土木学会誌の「国際センターだより」のページでは、土木学会の国際活動の一端を紹介しています。国際センターが毎月発行している「国際センター通信」と合わせて是非ご一読ください。
■モンゴル土木学会年次大会 参加報告
2016年6月9~10日、モンゴル・ウランバートル市においてモンゴル土木学会(MACE)年次大会が開催され、国際企画の一環として行われたジョイントセミナー「大規模事業のマネジメント」と円卓会議「BIM(Building Information Modeling)」に、国際センター・国際交流グループから2名が参加したので、その概要を以下に報告する。
モンゴルは、草原の国で、橋やトンネルといった土木構造物の建設機会が少ないためか、参加者の多くは建築技術者であり、冬が長く厳しいことによる工期短縮技術、冬期施工技術、資機材調達における脆弱な物流条件の考慮、まれに発生する地震へ対応等の要望や課題があり、外国企業との連携による先端技術の導入に関心が持たれている。
急増するウランバートルの建築物等の耐震化をキーワードにモンゴル企業と日本企業が連携を強め、モンゴルの建築物の一層の高層化、耐震化、施工時の生産性向上が図られることになれば、モンゴル、日本双方にとってメリットは大きい。今後、こうした分野を含め、関係機関の間で協力の具体化に向けた議論が継続することが期待される。
(中洲啓太氏の「国際センター通信」第48号寄稿文をもとに事務局にて作成した。)
ウランバートルの街並み
■2016年度 土木学会全国大会における国際関連行事の概要紹介
国際センターは、特別討論会「これからの我が国の国際貢献について」(建設マネジメント委員会と共催)、国際ラウンドテーブルミーティング(RTM)「建設システムの変革に向けたCIMへの期待」に加え、インターナショナルサマーシンポジウム(国際セッション)、国際若手技術者ワークショップ、ネットワーキングレセプションおよびテクニカルツアーを実施した。
7か国・地域から参加があった。特別討論会やRTM、サマーシンポジウム、国際若手技術者ワークショップ等の行事単位でみると、参加者数はほぼ例年どおりであった。若手技術者ワークショップへの日本人の参加は皆無であったが、せっかくの機会であるので、来年はぜひ参加していただきたい。テクニカルツアーについては、留学生等からも参加の希望が多く寄せられていたため、海外ゲストと別行程を組み実施した。海外ゲストは、早朝仙台を出発し、宮城県女川町の震災復興事業を視察し、帰路、石巻市の日和大橋経由で仙台に戻り津波避難タワーなどを視察した。一方、午後に出発する留学生グループは、東北大学災害科学国際研究所、仙台市津波避難タワー、仙台国際空港など仙台市内の各所を視察した。あいにくの雨ではあったが、参加者には満足いただけたと自負している。
(土木学会誌2017年1月号付録の全国大会報告記事もご覧ください。)
RTMの参加者
■「世界で活躍する日本の土木技術者シリーズ」-インド・メトロ案件の現状と今後の展望 開催報告
国際センター主催の第7回「世界で活躍する日本の土木技術者シリーズ」が、2016年5月16日、土木会館講堂で開催された。今回は、円借款事業として進行中のインド・メトロ事業に関わっている日本人技術者・研究者より、海外プロジェクトにおける日本企業や日本人の活躍の一端を紹介していただいた。
開会挨拶の後、国際協力機構(JICA)南アジア部次長の松本勝男氏から「インドにおける円借款事業~鉄道事業を中心に~」と題して、ムンバイ~アーメダバード間500kmの新幹線建設プロジェクト、インド全土に広がるメトロ事業への支援状況などについて講演があった。次に「インド・メトロ案件の現状と課題および今後の展望について」と題して、(株)オリエンタルコンサルタンツグローバルのインド現地法人の取締役社長として、メトロ建設現場の品質管理や監督業務に豊富な経験をもつ阿部玲子氏よりウイットに富んだ講演をいただいた。神戸大学の芥川真一教授からは、発展途上国における大型建設案件の安全管理について、現在取り組まれているインドでの施工時の変位等の計測に係る可視化技術の紹介があった。機器の納入を通じてメトロ案件に関わった日本信号(株)の臼井幸次氏、曙ブレーキ工業(株)の芳賀博文氏からは、参入の実例の紹介とともに、経験談を語っていただいた。最後に、山川朝生国際センター長代行から、インド・メトロにおける安全管理は日本が根付かせていることが分かった、国際センターは産官学の連携を標榜しているが、その連携のヒントを与えてもらったとの話があり、閉会した。
