第26回土木学会映画コンクール受賞作品紹介
企画:緒方英樹 監督:泉 悦子 制作:虫プロダクション(株) 2014年
当作品は、国際コンサルティングに道を開いた久保田豊の半生を、アニメーション、記録写真、実写映像を使用して描いた作品である。雄大な阿蘇の麓で育った久保田豊は、自然を相手に仕事をしたいと考え、土木技術の道に進みダムを作り発電所の建設こそが世の中を豊かにすると考えるようになり、やがて中朝国境に当時世界最大級のダムを建設する仕事を成功させる。戦後、久保田豊は経験と技術を活かし事業の相談、設計、計画、調査などを行うコンサルタントを第二の人生に選び、世界各地で建設の指導に当たった。廣井勇に連なる戦前の土木技術者の一人としての活躍が示されており、戦後の日本の海外協力、コンサルタントの発展も示されている素晴らしい作品で、小中学生のみならず社会人でも興味を引くものに仕上がっており、一般の人々にも広く見てもらいたい作品である。
企画・制作:東京急行電鉄(株) 2013年
当作品は、東横線と東京地下鉄13号線(副都心線)との相互直通運転を行うため、東横線渋谷駅~代官山駅までの約1.5km区間を地下化し、平成25年3月15日の終電から16日始電までに実施された切替工事の施工記録である。限られた時間、作業エリアでの地下化工事の流れがわかりやすく表現されている。この事業により東武東上線・西武池袋線から東京メトロ有楽町線・副都心線を経て、東急東横線から横浜高速鉄道みなとみらい線までの5社の路線を結ぶ首都圏の広域的な鉄道ネットワークが形成され、都市交通のさらなる利便性向上や円滑化が図られるとともに、東京の都市再生にも寄与することになる。当作品はこの大事業の達成の瞬間に立ち会った数千人の現場の人々の働く姿を淡々と映し出しており、貴重な記録映像となっている。
企画:(一社)中部地域づくり協会 制作: (株)CBCクリエイション 2013年
2011年3月11日、日本を襲った巨大地震は未曾有の被害と悲しい爪痕を残した。中部地方も過去幾度となく巨大地震に襲われ、その記録が各地に残されており、南海トラフ巨大地震に直面していると言われる今、私たちは災害から学び教訓とすることが求められている。本作品は、受け継がれる巨大地震の爪痕、先人たちの知恵と教訓をとりあげ、巨大地震への備えの重要性を描いている。単に備えるといったことではなく、例示することで理解が深まる内容となっており、学校教育現場、地方自治体関係者にも見て頂きたい内容となっている。
企画:東京都・調布市・京王電鉄(株) 制作:京王電鉄(株) 2013年
2012年8月19日、京王線柴崎~西調布間と相模原線調布京王多摩川間の区間の地下化切替え工事が完了した。18箇所の踏切を除去と8箇所の都市計画道路を立体化するとともに、調布駅で分岐する京王線と相模原線の平面交差を解消するものであり、道路と鉄道の安全性の向上と地域の一体化、鉄道の安定輸送向上が図られる事が期待される。切替え工事は、それぞれの切替え口の特性を考慮した独特な切替方式を採用し、関係者約5,000名を動員するとともに朝の列車を計画的に運休して代行バスを準備する大規模な工事となったが、当映像では技術的説明を平易に行っており、工事記録・施工記録・土木啓蒙作品として、いずれもインパクトがあって良い。地下化工事、切替工事と、それぞれで工法等を分かりやすく説明しており、周辺住民や代替交通等工事の周辺にもスポットをあてている。またナレーション、音楽、音声のバランスが良く見ていて飽きない。画質がよく静止画も画質の良いものを良く選んで使用しており、作品時間は短いが、地下化の様子が良く理解でき、京王線、相模原線の6線3口を在来線直下に新たに建設した地下線に一晩で切替える工事を良く伝える作品となっている。