第30回土木学会映画コンクール受賞作品紹介
■最優秀賞
もう一つの白山 -通水編- 甚之助谷地すべり対策万才谷排水トンネル工事
企画:飛島建設(株)白山甚之助Ⅲ期作業所
制作:有限会社 創映舎
監督:田添 長郎
2023年
作品概要
白山甚之助谷地すべり対策の万才谷排水トンネルの建設を平成22年の工事開始から令和4年のトンネル通水にいたる過程を記録した作品である。当該地は、標高2,000mの高山に位置していることや白山国立公園内にあることから、厳しい施工条件においても環境保全に配慮した行われた工事の様子を紹介している。
審査員コメント
- 土木技術はすごいと感じた。険しい山で土砂を運ぶ作業をよく撮影したものだと驚いたとともに、良い記録だなと思った。
- こんなに厳しい土木工事が行われていたことに驚きを感じた。丁寧に撮影されており、大変な労力であっただろう。様々なシーンがあるので、映像作品として面白味が増している。一つ、注文を付けるとすれば、なぜ、地すべり対策が必要かの説明があると、なお良いと感じた。
- 貴重な作品である。ただ「砂防とは何なのか、私たちの暮らしにどう係わっているのか」等、の説明が欲しかった。
- 厳しい環境の山奥で土木屋の奮闘が表現されている。
- 一般の方も土木のプロジェクトの緻密さが伝わる作品と感じた。
■部門賞(一般部門)
繋げる~赤い鉄橋を蘇らせた工事の記録~
企画:東急建設株式会社
制作:東急建設株式会社、株式会社上田ケーブルビジョン
2022年
作品概要
大正13年に建設された上田電鉄別所線の千曲川橋梁は一時廃線の話があったが、地域の応援もあり通勤や通学、観光の足として愛されてきた。
2019年10月、東日本台風19号により千曲川橋梁が落橋。災害を受け廃線となる地方鉄道も存在する中、別所線は地域の熱い期待と応援、各所の支援を受け復旧が決定した。
この映像は、532日の月日をかけ、鉄橋を蘇らせた工事の記録である。
審査員コメント
- 地域の人たちがいなければ撮れなかった映像である。
- 丁寧な描写で好感が持てた。テーマ性もはっきりしている。
- 今、若い子たちが見て土木の分野に進みたがる作品。
■部門賞(技術映像部門)
鹿島港プロジェクト 波浪との闘い
企画:東亜建設工業株式会社
制作:スモールフィルム株式会社
2019年
作品概要
この記録映像は、一般社団法人建設コンサルタンツ協会主催(後援:公益社団法人土木学会)の「インフラ整備70年講演会~戦後の代表的な100プロジェクト~第8回『不毛の大地を蘇らせた鹿島港の開発』(2019.04.19開催)」の講演を目途に作成したものである。
運輸省第二港湾建設局鹿島工事事務所と茨城県が当時製作した記録映画のうち、今日まで残されていた希少な16mmプリントフィルム・ビデオテープをデジタル化し、そこに貴重な資料写真や当時を知る関係者のインタビューを加え、様々な関係者の手記をもとに新たに構成・編集したものである。
そこで発見されたストーリーは、時代を超えて続く自然と土木技術との格闘の歴史を背景に、鹿島開発を推進した岩上次郎・元茨城県知事の『農工両全』を掲げ、『人間性の勝利』を信じるリーダーシップと、それに呼応し、困難とされた鹿島灘の荒波と大砂丘を掘り込むという難工事を成し遂げた人びとの立場を超えた現場主義の信頼関係をまとめている。
審査員コメント
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貴重な昔の工事記録である。この工事が現在の湾岸工事の基礎であることがよく分かった。
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工事に携わった土木屋たちの熱い思いが伝わる作品であり、その思いから難工事であったことが理解される。
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純粋に「プロジェクトX」的な作品でエモーショナルである。