■2015年度 土木学会国際関係賞の紹介
土木学会賞のうち、国際貢献賞、国際活動奨励賞、国際活動協力賞が、2016年6月10日の総会にて23名に授与された。受賞者のうち4名は海外の方であり、国際貢献賞は1名、国際活動協力賞は3名である。
表1 2015年度国際貢献賞・国際活動協力賞の海外の受賞者
学会賞 | 氏 名 | 所 属 |
国際貢献賞 | Romeo S. Momo | Philippine Institute of Civil Engineers, Inc. 2012, 2013 National President フィリピン公共事業道路省 次官 |
国際活動協力賞 | Wong Kuok Hung | (株)オリエンタルコンサルタンツグローバル |
Phan Huu Duy Quoc | 清水建設(株) 土木学会ベトナム分会メンバー | |
曽我 健一※ | ケンブリッジ大学 教授 カリフォルニア大学バークレー校 教授 土木学会英国分会長 ※外国籍のため、国際活動協力賞の授賞対象となっている。 |
国際貢献賞は、日本国内外の活動を通じて、国際社会における土木工学の進歩発展あるいは社会資本整備に貢献し、その活動が高く評価された2名の日本人と、日本の土木工学の発展あるいは日本の土木技術の国際交流に貢献をした1名の外国人に授与された。また、国際活動協力賞は、日本との交流・協力を通じて土木工学の進歩発展あるいは社会資本整備に寄与し、今後とも活躍が期待される外国人に授与された。
6月9日には、受賞者のうち、Momo氏、Wong氏、Quoc氏を囲んで、国際センター主催の祝賀会を東京市ヶ谷の“JICA地球ひろば”において開催した。
お祝いの会で、JSCE幹部とともに
■国際センター&日越大学ジョイントセミナーの概要紹介
2016年6月15日土木学会A・B会議室において、国際センター・日越大学共催のセミナーが開催された。これは、日本政府が支援しハノイに設立予定の日越大学の開校に向けて、両国の土木技術者の交流促進を目的とするもので、ベトナムから5名の研究者が登壇した。前半は、日越双方の関係者よりベトナムの建設市場や人材育成の課題、日本のインフラ海外展開戦略等の報告があり、後半は、今後の交流の発展可能性等についてパネルディスカッションが行われた。多数の参加者が参加し盛会となった。日越大学を通じた土木技術者の一層の交流が期待される。(東京大学・加藤浩徳)
ジョイントセミナー風景
■ACECC技術委員会TC21の活動紹介
ACECC(アジア土木学協会連合協議会)内の21番目の技術委員会であるTC21の正式タイトルはTransdisciplinary Approach for Building Societal Resilience to Disasterである。
国ICHARM(水災害・リスクマネジメント国際センター)顧問の竹内邦良氏を委員長として、2015年10月に設置された。「Transdisciplinary」という言葉の意味するところは、共通の目的に向かって技術および分野の異なる関係者が協働するということである。
本委員会の狙いは、防災・減災の意思決定が、各分野の専門家や関係者の科学的知見に基づいてなされる仕組みを作り、その実践を推進することにある。これは、2015年3月に仙台で第3回国連防災会議が開催された折に採択された「仙台防災枠組2015-2030」に盛り込まれた、減災は分野・組織横断的な協働によって達成されるという考え方を踏襲している。
TC21では、第1フェーズ(~2019)として各国政府や地域における防災体制や技術の現状を調査し、第2フェーズでは、調査結果を踏まえてTransdisciplinary Approach(TDA)に関する事例を参加国が持ち寄り、比較検討の中から参加国に適した実践的仕組みを見出すことを目標としている。
今年の5月に第1回の国内支援委員会が開催され、6月10日にはフィリピン土木学会(PICE)と協議し、ワークショップを共同で11月にフィリピンで開催することを申し合わせた。
(ACECCのTC活動については、土木学会誌2016年6月号の「国際センターだより」をご覧ください。)
■第2回留学生向け現場見学会開催報告
