表彰規程および募集要項をご参照の上、ご応募されますようお願いいたします。
締切期日: 令和7年7月1日(火)~令和7年9月30日(火)17:00
募集要項
種別項目 環境賞 選考対象【Ⅰグループ】
環境の保全・改善・創造に資する新技術開発・概念形成・理論構築等に貢献した先進的な土木工学的研究
【Ⅱグループ】
土木技術・システムを開発・運用し、環境の保全・改善・創造に貢献した画期的なプロジェクト
【Ⅰ、Ⅱグループ共通】
個人あるいは団体(本会会員資格の有無を問いません。)
令和2(2020)年10月1日から令和7(2025)年9月30日までの間に終了した国内外の研究およびプロジェクトとする。
但し、継続中であっても十分な実績が得られていると考えられるものは、候補対象とする。
応募は推薦または自薦とする。
推薦者は、正会員(個人、法人)、特別会員および土木事業に関連する学・協会とする。
応募者は、応募用紙(ウェブサイトからダウンロード:WORD形式)と添付資料(pdf形式)を環境賞選考委員会ウェブサイトから電子的に提出する(上限は100M Byte)。なお、応募用紙の作成にあたっては、ウェブサイトからダウンロードし、別紙の評価項目に沿って記載すること。
なお、応募用紙の作成にあたっては、別紙の評価項目に沿って、そのエビデンスを示しつつ記載すること。また、内容説明会においても、各評価項目のポイントやエビデンスを明確にすること。
https://committees.jsce.or.jp/kankyo_sho/R7-form
応募用紙と添付資料はZIP形式で圧縮し、一つのファイルにしてください。
応募用紙※クリックするとダウンロードできます。
問い合わせ先
土木学会 環境賞選考委員会
TEL:03-3355-3442 / E-mail : office@jsce.or.jp
E-Mailでの提出は受け付けていません。上記の「提出先URL」から提出してください。
新着・お知らせ 添付サイズ 各グループにおける評価項目と評価の視点179.5 KB 令和7年度候補応募用紙(WORD形式)44.7 KB2025 年2 ⽉26 ⽇に発出した「下⽔道に起因する道路陥没事故をうけての⼟⽊学会会⻑から会員の皆さんへのメッセージ」に対応した議論の場として、表題の検討会を立ち上げました。土木学会前会長である佐々木葉氏の元、インフラメンテナンスだけでなく幅広い専門分野の方々がメンバーとなり、各人が自分ごととして捉え、分野横断で議論を深めます。
今回から4回にわたり、各専門家から話題提供を頂きます。
第1回目は、公益財団法人リバーフロント研究所 技術審議役の土屋信行様を話題提供者に迎え、「都市施設維持管理の構造的問題」と題しお話を伺いました。
日時:2025年6月11日(水)18:00-20:00
場所:土木学会 会議室&オンライン
次第:
1.佐々木葉先生からのご挨拶
2.土屋信行様からの話題提供
3.フリーディスカッション
4.次回のスケジュール確認
資料:
資料1 第2回検討会議事録
次回、第3回の検討会では、メンバーである東京大学の小熊久美子先生と京都大学の松田曜子先生のお二方に話題提供をお願いしております。
お知らせインフラ自分ごと検討会は、メンバーに限らず、希望する土木学会の会員の皆さまに門戸を開いております。傍聴や参加を希望される場合は、直接座長・幹事に以下のフォームからご連絡ください。
本検討会に関するお問い合わせ 新着・お知らせ 添付サイズ 2025.6.11_第2回検討会議事録_コンパクト版(最終).pdf704.65 KB仕事の風景探訪 事例8(中部支部)【デザインのチカラ】【コミュニティのチカラ】【土地の記憶のチカラ】
事業者 岐阜県多治見市
所在地 岐阜県多治見市
取材・執筆・撮影:ライター 茂木俊輔
編集担当:大野暁彦(名古屋市立大学/仕事の風景探訪プロジェクト・中部支局長)
せせらぎの音と豊かな緑に包まれながら、お気に入りの場所で過ごす――。駅の目の前なのに、そんな贅沢な時間を過ごせる公共空間がある。JR多治見駅の北口に広がる虎渓用水広場だ。駅北口一帯の土地区画整理事業で用地を確保し、多治見市が2016年7月に供用を開始した。
虎渓用水広場のテラス。大人数で集える大テーブルやカウンターテーブルを設える
広さは50mプール3面相当。総延長約200mにわたって巡る水路には、約2㎞離れた土岐川から引き込む水が自然流下し、所々にテラスや小広場が配置される。テラスにはテーブルや椅子が備え付けられ、リモートワークも可能。無料Wi-Fiの環境がうれしい。
人口10万人規模の地方都市では、駅前と言えば交通広場が目の前にどんと居座り、主役は自動車交通。駅とまちとの間をつなぐ結節点というのが一般的だ。近くに駅ビルや繁華街でもない限り、人の姿は途切れがち。電車の発着に併せ現れては消え、虚ろな空間が残る。
ところがここは、ひと味違う。主役はあくまで歩行者だ。
平日午前は、サラリーマンや若者、それに親子連れが立ち寄り、近くの幼稚園や保育園からは数十人の園児がまとまって遊びに訪れる。駅北口は古くからの商店街で賑わってきた駅南口とは反対方向にあたるが、歩行者の姿が途絶えることはない。
駅北口にこうした広場を整備する構想は、30年ほど前に生まれた。
きっかけは、タネ地の出現だ。国鉄分割・民営化に伴い、駅北口に広がる機関区・操車場の利用が廃止された。市はこれを引き金に区画整理事業を通じた駅北口のまちづくりに乗り出し、1994年度には機関区・操車場の跡地を国鉄清算事業団から取得したのである。
土地区画整理事業前のJR多治見駅北口。右手に北口までの跨線橋が見える(写真提供:多治見市)
区画整理事業の計画図では、駅前の一等地を市は「多目的広場」と位置付けた。「旧国鉄跡地を貴重な公有地としてまちなかに確保し、他のまちにはない独自の広場をつくり上げよう、と計画していました」。区画整理事業の後半、2012年4月から事業完了の2020年3月まで事業担当部門に在籍していた現建設水道部上下水道工務課課長代理の守屋努氏は経緯を説明する。
2000年8月になると、市は多目的広場ワークショップを主催し、区画整理事業区域内の地権者をはじめ、まちづくりに関心を持つ市民らとともに、広場の整備計画を検討し始める。並行して新たな風景づくり計画策定委員会も立ち上げ、駅北口の魅力づくりに向けた検討も進めた。
多目的広場にまず期待されたのは、人が集まるにぎわいだ。
当時、多目的広場の整備計画づくりに携わっていた現都市計画部都市政策課課長代理の小木曽明芳氏によれば、広場内にはイベントを開催できる空間と客席代わりにもなる階段を整備する案を描いていたという。通過点になりがちな駅前を人が滞在する空間にしたいというワークショップ参加者の思いが、計画案ににじみ出る。
