様からのご紹介をもとに、行動する技術者を紹介していきたいと考えております。これまでも読者の皆様に呼びかけておりましたが、「核になる人材」を期待される土木技術者はまだまだ「縁の下の力持ち」であるのか、応募はごくわずかでした。これからも、自薦他薦問わず、行動する技術者を取材班にご紹介いただければと思います。