留学生グループでは、日本で学ぶ留学生に日本の最先端の土木技術を知ってもらうとともに、土木関連企業に関する情報提供を目的として、留学生向け現場見学会を開催している。昨年に続き2回目となる今回は2016年1月21日(木)に、国土交通省近畿地方整備局琵琶湖河川事務局にご協力いただき、天ケ瀬ダムで実施した。関西圏の大学に所属する留学生17名が参加し、天ヶ瀬ダムおよび再開発事業のうち、ゲート室部、減勢池部、白虹橋上部工、流入部の4現場を見学した。見学会後の企業説明では、施工者5社からプレゼンテーションがあり、各社からはプロジェクトや業務内容、海外展開等に関する情報提供があった。
大断面の立坑や施工中のトンネル坑内など普段は目にすることのない現場を訪れ、そこで使われている可視化技術などの高度な技術に触れるという経験に加えて、現場の第一線で活躍する日本人技術者、日本企業に接することもでき、留学生にとって日本を知るうえで貴重な機会になったと考えている。
今後、留学生グループでは開催方法を改善しながら継続的に見学会を開催していく予定である。
■グローバルビジョン講演会2016 建設産業のグローバル戦略『建設産業のM&Aに学ぶ』編 開催報告
国際センターと建設マネジメント委員会の共催による「グローバルビジョン講演会2016「建設産業のグローバル戦略」~建設産業のM&Aに学ぶ編~」を2016年4月8日に、国土交通省と米国大使館商務部の後援を得て、70名を超える参加者を集めて開催した。
我が国のインフラ整備の経験を我が国の経済成長につなげていく成長戦略が極めて重要であり、近い将来、国内での新規建設投資の縮小が見込まれる中、海外事業を国内事業と並ぶ重要なビジネスのコアとして明確に位置付けることが必要である。そのためには、政府開発援助(ODA)事業のみに頼ることなく、世界の建設市場に対する戦略的な行動を継続していかなければならない。
そこで、世界のグローバル企業とともに、建設産業のグローバル戦略を語り、我が国の建設産業の海外展開戦略を考えるきっかけとしていただけるよう、本講演会を企画した。
基調講演では、岡積敏雄氏(国土交通省)から、インフラシステム海外展開の取り組みについて講演いただき、栄枝秀樹氏(AECOMジャパン)とイアン・チュン氏(AECOMアジア)から、M&Aという手段を活用したAECOM社の成長戦略、買収後の経営と新たなビジネスモデルなどを紹介していただいた。
■インドネシア土木技術セミナー開催報告
建インドネシア公共事業省道路研究所、国土交通省国土技術政策総合研究所(国総研)、土木研究所との共催により、「地域開発に関するオープンセミナー」を、2016年2月29日にインドネシア・ジャカルタにおいて、インドネシア公共事業省、観光省、地方自治体、学識者などから約120名の参加者を得て開催した。
セミナーは、アリ・セティアディ・モエルワント氏(公共事業省研究開発庁長官)の開会挨拶で始まり、ヘルマント・ダルダック氏(公共事業省地方インフラ開発庁長官)による基調講演、清水哲夫教授(首都大学東京)による「地域観光開発における交通システム・サービスの役割」と題する特別講義、伊藤正秀氏(国総研道路交通研究部長)による「日本の「道の駅」の概要と運営のポイント」と題する発表のほか、インドネシア側から4編の発表があった。
ダルダック長官からは、同国の新たな取り組みとして日本の道の駅を参考にした「スマート・トラベラーズ・プラザ計画」について紹介があり、清水教授の講義では、今後のインドネシアの観光振興に向け、国内観光需要を喚起させる必要があること、容易に観光地にアクセスできる交通基盤整備が必要であることなどの提言があった。
■第2回MES-JSCEジョイントシンポジウム開催報告
ミャンマー工学会(MES)と、2016年3月21~22日に第2回ジョイントシンポジウムを開催した。山川朝生国際センター長代行、塚田幸広専務理事、白土博通京都大学教授を含め日本からの8名のほか、現地から日本大使館の渡部正一書記官、JICAミャンマー事務所の早川哲史氏、日系企業の複数の会員が参加し、MESからはWin Khaing会長、土木学会国際貢献賞を受賞したHan Zaw元会長をはじめ、約200名が参加した。
初日は、「ミャンマーにおける土木技術者・研究者育成の現状と課題」、および「ミャンマーにおける日本の技術協力の現状と課題」に関する全体セッションに加え、橋梁・水資源管理・道路工学の3分野で日緬双方から研究・プロジェクトを紹介する並行セッションを実施した。2日目はJICAの協力でティラワ経済特別区開発、新タケタ橋建設、ヤンゴン環状線改良の実施状況を見学した。