多治見市の守屋努氏(右)と小木曽明芳氏
多目的広場の構成要素には「水辺」も見込んでいた。市が2001年3月にまとめた「新たな風景づくり計画書」では、整備方針の一つとして「魅力的な水辺景観がまちをめぐる風景をつくる」を打ち出す。具体的には、水路の整備だ。「広場内にカスケードという段差のある水路を巡らせ、水の躍動を見せる、という想定でした」(小木曽氏)。
この水路に巡らせようとしていたのが、土岐川の水。虎渓用水として100年以上前から利用されてきた河川の水を再び活用した、独自の風景づくりを計画していた。
多治見市内を東西に横断する土岐川。虎渓用水には、この上流から水を引き込む
虎渓用水は農業用水として1902年に開削された。駅北口一帯に位置していた農村集落は江戸時代から水不足に悩まされ、近くを流れる土岐川から水を引き入れようとした歴史がある。その後、土岐川との間を隔てる虎渓山にトンネルを掘り、そこを介して水を引き入れ、地域一帯に用水として巡らせる工事を実施する。しかし、トンネル工事は困難を極め、集落は財産を売り払い、農家は私財を投げ売った、と伝えられる。用水の開削は地元にとって悲願の達成だった。
地域一帯の市街化が進むと、民家の軒先を流れる防火用水として利用されるようになり、そのうち雨水排水路に機能を転じる。それに伴い、暗渠化が進行。住宅地の間を走る生活道路の幅員に車両通行上の余裕を持たせる役割を果たすようになる。
舗装の異なる箇所の下に虎渓用水の水路が通る。暗渠化で道路の幅が広がった
その後、虎渓用水の再生を訴える声が、地元商工会議所からも上がる。「副会頭を務めていた伊藤良一氏が会頭賛同の下、商工会議所内で委員会を立ち上げ、多治見駅北地区の整備方針を独自にまとめたのです」と守屋氏はいきさつを語る。用水の再生には、開削に動いた先人の精神を次世代に伝える狙いを込めていた。
ワークショップで想定していた多目的広場とは何が異なるのか――。
守屋氏によれば、多治見独自の顔をつくり、多くの人が集えるようにしたい、というまちづくりへの思いは共通だが、水景への重きの置き方に違いが見られたという。「ワークショップでは水景を持ちつつも広場の活用に重きを置くのに対し、商工会議所では虎渓用水の再生に重きを置いていたように思われます」。
とはいえ、双方とも地元の声には変わらない。市は互いの案のすり合わせに乗り出す。その仕掛けが、「多治見駅北地区における虎渓用水を活用した水と緑の委員会」の立ち上げだ。2010年2月、伊藤氏を会長に発足。そこから15回にもわたって多目的広場の整備計画を煮詰めていく。
「水と緑の委員会」の様子(写真提供:多治見市)
最終的なコンセプトは、①日常でもイベント時でもいろいろな使い方ができる、いつでも活気ある場所②水と緑が重なり合い、その中に気持ちの良い居場所が織り込まれている場所③多治見ブランドとして他のどのまちにもない、ここだけの駅前風景――という3つ。これらに基づく整備計画案を、小学校区単位の地区懇談会、市広報誌での意見募集、市民500人アンケート、パブリックコメントなどの手続きで寄せられた声も踏まえ、修正を重ねた。
論点の一つは、広場の面積と水辺の面積のバランスである。最終的には、イベント空間としての広場を求める声を受け、広場の面積を当初の整備計画案より広げる形で落ち着いた。「『夏にはビアガーデンを開催したい』というように、ここでやりたいことが具体的に提案されていました。それができないようでは多目的広場を整備する意義が損なわれることから、みなさんがやりたいことがやれるだけの広さを確保することを優先しました」と守屋氏は経緯を明かす。
委員会の運営補助業務は玉野総合コンサルタント(名古屋市、現日本工営都市空間)が担当していた。そこに、オンサイト計画設計事務所(東京都港区)が事業協力者として加わる。多目的広場の設計段階では、かたや設計者として、かたや設計協力で参画することになる2社だ。
「駅北口にはどんな水辺空間がふさわしいのか、事例を委員会で熱心に視察に回り、『星のや軽井沢』のランドスケープ設計を担当したオンサイト計画設計事務所の名が挙がりました。そこで、委員会の運営段階から参画してもらったのです」(守屋氏)。
広場と水辺のバランス確保では、設計協力者の果たした役割は大きい。
「委員会ではさまざまな意見が出ます。しかしオンサイト計画設計事務所では、どんな意見も否定せず、ひとまず提案に取り込もうとする。その作業を丁寧に繰り返し、合意を得ていくのです。その取り組み姿勢には感心しました」。守屋氏はデザインの力に感嘆する。
JR多治見駅側から虎渓用水広場を見下ろす。正面に見えるのが、イベント広場
論点は、もう一つ。多目的広場内での用水再生をどう実現するかという点である。当初の計画は、既設水路の途中にある分岐点から広場まで新たに水路を整備し、分岐点からそこに自然流下方式で水を流す、というもの。維持管理コストを抑える狙いから、動力は利用しない。
ところが、地形がそれを許さない。守屋氏は解説する。
「分岐点と広場との間は水頭差6m程度。途中の起伏を乗り越える必要もある。自然流下方式で水を流すには、広場への流入地点を地面から3m下げざるを得ません。そこからさらに広場内を巡らせようとすると、その形状は極端な逆ピラミッド型になってしまうのです」。
そこで採用を決めたのが、水路の代わりに導水管を用いる方式だ。分岐点と広場の間を導水管で結び、分岐点側からの水圧で水を送り込む。これなら、広場への流入地点は地面から1m下げるだけ。広場内をさらに水路で巡らせるにも、深く掘り下げずに済む。
導水管は公道下に埋設するが、既設水路と並行する区間は暗渠化された水路内に敷設する。分岐点から広場まで導水管の延長は約1000m。委員会から条件付けられた毎秒200ℓの流水量を、この方式で確保することに成功した。広場内を巡った水は、再び導水管を通して既設の水路内に戻り、最終的には土岐川支流の大原川に流れ込む。
虎渓用水広場内の水路は、いくつかの段差が設けられ、水が自然流下していく造り
土岐川から取水するにあたっては、水利権の見直しを求められた。
水利権とは、特定の目的のために、その達成に必要な限度で、河川の流水を排他的・継続的に使用する権利。1896年制定の旧河川法で許可制を取り入れたが、土岐川からの取水はそれ以前から実態があったため、虎渓用水には慣行水利権が認められていた。
ところが、①権利の内容が不明確②見直しの機会がない③取水量報告の義務がない――という理由から、国は慣行水利権を1964年制定の新河川法で定める許可水利権に移行させていた。虎渓用水の再生論議をきっかけに、市は河川法を所管する国土交通省との間で新たな用水の活用方法の協議を始める。
