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【Web版第33回】サモアの水道を変えた宮古島の技術協力~人間的交流が、その土地に合った確かな技術を伝える~

梶原 健次氏 (宮古島市上下水道部水道総務課 課長補佐)
梶原氏
梶原 健次氏

最先端技術に囚われず、サモアの社会的環境を十分に理解した上で、現地の人たちとのコミュニケーションを大事にし、その中でお互いに技術の共通認識を醸成、地道な現場作業を重ね、サモアにとって真に必要な水道水浄化技術を伝えた技術者の取り組み。


■■サモアの水道事業の改善に貢献する技術者

 サモアではこれまで、多くの国々の支援により水道が整備されてきましたが、現地のニーズに合わない最先端の浄水設備が宝の持ち腐れとなっていました。そうした中、JICAの「草の根技術協力事業」によるサモアへの技術協力で、これまでの誤った浄水場の運転・管理方法を指導改善し、貴重な水の確保に貢献する南の島の技術者がいます。
 取材を申し入れた際に「私は技術者ではないのですが、それでもよろしければ」と謙虚ながらも、快く引き受けていただいた梶原健次氏がその人です。
 このサモアという地域に根ざした宮古島の技術支援は、国際貢献に資するプロジェクトとしてJICA理事長賞を受賞しました。

■■サモアへの水道事業運営(宮古島モデル)の技術協力

 サモアは谷筋に沿って水道が形成されていることが多く、水源から原水が直に送水される地域が多くあります。浄化施設としては、生物浄化法(緩速濾過法)の浄水場もありますが、正常に作動しておらず深刻な水不足に悩んでいました。
 こうした課題に対して、土地所有権が複雑なサモアでは、小さい敷地面積で済む急速濾過方式の浄水場整備と水源開発への支援が求められていました。
 梶原氏らのサモアへの技術協力の第一期は、サモアを含めた途上国の研修生を国内に招き、長期滞在させて宮古島の浄水技術を学ぶことから始め、第二期の3年間(H22~H24年度)は、サモアの浄水場が宮古島と同じ生物浄化法であったことから、現地における技術指導を行いました。
 しかしながら、現地に赴くと水源は豊富で、新たな水源開発は必要なく、送水過程での漏水率60%~80%の水漏れにより水不足となっていることが判明しました。
 さらに、浄水能力を超える大量の原水を処理していたことから浄水場が機能不全に陥っていました。
 サモアでは、藻による生物浄化法への理解が不十分で、山から流れてくる濁った水を濾過槽に直接投入していたため、泥で藻が埋まってしまい、浄化出来ない状況になっていました。また、給水不足になると地域の有力者が大量の原水を浄水場に投入させるという悪循環も重なり、生物浄化法の誤った運用のために、深刻な事態となっていたのです。
 こうした現地の実情を目の当たりにして、梶原氏を中心とするプロジェクトチームは、様々な化学薬品を使用する複雑で高価な急速濾過方式を採用せずに、既に導入されている生物浄化方式の適切な運用と漏水対策が妥当な技術協力である、と判断し、水道事業運営(宮古島モデル)による技術協力への転換を図ったのです。

■■その土地に合った技術の導入が大事

写真-2 浄水場の砂濾過池の砂掻き取り作業(右が梶原氏)

 梶原氏は「技術協力の中で一番大事なのは、技術云々よりも現地の人たちといかにコミュニケーションを図れるか、その中でお互いに共通認識を持てるかどうかだ」とコミュニケーションの重要性を語ります。
 生物浄化法は濾過槽に森林のような一つの生態系を形成して水を浄化する方法です。そのため、濁った水は泥を沈殿させる槽を通した上で濾過槽を適切に管理しなくてはいけません。また、藻が成長するためには、太陽光が必要です。
 サモアでは泥で閉塞した濾過槽に大量の水を通すために、濾過槽の水深を深くすることで底面圧力を上げていたことから、光量不足で藻の成長にも支障を来していました。
 したがって、まず、技術協力は生物浄化法の仕組みや正しい運用方法を「組織全体で理解」してもらうことから始めました。例えば、微生物が濾過槽で水質浄化活動をしている顕微鏡写真を見せることで、初めて生物浄化法の原理を理解してもらえました。こうした浄化のメカニズムをサモア水道公社総裁や組織全体に理解してもらうためには、個々の職員の立場や経験、理解度に即して、表面的な理解から心服レベルの理解まで深める努力も必要だったため、長い時間がかかりました。