この3月に発足した新政権では、Win Khaing会長が建設大臣に就任され、土木学会の国際貢献賞を受賞したKyaw Linn建設事務次官は留任となった。学会としては、この「幸運」を生かしてより積極的な交流事業を計画したいと考えている。会員諸氏のご支援・ご協力をお願いしたい。
■土木学会国際センター留学生グループの紹介
国際センター 留学生Gr.リーダー 齊藤正人
土木学会国際センター留学生グループでは、国内で学ぶ留学生と卒業生への情報提供とネットワーク化に取り組んでいる。主な活動は、留学生向け企業説明会や現場見学会の開催、土木学会全国大会でのサマーシンポジウムや若手技術者ワークショップの開催、留学生・卒業生への情報発信である。
留学生向け企業説明会は2013年から毎年実施している。建設業の海外展開が進む中、留学生の採用を積極的に考えている企業も増えており、日本企業への就職を希望する留学生へ企業活動の紹介や就職に関する情報提供を行っている。この企業説明会はマッチングの場として好評を得ている。
現場見学会は、現在は主に関西地域で実施している。留学生を対象として、橋梁やトンネルの建設現場の見学に加えて、ここでも企業紹介を行うことで、留学生に日本企業の活動を知ってもらう機会としている。
サマーシンポジウムは、国内で学ぶ留学生の研究発表の場として毎年開催されており、今年度で18回目を迎える。2012年度の第14回からは、それまでは独立開催であったが、全国大会年次学術講演会の一部として開催している。参加者数は毎年60名程度である。土木学会で最大の行事である全国大会に参加し雰囲気を知ってもらうとともに、講演の聴講や発表、交流会を通じて、他大学で学ぶ留学生同士にもコミュニケーションしてもらう場となっている。若手技術者ワークショップは、若手技術者が国境を越えて将来の社会を語り合うことを目的に、2013年の全国大会の折に始まり、翌2014年には、土木学会創立100周年記念事業の一環として開催された。以後、サマーシンポジウム参加者と公益信託土木学会学術交流基金の助成を受け、土木学会の海外協定学会等から来日したスタディー・ツアー・グラント(STG)参加者を交えて開催されている。
情報発信については、これらの活動に参加した留学生に対し「国際センター通信」を定期的に配信するほか、卒業生も含めて、ホームページ上でメールアドレス等を登録することで国際センターからの情報が得られる仕組みになっている。
卒業生は、帰国後もコンタクトが取れれば、様々な形で協力をしてくれる存在であり、コミュニケーションできる状況を用意することは重要である。ネットワークの構築と継続には多大な労力がかかり課題もあるが、効果的な活動を続けていきたいと考えている。(齊藤正人、長井宏平)
留学生向け企業説明会の様子
若手技術者ワークショップでの発表風景
■ACECCおよびTC(技術委員会)活動について
1.ACECCとは
1998年にフィリピン・マニラ市で開催された“Civil Engineering International Conference”の成功を踏まえ、主催したJSCE(日本)、ASCE(米国)およびPICE(フィリピン)の3学会が、アジア地域の学協会の連合組織を設立するための準備を進めた。その後、CICHE(台湾)およびKSCE(韓国)を加えた計5団体により、1999年9月27日に“アジア土木学協会連合協議会(Asian Civil Engineering Coordinating Council:略称ACECC)”が正式に発足した。
ACECCの主たる役割は、アジア地域の土木学協会をコーディネートする連合組織として、アジア土木技術国際会議(Civil Engineering Conference in Asian Region:略称CECAR)を3年に一度、主催し開催するとともに、多国間連携のもと、アジア地域が抱える社会資本整備や土木技術に関する課題を討議し問題解決を図ることである。2016年4月現在、13か国の学協会が加盟している。第7回目となるCECARは、2016年8月30日から9月2日に米国・ハワイにて開催される。次回第8回は2019年日本で開催されることが決定している。なお、ACECC事務局は、2013年8月から土木学会が担当している。
2.TC(技術委員会)活動
ACECCの最高決定機関として、年2回理事会(ECM)を開催しており、その下に財務委員会(FCM)、技術調整委員会(TCCM)、企画委員会(PCM)、CECAR組織委員会(LOC)が置かれている。このうち、TCCMは、ACECC加盟国を中心として組織化される各技術委員会(Technical Committee:TC)を統括している。