その結果、農業用水としての目的を終えた虎渓用水は、環境用水として再活用が認められることになる。対象施設は、虎渓用水広場だけではない。市が同時期に整備するビオトープや散水用井戸ポンプも含まれる。「環境用水としての水利使用であるため、水辺の環境づくりや暑さ対策という観点から、この2つの施設も加えることにしたのです」と小木曽氏は理由を明かす。
散水用井戸ポンプは、虎渓用水の水路が巡る一帯に立地する小学校前に整備された
虎渓用水の再生に向けた課題をこうして乗り越えながら、2015年7月、多目的広場は整備工事を迎える。市は設計監理業務を設計協力者でもあるオンサイト計画設計事務所に委託。水と緑の委員会の運営補助業務や設計協力業務での実績を評価し、随意契約で発注した。
利用者自ら居場所を生み出せるように椅子は可動式整備工事と並行して、市は2015年9月、多目的広場の設置・管理条例を制定。指定管理者による管理を定めた。「夏のビアガーデンなど市民が開催を望むイベントを開催しやすいように広場利用の自由度を上げるには、地方自治法上の『公の施設』と位置付け、運用については設置・管理条例で定めるのが一番、と判断した結果です」と守屋氏は経緯を説明する。
虎渓用水広場には集客力の高い各種のイベントでにぎわいが生み出される(写真提供:多治見市)
細かな縛りをなくそうという心意気は、可動式の椅子にも表れる。
広場内に備え付けの椅子はどれも、ただ置いてあるだけ。屋外に設置する椅子を盗難防止のワイヤーで地面にくくりつけている例も見られるが、ここでは解放されている。
「椅子を自由に動かせれば、例えば日陰など自分にとって気持ちの良い場所に居場所を好きに確保できます」と守屋氏。多目的広場のコンセプトに登場する言葉でもある「気持ちの良い居場所」は利用者自らが生み出すものでもあるという。
守屋氏はさらに言葉を続ける。「盗難防止に固定するというのが、行政の常識です。夜間だけ片づけるという案も出ましたが、手間がかかる。そこで思い切って、指定管理者が毎日、椅子の数を管理する程度にとどめたのです。市長にこの話を上げると、『椅子を盗むような市民は多治見にはいない!』と全面的にバックアップしてくれました」。
供用開始から9年。虎渓用水広場という通称が定着し、いまでは当初の期待通り、人が集まるにぎわいを生み出す空間として親しまれる。
2025年5月を例に取れば、市内で無肥料・無農薬栽培に取り組む生産者がオーガニック専門のマルシェを開催したり、市出身の女性ラッパーらが音楽・ダンスショーを開催したりするなど、にぎわいづくりに貢献する。指定管理者でもある一般社団法人多治見市観光協会(たじみDMO)も野外本屋を開設。駅北口に多治見独自の顔をつくる。
駅北口には、2015年1月に供用を開始した市の北庁舎に続き、本庁舎も移転してくる予定。供用開始は2029年上半期を目指す。その暁には、虎渓用水広場を新庁舎の前庭と位置付け、より一層のにぎわいを創出する計画だ。地方都市の庁舎は一般に、駅から離れた市街地に立地するが、その常識を覆す異例のまちづくりが控える。多治見独自の顔をつくる仕事は、まだ続く。
JR多治見駅北口には市庁舎が移転してくる予定。写真右奥には虎渓用水広場が広がる
【支部名】中部支部
【事例キーワード】
①技術のチカラ、 ②デザインのチカラ、 ③自然のチカラ、 ④コミュニティのチカラ、 ⑤記憶のチカラ
名古屋市立大学大学院の大野暁彦です。今回は中部からのご案内です。
今やさまざまに創意工夫された駅前空間が登場していますが、今回ご紹介する駅前空間には、用水路が引き込まれています。駅を降りて自由通路から降りると水音が感じられ、日本の中でも有数の酷暑のまちとは思えない玄関口です。四角い広場の中の水は池のような広い水面があるのではなく、細い水路がぐるぐるとまるで渦を巻いているかのように流れており、その間を園路で抜けていくような構成になっています。広い静かな水面の代わりに、流れのある水路が巡り、水音があちこちから聞こえます。水路沿いに展開する小さなテラスは適度な距離感で配置され、いつもたくさんの人が各々で気ままに過ごし長居している姿があります。このように地域の方々に親しまれている様子もまた魅力的です。全体的に掘り込んだサンクン形式の広場ということもあり、駅前でありながらみどりと水路に囲われた落ち着いて過ごせる空間が広がっています。高低差は階段やスロープだけでなく家具としても取り込まれ、1つのテラスの中でも多様な居場所が見られます。
このように大きなランドフォームの設定から水の動き、そして家具といったデザインに至るまで緻密に設計されています。私自身は大学の講義で1年生に必ず見学にいくように促し、私自身も学生とともに何度も訪れ、これでもかというぐらいあちこちを測ったり観察して学んできた場でもあります。今回はそんな綿密に設計された空間の完成に至るまでのプロセスからみていきます。
今回のライターさんは、茂木俊輔さんです。今回の取材で、このプロジェクトの背景にあるさまざまなドラマが浮かび上がってきました。ご期待いただければと思います。
写真1 段差を活かし床の高さやボリュームをコントロールすることで多様な居場所が生まれている(2016年)
写真2 周辺より掘り下げられ緑の中にどっぷり浸かれる(2025年)
世界各地で建設分野への応用が加速する3D プリンティング技術は,いまや橋梁や住宅といった実構造物にも活用され,我が国においても土木構造物の埋設型枠等への適用事例が着実に増えつつあります.建設現場の人手不足,工期短縮,環境負荷低減といった社会課題に対して,3D プリンティング技術は新たな解決策をもたらす力を秘めています.しかしながら、設計・製造・施工・維持管理の各段階で、レオロジー特性の制御、プリント造形物の性能評価、施工中の安定性確保、装置故障時の対応策など,乗り越えるべき課題は多岐にわたります。
こうした背景を受け、土木学会コンクリート委員会では,「建設用3D プリンタによる埋設型枠設計・施工に関する研究小委員会」(委員長:石田哲也 東京大学)を設置し,コンクリート標準示方書の体系を踏まえつつ、3D プリント埋設型枠に特有の課題を体系的に整理し、設計・施工・維持管理にわたる一貫した取り扱いを議論してきました.このたび,その成果として「建設用3Dプリント埋設型枠を用いたコンクリート構造物の技術指針(案)」を出版することとなりました.本指針(案)は,総則に続き,構造計画,設計,製造,施工,品質管理,検査,維持管理に関する8 章で構成され,加えて,試験方法の基準案や設計例,プリント事例などを付録として収録しています.
