道路、港湾、鉄道等の交通インフラ、上下水道の都市インフラ及び発電・送電等エネルギーインフラは、戦後から高度経済成長を経て整備が進捗し、日本の生活・社会・経済を支えてきた。また、河川の整備は、国民の生命・財産を守る重要な役割を果たしてきた。このように、日本のインフラは、国民の安全・安心、生活水準や経済・産業の国際競争力に対応して、「体力」を確実につけてきた。
一方近年では、地震災害、豪雨災害等の自然災害が頻発・激甚化している。また、笹子トンネル天井版落下事故等各種インフラの老朽化が顕在化している。これら災害や老朽化は、「インフラの体力」を脅かす要因として、その影響は年々深刻になっている。
そのような状況に対し、「日本の社会資本整備の整備水準は概成しつつある」との財政当局からの指摘も影響して、社会資本への投資がピーク時のほぼ半分まで減少した状況が続いている反面、欧米及びアジア諸国では、インフラへの投資を継続的に増加させている。
こうした点を踏まえつつ、日本のインフラを取り巻く情勢を俯瞰すると、大都市部と地方部とのインフラの整備水準とそれに関連する生活・交通・産業・雇用等の格差が拡大する一方、相対的な国際競争力が低下し続けていると認識せざるを得ない。 またワクチン接種が進み経済回復の兆しが見える国々では、ポストパンデミック時代を見据えて、社会基盤整備の政策転換とともに大規模な積極財政政策に舵を切りつつあるといった背景を反映して、「日本のインフラの実力・体力は大丈夫か?どの程度か?」と疑問視する声も大きくなってきており、パンデミック後の日本のインフラ整備について、国民をはじめ多くのステークホルダーを巻き込んだ議論を始め、投資額を盛り込んだ長期的計画を策定する必要があるとの機運も高まってきた。
そのため土木学会では「日本のインフラ体力を分析・診断し、国民に示す」議論をスタートさせたものである。