■■現地で受け入れられる技術者と技術の普及

写真-3 漏水探査技術指導の様子(右下男性が音聴棒を使用)

 宮古島市から参加したプロジェクトチームに、一人の年配の技術者がいました。漏水現場でジーンズを脱ぎ、下着姿で泥水の中に入って作業を行い、見事に漏水を止めたことで、年配技術者は地元の人気者になったのです。つまり、技術者が自ら漏水対策作業を行うことで確かなスキルを持っていることが認められ、現地の尊敬を集めたという訳です。
 梶原氏も現地に足を運び、原始的な音聴棒や漏水探知機で漏水箇所を探る作業を重ねました。その結果、現在では地上漏水はほとんど発生しなくなっています。

 「他国での技術の普及は、その国の風土とレベルに合った技術の提供と技術者の育成が必要だ」と梶原氏は語ります。

■■若い日本の技術者に伝えたいこと

 若い日本の技術者へ伝えたいことを梶原氏に尋ねたところ「技術を伝えたいと思ったら、国や地域を良くしていきたいと考える人間を見つけ、意識を共有し組織的な共通認識を育てていくこと。自分たちの持っている基本技術を背景として人的・組織的ネットワークを創っていくこと。プロジェクトは理詰めで進めるのではなく、国や地域の社会的環境を十分に理解した上で進めること。これらが重要です。」と梶原氏は言います。

図-1 梶原氏とサモア水道技術協力の関わり
図-1 梶原氏とサモア水道技術協力の関わり
■■宮古島に地下ダムの発想を与えてくれた先人への想い

 古島においても、かつては地下ダムによる地下水の管理技術を、外国人技術者であるミンク氏より授かりました。梶原氏は「ミンク氏が持ってきたのは、宮古島の島嶼環境、社会環境を踏まえた技術指導であったと思います。宮古島では、昭和40年に日本で初めて地下水採取許可制度を導入しており、水資源が地域の財産であるという感覚が歴史的に培われています。そのことも含めてミンク氏の功績は大きく、その土台の上に自分たちの技術も積み上げてきていると思います」と想いを語ります。

ハワイから来たミンク氏と宮古島の地下ダム!

 ホノルル市水道局の技師であったミンク氏は、昭和38年に約1ヶ月間宮古島に滞在し、干ばつで困っていた宮古島には相当量の地下水があるという報告書「ミンクレポート」を宮古製糖に提出、宮古島における地下水資源開発の先鞭をつけた重要な資料となりました。梶原氏は「ミンク氏の技術思想・哲学は宮古島の水源開発に大きな影響を与えた」と述べ、先人の取り組み・哲学が梶原氏らによるサモアへの水道技術移転に繋がっています。

■■国や地域を良くしたいと思う「行動する技術者」

梶原氏は水産学の学位を持った技術者であり、水道の専門家ではありません。ですが、梶原氏は国や地域を良くしていきたいと真剣に考える「行動する技術者」であり、その真摯な態度にはとても感心させられました。サモアでの経験を生かし、今後も宮古島の水道技術の継承と若い人材の育成に期待いたします。


『行動する技術者たち』取材班
友寄 孝 (一社)沖縄しまたて協会 技術環境研究所
田上貴士 (株)オリエンタルコンサルタンツ SC事業本部

Web版 第31回~
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