本指針(案)の出版に合わせて,講習会を下記のとおり開催いたします。奮ってご参加くださいますようお願い申し上げます。
記
主 催: 土木学会(担当:コンクリート委員会252委員会*)
*建設用3Dプリンタによる埋設型枠設計・施工に関する研究小委員会
日 時: 2025年8月6日(水)14:00~17:30(受付13:45~)
会 場: プラザエフ(四ツ谷)/オンライン(ZOOMウェビナー)
会場アクセス:https://plaza-f.or.jp/access
定 員: 会場参加100名/オンライン視聴最大500名(申込先着順)
参加費: 会員7,000円,非会員10,000円,学生会員4,000円
(コンクリートライブラリー168 1冊を含む)
主 催: 土木学会(担当:コンクリート委員会364委員会*)
*3Dプリンティング技術の土木構造物への適用に関する研究小委員会
プログラム(予定):
司会:井口 重信(CalTa)
時間
内容
登壇者
14:00~14:10
開会挨拶
石田 哲也(東京大学)
14:10~14:20
指針概要説明
國枝 稔(岐阜大学)
14:20~14:40 1章 総則15:00~15:20
4章 3Dプリント埋設型枠の製造
5章3Dプリント埋設型枠を用いた構造物の施工
小倉 大季(清水建設)
石関 嘉一(大林組)
15:20~15:40 6章 品質管理閉会挨拶
井口重信(CalTa)
* プログラムは変更になる場合があるので、最新情報はこのページでご確認下さい.
各CPD システム利用者への対応について:
【会場参加の方】
CPD受講証明書をご希望の方は必要事項を予め記入した申請書を当日講習会終了後に受付にご持参ください.受講証明印を押印いたします.
申請書類は https://www.cpd-ccesa.org/unit_assent.php からダウンロードして下さい.現地での受講証明書配布はございません.
※なお、対面参加とZoom参加の両方での申請はできないのでご注意ください.
【オンライン参加の方(Zoom)】
・申請期間:8/6(講習会終了後)~8/13(水)17時まで
・CPD単位の取得には、参加申込をして、実際に参加して、事後アンケートに回答することが必須になります.
土木学会CPDシステム利用者様:参加者ご自身によるCPDシステムへの「自己登録」をお願い致します.
建設系 CPD協議会加盟団体CPDシステム利用者様:各団体のルールに沿って,CPD単位の申請をお願い致します.
土木学会以外の団体に提出する場合の方法等は提出先団体に事前にご確認ください.
土木学会で証明する単位が各団体のルールにより認められないことがあります.
土木学会では他団体の運営するCPD制度に関しては回答致しかねます.
「第28回橋に関するシンポジウム」を2025年8月1日(金)に開催いたします。
詳細は、添付ファイルをご参照ください。
皆様のご参加をお待ちしております。
新着・お知らせ 添付サイズ 第28回橋シンポジウム会告.pdf237.64 KB●はじめに
「土木と学校教育フォーラム」は、道や川、まちといった様々な社会基盤・公共 財を題材とした初等中等教育のあり方を考え、児童・生徒のシティズン・シップ教育に資することをねらいとして全国の土木と学校教育 の双方の専門家と実践者により、種々の研究発表、事例紹介を行う場です。
第17回フォーラムでは,〈「暮らし」を支える「インフラ」の学習〜道路・橋・上下水道・街のメンテナンスと地域の未来〜〉をテーマとして開催いたします。
土木と学校教育会議検討小委員会
●開催日
2025年8月3日(日) 9:00~ 16:45
●開催場所
土木学会(講堂 他)
●実践研究報告(ポスター発表・教材展示)の申し込み ※全体テーマと関連しないものもご発表いただけます
報告内容について、全体テーマとの関連は問いません。「土木と学校教育」に関連するあらゆる内容の報告を受け付けます。
発表申込(〆切7月29日(火)):https://committees.jsce.or.jp/education04/form
※オンライン聴講の方はご発表いただけません
●プログラム(6月23日時点の暫定版でありタイトル等は予告なく変更の可能性があります)
9:00-9:15 はじめに 工藤文三(浦和大学)
9:15-10:15 基調講演(60分)
概要説明:藤井聡(京都大学)
講演:「インフラ老朽化とメンテナンス(仮)」(国土交通省(調整中))
10:15-10:25 (休憩・配置換え10分)
10:25-11:45 模擬授業WS(80分)
「風景街道をテーマとした水俣高校の探究活動-インフラメンテナンス・地域資源活用・まちづくり-」斉藤由依(熊本県立水俣高等学校)・田中尚人(熊本大学)
11:45-12:45 昼休み
12:45-13:45 実践研究報告(ポスター発表/土木を題材にした教材や指導書の紹介・展示)(60分)
13:45-15:00 実践研究報告(25分×3件:発表20分+質疑5分)
「無電柱化(仮)」竹山大輔(幕別町立札内南小学校)
「未来のまちづくり(仮)」鳥海陽一(厚沢部町立厚沢部中学校)
「小さな自然再生(仮)」中村晋一郎(名古屋大学)
15:00-15:10 (休憩・配置換え10分)
15:10-16:30 パネルディスカッション(80分)
〈「暮らし」を支える「インフラ」の学習〜道路・橋・上下水道・街のメンテナンスと地域の未来〜〉
コーディネーター:唐木清志(筑波大学)
登壇者(予定):竹山大輔(幕別町立札内南小学校主幹教諭),斉藤由依(熊本県立水俣高等学校),藤井聡(京都大学),宮川愛由(京都大学経営管理大学院/認定NPO法人ほっかいどう学推進フォーラム)
16:30-16:45 とりまとめ 唐木清志(筑波大学)
●主催・共催・協賛
主催:公益社団法人 土木学会 教育企画・人材育成委員会 土木と学校教育会議検討小委員会
共催(予定):公益財団法人 交通エコロジー・モビリティ財団