2001年に最初のTCが設けられて以来、現在までに21件のTCが設置されている。内、12件のTCが終了し、9件のTCが活動中である。JSCEが担当する活動中のTCは、CICHEと連携して提案した「鉄道に関するTC」(Railway Technology Renewal and Expansion in Asian Region)と、2012年3月のECMで承認された「ITSに関するTC」(ITS-based Solutions for Urban Traffic Problems in Asia Pacific Countries)、2015年3月のECMで承認された「防災に関するTC」(Transdisciplinary Approach for Building Societal Resilience to Disasters)の3件である。特に「防災に関するTC」では、学術・部門横断的アプローチにより災害に強い社会づくりを目指して、中長期的に活動を行うことにしている。
土木学会はACECCの加盟国の中でも極めて活発な活動をしており、21件のTCのうち、活動中の3件を含め9件のTCを担当している。
ACECCの組織と土木学会が主導するTC
■国際センター・グループ活動紹介:情報グループ
国際センター 情報Gr.リーダー 高橋良輔
国際センターが発足して2016年4月で丸4年を経た。そこで、国際センターの活動を担う5つのグループの役割とこれまでの活動を改めて紹介する。今回は、情報グループについて紹介する。
情報グループは、国際センターが掲げた土木学会の国際活動の課題のうち、広報に関する課題を解決するグループとしてセンター発足以来活動してきた。情報グループの活動は、担当次長、グループリーダーに加え4名の委員と事務局で構成される幹事会が運営している。また、調査研究部門の11の研究委員会に連絡委員を配置し、調査研究に関する国際活動の情報収集に努めている。
情報グループが発信している情報媒体として、毎月和文と英文でメール配信している「国際センター通信」と土木学会誌に掲載している「国際センターだより」がある。
国際センター通信は、土木学会の活動を国内外に発信する役割を担っている。掲載記事としては土木学会が関与する国際シンポジウムの開催報告や海外協力協定学会との国際交流の報告の他、海外への情報発信をより積極的にするため、平成27年度からは調査研究部門各委員会の活動紹介や、海外分会活動紹介、日本在住の外国人留学生からの投稿、さらに日本の企業が建設に関わった海外建設プロジェクトの紹介をシリーズ記事として開始した。また、主として海外の読者のために、日本の女性技術者の活躍や、国際センター主催のシンポジウムで紹介した海外プロジェクトなどを取り上げた「特集号」も年に3回程度不定期で配信している。国際センターだよりは全土木学会員が手にする土木学会誌に掲載するため、国際センター通信のダイジェストの他、海外分会紹介など学会の国際活動の国内向け発信媒体となるように注力している。
その他、情報グループは国際センターWEBサイトと英語版Facebookの管理も担当している。国際センターWEBサイトは、国際センター主催のイベント開催案内を掲載するだけではなく、国際センター通信や国際センターだよりのバックナンバー、英語による土木学会賞に関する情報等を随時発信している。また、英語版Facebookは投稿記事を増やしたこともあり、昨年、ファン数が1000を超えた。
以上のように、情報グループは国際センターおよび土木学会の国際活動の情報発信の中心を担ってきた。今年度から土木広報センター(2015年6月発足)と連携し、学会活動のみならず、日本の土木技術の国際社会への広報を積極的に行っていきたい。
皆様には是非国際センター通信をお読みいただき、より効果的な広報活動のためにも、感想や改善点などのご意見、情報をお寄せいただきたい。
■CICHE年次大会参加報告
中国土木水利工程学会(CICHE)の年次大会は2015年11月20日~21日に、台北市の国立台湾大学にて国際フォーラムと合わせて開催された。JSCEからは上田多門国際センター長、元国際部門担当理事の金井誠氏、事務局から澁谷主事が参加した。
国際フォーラムでは、台湾の国道高速公路の拡張とETCシステム、日本のトンネル掘削技術の現状、韓国仁川空港の先端技術等が紹介された。
