講演者:
國生 剛治先生(中央大学名誉教授)
講演題目:
「エネルギーによる耐震設計の可能性―鉛直アレー強震記録による地震波動エネルギーの実像―」
講演要旨:
「耐震設計は歴史的に静的震度法から始まり,加速度に基づく力の釣合いをベースとしてきた。最先端を行く原子力設計でも,一般的には加速度値で安全性議論がされているのが現状である。一方近年地震観測点の高密度化もあり最大加速度の観測値が増加の一途を辿っているが,その割には被害実態と結びついていない。本来,地震被害と直結しているのは構造物中のひずみあるいはそれに直結した地震時に失われる損失エネルギーであり,地震入力としては加速度だけでなく波動エネルギーをもっと重視し,精緻な動的解析だけではなく,損失エネルギーとの対比による簡易な設計法の可能性も追求すべきである。
ここでは,損失エネルギー(Energy capacity)とは異なり従来から耐震設計には全く使われてこなかった地震波動エネルギー(Energy demand)について,その物理的意味を確認すると共に物性試験で決められる損失エネルギーとの関係を振り返る。さらに多数の鉛直アレー記録に基づき地中での波動エネルギーの実像を明らかにすると共に,軟弱な地盤ほど地表への上昇波動エネルギーが減少傾向となる実態を紹介する。さらに上昇エネルギーの構造物への影響を考察し,古来より軟弱地盤ほど地震時の構造物被害は大きくなると考えられてきた一般常識と上記のエネルギー的知見の関連を探り,地震被害調査における留意点を指摘する。」
日時:
2016年12月21日(水)13:30~15:00
会場:
土木学会講堂
参加費:無料
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