協賛(予定):一般財団法人 計量計画研究所、一般財団法人 全国建設研修センター、一般社団法人 北海道開発技術センター(順不同)
●その他
〇CPD ポイントについて
・本プログラムは、現地参加のみ、土木学会CPD認定プログラム(申請予定)です。
・オンライン聴講は、CPD対象外です。
●問い合わせ先
京都大学 田中皓介
(土木と学校教育会議検討小委員会 幹事長)
E-mail: tanaka.kosuke.6k(at)kyoto-u.ac.jp
「土木偉人カード」について
土木広報センター土木リテラシー促進グループでは、48人の土木偉人を題材にかるたの形式にした「土木偉人かるた」の続編として、新たに24人の土木偉人をカードにしました。第217回論説・オピニオン(1) AIと共生する未来社会に向けた交通インフラと倫理教育
広島大学 藤原 章正 IDEC国際連携機構
第217回論説・オピニオン(2) USAIDの解体 貧困問題と次世代を担う土木技術者の育成の重要性
論説委員 高橋 秀 日本工営ビジネスパートナーズ(株)
2025年9月に鳥取大学にて開催される第33回地球環境シンポジウムの初日9月24日(水)の本大会終了後に「地球環境シンポジウム 若手(仮)勉強会」を開催します。
今年度は、年齢や立場を忘れてフレッシュな気持ちで議論を行える場を作りたいと思っています。学会初参加の若手等をサポートしつつ、全世代でフラットに議論いただける参加者を募集しております。
【目的】
(1) 学生・研究者の知り合いを増やし、学会の交流・参加体験をより面白いものにする。
(2) 本若手会の枠組みを通して、
学会後も継続的な交流や活動が継続されるようなネットワークをつくる。
勉強会:9月24日17時から18時(予定)
懇親会:18時30分または19時から2時間程度(予定)
詳細は本大会のプログラムが決定後,確定いたします。
勉強会:鳥取大学コミュニティデザインラボ
懇親会:鳥取大学周辺
勉強会費:なし
懇親会費:4000円以下で検討中
問い合わせ先:
東北大学 池本敦哉
E-mail: ikemoto.atsuya.s1★dc.tohoku.ac.jp
※★を@に変更してお送りください。
新着・お知らせ第112代土木学会会長のプロジェクトの1つ「クマジロウの教えてドボコン動画配信」では佐々木葉会長の家族のくまのぬいぐるみ“クマジロウ”が、土木学会のコンシェルジュの“ドボコン”に素朴な質問をします。短い動画で土木学会のしくみや活動をお伝えします。あれ?そうなの?なぜ?と今までのあたりまえを考えるきっかけになるかも。気楽にお楽しみください。
番外編・エピソード10:こんなときどの回をみる?第112第土木学会会長のプロジェクトの1つである「クマジロウの教えてドボコン動画配信」も、いよいよこれで最終回です。そこで、これまで9回に渡って配信してきた動画について、どんな時に見たら良いかを紹介します。今まで、視聴いただき、ありがとうございました!また、どこかで逢えるのを楽しみにしています(クマジロウ、ドボコンより)
これまでのエピソードはこちらのリンクから
https://committees.jsce.or.jp/2024_Presidential_Project/kumajiro
!#会員#全国大会#会長#理事#土木会館#交流名刺#国際交流#ASCE#総会#JSCE#土木学会
新着・お知らせ2024会長PJ-交流の風景プロジェクトクマジロウの教えてドボコン動画配信WG第33回地球環境シンポジウムでは、論文区分を全文査読の研究論文とは別に査読なしの研究報告を募集しています。
この報告は「第33回地球環境シンポジウム講演集」として発刊されます。
(平成25年度まで「B論文」と呼んでいた査読なしの論文は「研究報告」と名称変更しました。)
土木学会の会員・非会員を問わない個人。土木学会内の委員会(およびそれに付随する小委員会等)も投稿できます。
2.原稿提出方法投稿ページ から、下記の内容を記述して投稿して下さい。
(1)発表題目
(2)発表者氏名
(3)所属と連絡先(住所、電話、Email アドレス)
(4)希望の発表形態(ポスター発表か口頭発表か)
(5)発表の分野(地球温暖化、地球環境政策など、2~3のキーワード)
参加申込ページ(7-8月公開予定)からシンポジウムへの参加申込みをしてください。
3.原稿提出期間2025年7月25日(金)14:00 厳守
4.投稿原稿について 5.募集課題(1)地球あるいは地域の環境問題とその解決策
(2)安全・安心な社会を形成するための土木技術・環境科学
(3)水・エネルギー・食糧問題などを克服する持続的な社会づくり・地域との合意形成
(4)気候変動の影響と緩和・適応方策についての取組み
ポスター発表もしくは口頭発表とします
※シンポジウムの会場や日程の都合上、ご希望に添えない場合がございます。
※若手、学生の皆さまを対象に”地球環境シンポジウム優秀ポスター賞”を用意しております。学生の皆さまは原則ポスター発表でお申し込み下さい。
白黒A4判(2350字)で2~6ページ(日本語または英語)とします。
詳細は原稿作成要領を参照ください。
MS-Word形式の論文テンプレートはこちらからダウンロードしてください。
採用決定通知は、7月下旬にメールにて連絡いたします。
提出された原稿を研究報告講演集の原稿とさせていただきます(図の濃淡、文字化け等にご注意ください)。
プログラムが完成次第、発表形態(ポスター・口頭)を連絡いたします。
講演集に掲載された著作物の著作権(著作権法第 27 条、第 28 条に定める権利を含む)は本会に帰属(譲渡)します。
著作者自らが、著作物の全文、または一部を複製・翻訳・翻案などの形で利用する場合、本会は原則として、その利用を妨げません。
ただしインターネットのホームページなどに全文を登載する場合は、本会へ通知しなければなりません。
第三者から、著作物の全文または一部の複製利用(翻訳として利用する場合を含む)の申し込みを受けたときには、本会は特に不適切とみなされる場合を除き、これを許諾することができます。