年次大会は11月21日の朝、CICHE会長のLiang-Jenq Leu教授の開幕講演で始まった。台湾行政院の副総裁San-Cheng Chang氏による基調講演の後、特別功労賞、論文賞などの表彰があり、午後には招待講演者等によるセッションが行われた。
CICHE-JSCEミーティングでは、2016年5月に予定されている廣瀬典昭会長のCICHE訪問に合わせ、台湾にて第1回CICHE-JSCE土木技術者ワークショップを開催することが決定された。
■国際センターシンポジウム開催
2016年1月21日土木会館講堂において、第6回世界で活躍する日本の土木技術者シリーズシンポジウム「ネパール シンズリ道路建設プロジェクト」が開催された。
山川朝生国際センター長代行の開会挨拶の後、国際協力機構(JICA)資金協力業務部長の佐々木隆宏氏がシンズリ道路建設プロジェクトが最大規模の無償資金協力であったことや、プロジェクトの事業効果等について講演された。続いてネパール国道路局副局長のSanjaya Kumar Shrestha氏によるビデオメッセージが紹介され、その中では日本とネパールの友好と、日本の技術支援や資金協力への感謝が述べられていた。前半最後の講演では、日本工営(株)の新開弘毅氏がシンズリ道路建設における調査、設計、施工から維持管理までの概要について紹介された。
シンポジウムの後半では、日本工営(株)の藤澤博氏と片桐英夫氏から、過酷な自然環境の下でどのようにして総延長160kmにおよぶ山岳道路の設計や施工管理をしたかについて紹介があり、建設工事の概要については、(株)安藤・間の猪狩哲夫氏が現地での資材や重機の調達の苦労話を交えて説明された。また、日本工営(株)の鳥生昌宏氏には、現地での生活や体験をふまえて海外プロジェクトのやりがいを語っていただいた。最後に(株)コーエイ総合研究所の松村みか氏から、プロジェクトが住民にもたらしたライフスタイルの変化や、農業の近代化などの社会的効果についても紹介があった。
今回はシンポジウム全体をとおして、話題提供がバリエーションに富み、質疑応答も活発に行われ、大変盛会であった。
今年度も2~3回のシンポジウムを計画しているが、さらに若手技術者や学生の参加に期待したい。
プロジェクト概要の説明
■英国土木学会会長Robert Mair教授来会
2015年12月11日、英国土木学会(Institute of Civil Engineers:ICE)の2017年会長Robert Mair教授がJSCE英国分会長曽我健一教授とともに土木学会を訪問した。ICEとJSCEは1991年に協力協定を締結して以来交流を続けており、2014年の土木学会創立100周年記念では、ICE会長にご出席いただいた。今回は、廣瀬典昭会長、橋本鋼太郎顧問をはじめ、横田弘国際部門主査理事、日下部治ACECC代表、山川朝生国際センター長代行が出席し、Mair教授と意見交換を行った。ICEからはセンサーを導入したインフラ維持管理の促進について、JSCEからはインフラ健康診断と強靭化に向けた活動について説明があり、今回のICEの訪問は、インフラ維持管理への取り組みに対する両学会の最近の動向を知る機会となった。
今後も国際センターは、英国分会、英国グループを核としてICEとの交流を深めていきたいと考えている。
Robert Mair教授
Mair教授と談笑する廣瀬会長
■第3回留学生向け企業説明会開催
2015年12月19日、土木会館講堂において国際センター留学生グループ主催により、第3回留学生向け企業説明会を開催した。この説明会の目的は、留学生に日本の土木関係企業を紹介するとともに、就職情報を得る機会を提供することである。今回の参加企業は8社、参加した留学生は60名を超え、これまで以上に学生の関心の高さがうかがえた。
説明会では、これまでの企業によるプレゼンテーションおよび個別ブースでの相談に加え、国土交通省の海外展開についての講演や、元留学生の就職体験談、外国人留学生へ様々な支援事業を実施している独立行政法人日本学生支援機構(JASSO)の紹介があった。
今回の説明会も留学生と企業のマッチングの場として双方に大変好評であった。留学生グループでは、継続して留学生と日本企業が情報交換できる場を提供していく所存である。
プログラムの説明
企業別ブースでの相談
■米国土木学会(ASCE)年次大会参加報告
2015年10月11〜14日、米国土木学会年次大会がニューヨークのタイムズスクエアのマリオットホテルで開催された。土木学会からは廣瀬会長、塚田専務理事らが参加した。
