道路、港湾、鉄道等の交通インフラ、上下水道の都市インフラ及び発電・送電等エネルギーインフラは、戦後~高度経済成長を経て整備が進捗し、日本の生活・社会・経済を支えてきた。また、河川の整備は、国民の生命・財産を守る重要な役割を果たしてきた。このように、日本のインフラは、国民の安全・安心、生活水準や経済・産業の国際競争力に対応して、「体力」を確実につけてきた。
一方近年では、わが国を取り巻く国際経済環境や安全保障環境が大きく変化するとともに、地震災害、豪雨災害等の自然災害が頻発・激甚化し、さらに深刻なコロナ禍を経験する中、種々のインフラへの要請も質・量ともに大きく変化・高度化しつつある。また、笹子トンネル天井版落下事故等各種インフラの老朽化が顕在化している。これら災害や老朽化は、「インフラの体力」を脅かす要因として、その影響は年々深刻になっている。
日本のインフラへの投資に目を向けると、ここ数年、防災・減災、国土強靭化のための緊急対策や加速化対策として重点的に財政措置されているものの、「日本の社会資本整備の整備水準は概成しつつある」との根拠なき「インフラ概成論」も影響して、1996年をピークにほぼ半分まで減少した状況が続いている。
また、日本のインフラ取り巻く情勢を俯瞰すると、「東京一極集中」の是正が進まない中、大都市部と地方部とのインフラの整備水準とそれに関連する生活・交通・産業・雇用等の格差が拡大する一方、相対的な国際競争力が低下し続けていると認識せざるを得ない。
そこで、土木学会では、「インフラ体力診断小委員会(委員長:家田仁)」を設置し、「日本のインフラ体力を分析・診断し、国民に示す」議論を重ね、2021年には、第1弾として主要な公共インフラである高速道路、治水施設、国際コンテナ港湾を対象とした「インフラ体力診断書Vol.1」を公表した。
今回の第2弾の診断書は、下水道、地域公共交通、都市鉄道の各インフラ関連の制度・整備の推移、国際比較の観点から質・量双方からの総合アセスメントを取りまとめたものである。本診断書Vol.2もコロナ禍での行動に制約がある中、各WGが国内外のデータの収集に奔走し、熱心な議論した結晶である。
特に、地域公共交通については、未だ収まらないCOVID-19禍によりに直接的に影響を受け続けている分野であることから、我が国の同分野における政策、制度への反映を期待するものである。
また、この「インフラ体力診断」は、「インフラ健康診断」及び「日本インフラのオリジナリティ(土木学会誌2020年4月号~2022年3月号掲載)」と組み合わせて、日本のインフラの「強み」、「弱み」を総合的に評価する資料・データとして活用して頂きたい。
さらに、2022年6月に土木学会では、「持続可能で、誰もが、どこでも、安心して、快適に暮らし続けることができるWell-Being社会」、「リスクを軽減するための分散・共生型の国土の形成と国土強靭化の加速」及び「持続可能な地方の創生」の達成と、これを実現する制度として、長期計画の制度化、事業の意思決定手法の見直し、公的負担のあり方や、共生促進に向けた国民参加を提案として盛り込んだ、「Beyondコロナの日本創生と土木のビッグピクチャー~人々のWell-beingと持続可能な社会に向けて~」を公表したので、参照されたい。
2022年7月 公益社団法人土木学会