この場合、本会は著作者に著作物利用の概要を通知します。
共同著作された論文の著作権は、著作がなされた時点で氏名が掲げられた複数の著者に共有されます。
このため著者名の表示変更(著者の順番変更を含む)は認められません。
地球環境委員会では地球環境論文集ならびに地球環境シンポジウム講演集の出版形態の変更に関する議論を行っていましたが、令和5年度第1回地球環境委員会(2023年5月)にて下記の通り決定いたしました。
【お問合せ先】
土木学会地球環境委員会 地球環境委員会宛
Eメール:ck-info★jsce-ml.jp (atを★に変更してください)
このD&Iカフェトークでは、意外と身近にあるこんな働き方、生き方についておしゃべりしています。店主は土木学会でD&Iを考えているチームのメンバーです。
土木に限定せず、でも日頃土木の世界にいる人たちの興味からゲストをお招きして、ラジオ感覚で聴けるトークをお届けします。
根が真面目な土木!なので学会からの申し込みをお願いしていますが、もちろん学会に縁のない方、学生さんなど、どなたでもふらっと、気楽にお立ち寄りください。
D&Iカフェトーク
特別編 第4回 会長特別対談
DEIこそが課題を解決する
異文化のなかで永らく経営トップを務めてこられた
サンドラさんをお招きして、DEIの様々なかたちと
大切さを存分に語ります。
日時 :2025年7月11日(金)17時~18時
ゲスト :サンドラ・ウーさん
株式会社ミライト・ワン特別参与
ESGエグゼクティブアドバイザー
アンカー:佐々木 葉 さん(第112代土木学会会長/早稲田大学)
申込みページはこちら
https://us06web.zoom.us/webinar/register/WN_C3zw19VxSlKlhIqTzT-bHw#/
これまでの開催概要とアーカイブはこちら
新着・お知らせ2024会長PJ-ひろがる仕事の風景プロジェクトD&IカフェトークWG
地球温暖化に伴う気候変動により自然災害の激甚化・頻発化など、国内外で深刻な影響が顕在化している。地球温暖化対策はもはや待ったなしの状況であり、2050年カーボンニュートラル(CN)に向けた取組を加速させる必要がある。
特に、国土・都市・地域空間と、そこで営まれる人々の暮らしや社会経済活動を支えるインフラとこれらのマネジメントは、CNの実現に向けて重要な役割を担っており、土木界は長期的な視点をもって、積極的にCNに貢献していくことが求められている。
このような中、「カーボンニュートラルでレジリエントな社会づくり」に向けて、以下のような取組を行う。
≪カーボンニュートラル≫
以下の観点からの課題解決に向けた検討及び提言を行う。
など
≪災害時のレジリエンス強化≫
・(例)スマートグリッド等の導入における課題解決 など
鋼構造委員会に新設される「道路橋床版の維持管理と設計手法に関する調査研究小委員会」では、委員の募集を行っております。
公募の締切日は2025年7月31日(木)の予定です。
活動目的、期間、内容、応募要件や方法の詳細は、添付ファイルをご参照ください。
皆様のご応募をお待ちしております。
新着・お知らせ 添付サイズ 鋼構造委員会「道路橋床版の維持管理と設計手法に関する調査研究小委員会」委員公募.pdf127.54 KB仕事の風景探訪 事例7(東北支部) 【コミュニティのチカラ】
事業者:松日橋受益者組合
所在地:岩手県気仙郡住田町下有住高瀬地内
取材・執筆・撮影:土木ライター 三上美絵
編集担当:平野勝也(東北大学/仕事の風景探訪プロジェクト・東北支局長)
川が増水したとき、水に抗わずに流れる「流れ橋」。
部材が壊れたり、小枝や枯れ草などが引っかかって洪水を引き起こしたりするのを防ぐ古来の知恵だ。水嵩が元に戻れば、再び架け直して使う。
岩手県沿岸南部の住田町(すみたちょう)を流れる気仙(けせん)川にはかつて、多くの流れ橋が架かっていたという。だが、現在まで残っているのは、松日(まつび)橋ただ一つ。
伝統の灯を守り続ける地元の松日橋受益者組合の金野純一さんと、東日本大震災を機に移住してこの橋に魅せられ、“勝手応援団”を自認する伊藤美希子さん・田畑耕太郎さんに話を聞いた。
流れた橋を架け直す。人力だけ、約3時間で元どおり
4月下旬の土曜日、午前8時半すぎ。集落の人々が徒歩や軽トラックで、三々五々集まってくる。数週間前の雨で流れた松日橋を、自らの手で架け直すのだ。
松日橋は、気仙川左岸の松日地区と右岸の中山地区を結ぶ簡素な木橋。橋長は約40mで、「ザマザ(叉股)」、「桁」、「橋板」で構成されている。釘は1本も使っていない。
「ザマザ」は、木の二股に枝分かれした部分を切り出して作る。二股部分を下にして水中に二つ一組で上下流方向に並べて置き、上部のホゾを「桁」のホゾ穴に差し、楔(くさび)を打ち込む。そうしてできた門型橋脚の上に、長さ10mの杉板4枚を左右が少し重なるように並べて橋とする。
「橋板」の重さと水圧で安定しているため、ふだんの流れではぐらつくこともない。大雨で水嵩が増えると、「橋板」や「桁」が浮き上がってバラバラになり、流れる仕組みだ。あえてホゾ穴を大きめに作り、楔が外れやすくしておくことで、「ザマザ」が残る確率が高まるという。
4月中旬に降った雨で流された状態の松日橋。対岸側の半分が残り、手前側はなくなっている
ワイヤーロープでつながった部材が岸辺に寄せられていた。傷まないように、木をかまして水から上げてある
胴長に身を包んだ男性6〜7人が川へ入っていく。腰まで水に浸かり、まずは「ザマザ」の状態を確認し、流されずに残ったものは位置を調整。破損して使えないものや流されたものは、新しい材に取り替える。
「「ザマザ」にするのは、沢に生えているクルミやヤナギがいんだ、水に強えから。陸(おか)のケヤキなんかでは腐ってしまう」。土手の上で電動ノコギリを使い、「ザマザ」のホゾを彫り出しながらそう教えてくれたのは、松日橋受益者組合の金野純一さんだ。住田町役場のOBで、東日本大震災のときには住田町下有住(しもありす)地区公民館の館長として、地区内に設置された木造仮設住宅団地の支援活動に尽力した。