2日目のオープニングセレモニーの後、ASCE功績賞授賞式が行われ、授賞式の場でボブ・スティブンスASCE会長からマーク・ウッドソン氏に会長の引継が行われた。
JSCEとASCEの二国間ミーティングでは、2015年9月の関東・東北豪雨災害について概要を説明し、その後、来年ハワイで開催予定のCECAR7の準備状況および、2019年に日本で開催するCECAR8に関して情報交換した。
また、13日のランチョン・ミーティングでは、ASCEの関係各国の学会との協力協定(AOC)の更新がなされ、JSCEは廣瀬会長と塚田専務理事が署名した。
マーク・ウッドソン新会長のスピーチ
ASCE-JSCEミーティング
■大韓土木学会(KSCE)年次大会参加報告
2015年10月28~30日、大韓土木学会年次大会が韓国の群山(グンサン)市にて開催され、JSCEからは廣瀬会長、間瀬教授(京都大学)他2名が参加した。
大会前日にソウル市内のJSCE韓国分会事務所を訪問し、翌28日には群山市に移動してKSCE年次大会Welcome Receptionに参加した。29日は金在權会長のはからいで、世界最大規模の33kmにおよぶ防潮堤を有するセマングムプロジェクト見学の機会を持つことができた。また、CCAW-ACECC 国際セミナーでは水資源分野における気候変動適応策について議論がなされ、間瀬教授が”Analysis of seawall stability and adaptation method for climate change”と題した講演を行った。
KSCE-JSCEミーティングでは、アジア土木技術国際会議(CECAR)における協力、支部間交流の活性化、JSCEとKSCE会員特典の相互利用などについて意見交換を行った。
KSCE-JSCEミーティング
セマングムプロジェクト見学
■国際センターのこれまでの活動総括と新年度に向けて
土木学会 国際センター長 上田多門
新年明けましておめでとうございます。国際センター発足後、4回目の新年を迎えました。2012年4月の発足当初から、「情報の共有と発信」、「人材の育成とネットワーク構築」、「質の高い継続的な交流活動」を キーワードに掲げ活動をして参りました。会員の皆さんに、国際センター発足後のこれらの活動が伝わっているでしょうか。
「情報の共有と発信」という点では、土木学会の英文Webサイトの大幅な改善、「国際センター通信」の和英での毎月配信、Facebook(英語版)による情報発信と交換に加え、2013年10月からは和文の「国際センターだより」を土木学会誌に毎号掲載しています。国際センター通信の配信先は1300を超え、Facebookのフォロワーは1000名を超えています。
「人材の育成とネットワーク構築」という点では、主として若手技術者を念頭に置いた講演会シリーズを継続的に実施しており、現在は「海外で活躍する日本の土木技術者シリーズ」を展開中です。 また、主として学生を念頭に置いたインターナショナルサマーシンポジウムと国際若手技術者ワークショップを土木学会年次大会中に開催し、留学生向けの企業説明会も実施しています。Facebookや国際センター主催行事への参加者等の情報に基づいてネットワーク形成強化を計画中です。
「質の高い継続的な交流活動」という点では、海外の31の土木関連の学協会と協定を結び、特にその中で重点的に交流活動を行う学協会を選び、毎年度交流活動を実施しています。その一環として、土木学会年次大会の国際行事として国際円卓会議等を実施しています。また、アソシエイト会員(仮称)という新たな会員区分を設け、会費を実質上無料とし、海外在住の会員ネットワークと交流活動の強化を目指す予定です。
上記以外にも、日本の基準の国際化、インフラ国際貢献アーカイブの構築、JICAとの連携など幅広く活動を実施中です。2013年8月にアジア土木学協会連合協議会(ACECC)の事務局が日本に置かれた以降、ACECCとの連携をさらに強め、ACECCが主催する国際会議を2019年に日本で開催することが決まっています。
土木学会は長年国際化に努めてきましたが、国際センターの発足による人員と予算の補強でエポックメイキングとなりましたが、最終的には国際化という言葉が不要となる真に国際化した土木学会を目指しています。引き続きみなさんのご理解と協力をお願い申し上げます。
全国大会テクニカルツアー
シンポジウムの様子
国際センターだよりバックナンバー