土木学会が協力協定を締結しているモンゴル土木学会(MACE)の年次大会が6月16日から19日にかけてモンゴル国ウランバートル市で開催された。土木学会からは、山口栄輝・国際委員会委員兼幹事(九州工業大学教授)が出席した。土木学会以外には、中国土木水利工程学会(CICHE、台湾)が参加した。
国際プログラムとしてGreen Buildingをテーマとするラウンドテーブルミーティングが行われた。土木よりもむしろ建築に近いテーマであるが、山口により、3月に発生した東日本大震災の概要報告とともに、今夏の電力不足に伴う市民生活への影響、オフィスや工場の節電対策など、日本における省エネ関係の発表が行われた。参加者は、東日本大震災の報告も含め、たいへん興味を持ったようであった。なお、ラウンドテーブルミーティング終了後、CICHE会長から、東日本大震災の調査を計画している旨の話があり、土木学会への協力申し入れがあった。現在、土木学会としてCICHEに協力すべく、関係者と調整を進めている。
土木学会は、これまでより、モンゴル国の設計基準等整備を支援している。今回のようなMACEの年次大会にあわせて、これまでに数多くのミーティングや専門家の派遣、セミナーの開催など、様々な協力活動を行ってきた。最終的にはモンゴル版「構造物の設計の基本」の策定を目標としており、進捗状況についてMACE側に確認したところ、現在最終案を政府に提出、承認されるのを待っているとのことであった。
今回の訪問中、ウランバートル駅近くの橋梁建設現場を訪問する機会も得た。モンゴル国で4橋目となる鋼橋で、日本のODA案件として、建設技研インターナショナル、JFEエンジニアリングにより建設が進められている。本橋は跨線橋で、訪問日は跨線区間の上部工送り出し架設を終えた直後であった。自然環境、社会環境、文化等、あらゆる面で日本と大きく異なる条件下ではあるが、予定よりもむしろ早い進捗状況とのことであり、現地の日本の橋梁技術への信頼もたいへん厚いようであった。写真2に見られるように、ディーゼル機関車からの熱で橋梁が傷むのを防止するために、桁下に本体とは別に鋼板が設置されている。日本では見られない付属物であり、この辺りにもお国柄が現れている。
本橋下の鉄道は東西に延び、南部の工業地帯と北部の官公庁、商業地区を分断している。ウランバートル市では、近年の急速な経済成長、人口増加に伴い、激しい交通渋滞が発生している。本橋は、鉄道を跨いで新たな交通網の一翼を担うとともに、交通渋滞緩和にも大いに貢献するものと期待されている。
今回のMACE年次大会の参加にあたって、Ganzorig会長をはじめとするMACE関係者、土木学会モンゴル分会のEnkhtur分会長、野竹氏、JFEエンジニアリングの小林氏、辻氏に多大なご協力をいただきました。ここに謝意を表します。
(九州工業大学 山口栄輝/土木学会国際室 柳川博之)
写真1 Ganzorig会長による開会の挨拶
写真2 ウランバートル市で建設中の高架橋