松日橋受益者組合の金野純一さん。8月4日「橋の日」の野球帽が似合う
川の中にいる人たちが、バラバラになり岸辺に横付けされた「ザマザ」と「橋板」を元の位置まで運ぶ。それぞれの部材はワイヤーで連結され土手の木に繋がれているので、よほどの嵐でない限り、流失してしまうことはない。回収して何度も再利用できるのだ。
杉材でできた「橋板」は長さ10m、厚さは12cmほどある。陸上なら、とうてい一人や二人で持ち上げられる重量ではない。それが、川に浮かべれば楽に運べる。
「そーらっ!よいしょ!」。男たちは掛け声と共に「橋板」を一気に持ち上げ、「桁」の上に載せる。「も少しカミ(上流側)だ。よーし、オッケー!」。陸上で監督する金野さんは、「橋板」の高さや位置を大声で指示し、橋がまっすぐ架かるように導く。昼前には作業が終わり、松日橋は元どおり素朴で美しい姿を取り戻した。
クルミの木が二股になった部分を伐り、「ザマザ」を作る。幹の上部に電動ノコギリでホゾを彫り出す。「ザマザ」用の木は、倉庫にストックしてある
「ザマザ」のホゾを「桁」のホゾ穴に差し込む
厚さ約12cm、長さ約10mの杉板も、浮力を利用すれば楽に運べる
金野さんが陸上から「橋板」の高さや左右のずれをチェックし、川の中の人たちに指示を出す
今回は奥の3枚目と4枚目は流れなかったので、手前の1枚目と2枚目の「橋板」を架けた。
「橋板」を「桁」の上に載せるのが一番力のいる作業。掛け声で力を合わせる
「橋板」は1枚目の右側に2枚目、その左側に3枚目を並べ、4枚目は1枚目と一直線になるように左側に並べる。
この写真は対岸から見たところ。手前の3、4枚目は流れなかった部分だ
松日橋の始まりがいつだったのかは、分かっていない。現地の案内板によると、1698年の元禄絵図には左岸に松日集落と街道、右岸に中山集落や水田が描かれていることから、集落と集落、あるいは集落と水田の往来のために橋があったと考えられるという。
設計図はもちろん、架ける手順を記した書物もない。金野さんも子どもの頃から作業を見て、やがて手伝うようになり、自然に体で覚えていったという。「どう架けると聞かれたち、『いやんびゃ(いい塩梅)に架けんだ』としか言いようがねの」と笑う。
架け直した橋は、2〜3年もつこともあれば、1週間で流れてしまったこともある。「うまく架かったときほど早えんだわ」という人もいた。大変な重労働なのは間違いないが、なんだかみんな楽しそうだ。
渡る人は1日に数人でも、橋がなければ田畑へ行くのに不便だ。それだけではない。流されるたびに「橋架けすっか」と相談し、協力して作業をすることが、地域の絆にもなっていると金野さんは言う。
「自分たちの生活に必要なインフラを自分たちの手で作り、維持管理する。まさしくこれが『土木の原点』でしょう」。この取材を企画した東北大学災害科学国際研究所准教授の平野勝也さんは、撮影に来ていた地元ケーブルテレビのインタビューに、そう答えていた。
SUMITAテレビのインタビューに答える平野准教授
外から来て、松日橋に魅せられた若い人たちもいる。マーケティングプロデュース会社ビーアイシーピー・ハナレの代表を務める伊藤美希子さん、住田町建設課の主査・田畑耕太郎さん夫妻だ。
二人が住田町と関わるようになったのは、東日本大震災後に町が建設した仮設住宅がきっかけだった。直接的な津波被害を免れた住田町は、独自予算で町産材を使った木造仮設住宅を設置し、陸前高田市や大船渡市など沿岸部の被災者を受け入れた。かつて内陸と沿岸を結ぶ宿場町として栄え、物流拠点でもあった住田町は、川や街道でつながるこれらの地域と昔から深い交流があったという。
震災当時、東京の広告代理店に勤めていた伊藤さんは、大学院時代の先輩の後を追いボランティアとして仮設住宅のコミュニティ支援に参加。「仮設住宅へ通う道筋に松日橋があり、いつも美しい橋だなと思って車を停めては見ていました」と振り返る。3年後に、参加していた支援団体「邑(ゆう)サポート」が一般社団法人化すると、理事として伊藤さんの活動はさらに本格化し、住田町へ通う頻度も増えていった。
住田で暮らす田畑さんと結婚してからも別居を続けていたが、コロナ禍を機に伊藤さんが移住。2021年に勤務していた東京のマーケティングプロデュース会社の住田オフィスを開設、2023年に子会社としてビーアイシーピー・ハナレを立ち上げ、現在は地域や行政、地元企業のマーケティング活動支援を行っている。
仮設住宅の支援活動を通じて公民館長だった金野さんと知り合ってからは、SNSでの松日橋の情報発信を手伝うことに。松日橋の四季折々の姿を写真に撮ってアップしたり、橋架けの予定を知らせたりしている。
「松日橋はシンプルで美しいところが好きです。橋架けも、測ったりしないのが逆に効率的だし、ゆるやかなプロセスが寛容で人間らしい。何より、流れ橋を風景として守り続け、誇りに思っている人たちが好き」と伊藤さんは微笑む。
ビーアイシーピー・ハナレ代表の伊藤美希子さん。NPOの活動とマーケティングプロデュース業の“二足のわらじ”で活躍している
一方、建築を専攻する大学院生だった田畑さんは2014年、仮設住宅の入居者が集まることのできる場所をつくろうという研究室のプロジェクトに参加。住田町に通い詰め、翌年には移住して町役場に就職した。
それ以来、人口約5000人の住田町で、役場にただ一人の建築士として公共建築の設計や工事発注、供用後の維持管理、制度設計などを手がけてきた。ほとんど前例のない木造の消防署として建築界の話題を呼んだ「大船渡消防署住田分署」のプロポーザルを実施したのも、田畑さんの仕事だ。地元の人たちの手で昔から受け継がれてきた松日橋にも、個人的に愛着を持っている。
「松日橋は、デザインのお手本だと感じます。ものづくりに携わる人間として、『壊れても直せるもの』を作る精神を常に持っていたい、と思わせてくれる」と話す。
取材当日、伊藤さんと一緒に橋の架け直しを見に来た田畑さんは急遽、助っ人として作業を手伝うことになった。もちろん、初めての経験だ。架橋を終え、川から上がってきたところで「明日は筋肉痛かもしれませんね」と話しかけると、学生時代はラグビー選手だったという田畑さんも「今すでに背中が痛い」と笑った。
流れた松日橋を見る田畑さんと伊藤さん
普(あまね)く請(こ)うと書く「普請(ふしん)」という言葉は、元は仏教用語で、皆で協力して建築や土木の工事を行うことを指した。中国唐代の禅院では、集団による生産労働など一切の行為が互いに協調するなかで、真の自己を究明する修行の意味があったという。日本でも、弘法大師空海が民衆と共に、利他の心をもって満濃池の大工事を成し遂げたのは有名な話。
声を掛け合い、協力しあって繰り返される松日橋の橋普請は、土木の原風景だ。流れては架け直す伝統が、この場所で継承され続けることの意味は大きい。同時に、田畑さんや伊藤さんのような地域外から来た若い世代が、ここで松日橋を含めた地域の在り方を体感し、広く伝えていくことにもまた、大きな可能性が秘められている。
架け直しが完成した松日橋。山あいのまちの風景に素朴な味わいを添えている
新着・お知らせ2024会長PJ-ひろがる仕事の風景プロジェクト仕事の風景探訪WG
公益社団法人土木学会(会長 佐々木葉)の土木計画学研究委員会は2022年度より「国土強靱化定量的脆弱性評価委員会(小委員長 藤井聡)」という土木計画学研究委員会内の小委員会を設置しています。この小委員会は、首都直下地震や三大港湾の巨大高潮、全国の河川における巨大洪水が生じた場合にどれだけの経済被害を受けるのかを推計する(こういう評価を「脆弱性評価」と呼称します)と同時に、それらに対する防災インフラ投資がどれほどの減災効果を持つのかを、最新のデータと技術を用いて「定量的」に評価・推計する研究を進めました。
本小委員会では昨年、2018年に土木学会・平成 29 年度会⻑特別委員会レジリエンス確保に関する技術検討委員会(委員長 中村英夫)が公表した『「国難」をもたらす 巨大災害対策についての 技術検討報告書』での評価技術に基づく首都直下地震で1000兆円超の被害等の被害推計値を「中間報告」として公表しましたが、本年はその中間報告では計算が完了していなかった南海トラフ地震の被害推計値を含めた「最終報告書」を公表します。また、昨年は物価上昇の影響を加味していない被害推計値を首都直下地震について公表していましたが、本年はそれについても近年の物価上昇の影響を加味した値を公表します。
詳細は 国土強靱化定量的脆弱性評価委員会HP をご確認ください。
新着・お知らせこのD&Iカフェトークでは、意外と身近にあるこんな働き方、生き方についておしゃべりしています。店主は土木学会でD&Iを考えているチームのメンバーです。
土木に限定せず、でも日頃土木の世界にいる人たちの興味からゲストをお招きして、ラジオ感覚で聴けるトークをお届けします。
根が真面目な土木!なので学会からの申し込みをお願いしていますが、もちろん学会に縁のない方、学生さんなど、どなたでもふらっと、気楽にお立ち寄りください。
D&Iカフェトーク
特別編 第3回 会長特別対談
大きな学会と小さな学会 ー両方からみえてくること
中高は女子校で、大学はほぼ男子校。
そこから歩んできた道や、現在会長を務める農村計画学会という
規模の小さな学会の特徴を伺いながら、
大規模な学会のあり方を改めて見つめてみます。
日時 :2025年6月20日(金)17時~18時
ゲスト :斎尾 直子さん
(第22期農村計画学会会長)
https://rural-planning.jp/
アンカー:佐々木 葉 さん(第112代土木学会会長/早稲田大学)
申込みページはこちら
https://us06web.zoom.us/webinar/register/WN_Q1SV4EKkQyqm2LalJ3ZhYw#/
これまでの開催概要とアーカイブはこちら
新着・お知らせ2024会長PJ-ひろがる仕事の風景プロジェクトD&IカフェトークWG
【支部名】東北支部
【事例キーワード】①技術のチカラ、 ②デザインのチカラ、 ③自然のチカラ、 ④コミュニティのチカラ、 ⑤記憶のチカラ
東北支局担当の平野勝也(東北大学)です。ようやく東北の「仕事の風景探訪」を紹介できることになりました。土木マニアの中では、知る人ぞ知る「松日橋(まつびばし)」です。岩手県の沿岸部の少し内陸にある山間の素敵な林業の町、住田町に松日橋はあります。松日橋は住民の手で架けられ、流されてもまた、住民の手で架け直され続けてきた、まさに土木の原点とも言える橋です。
住田町役場の田畑さんにご尽力いただき、さあ取材!と言う1週間前に、「松日橋流れちゃいました」とのお知らせ。もともと、取材に合わせてザマザ(さてこれはなんでしょう?記事本文をお楽しみに)を採る作業するので、それを記事にしてくださいと言うありがたいお話だったのですが、せっかく行っても橋はない。正直、残念。とはいえ、逆に橋が無い姿も流れ橋の醍醐味。気を取り直して、取材を楽しみにしていたところ、なんと前日に、明日、川の水量次第で架け直しをするかもしれないとのお知らせ。持ってます!まさに橋の架け直しを取材させていただけました。
平野は高田松原津波復興祈念公園のデザインをお手伝いしていたこともあり、陸前高田市にはそれなりの頻度で訪れていて、隣町の住田町に松日橋があるというのは知っていたのですが、なかなか昼間に訪れる機会がなく、月夜に浮かぶ幻想的な松日橋しか見たことがありませんでした。ぜひ昼間にちゃんと見たいと思い続けて幾年。念願の昼間初訪問させていただき、しかも、架橋そのものを拝見することができました。自分もお手伝いできるように胴長を持って行くべきだったと反省しつつも、やっぱり土木っていいなと。そして、みんなのために橋を架ける皆さんの楽しそうな姿に、土木屋の根源的な喜びを感じた次第です。
今回のライターも、 「かわいい土木見つけ旅」でお馴染みの土木ライターの三上美絵さんです。さすがライターさんと言う記事に纏めてくださっています。ぜひご一読を!
写真 月夜の松日橋
写真 住田町にはこんな素敵な水路橋もあります