少子高齢化社会、人口減少社会の到来によって、将来人口推計結果によれば、2030年には2.1人で高齢者を扶養しなければならない構造とされる。この社会条件の変化に直面して、求められているのは経済活力の維持、発展である。土木技術者は、高速交通ネットワークを中心に更に経済効率のよい活力のある国土を整備することが求められる。しかるに高速交通ネットワークの現状は、欧米に比しても劣悪であるのみならず、隣の中国・韓国にも、主要都市部では既に劣っている状況にある。高齢化が進めば、インフラの不足は社会経済活動に致命的な影響を及ぼすことが確実である。
またIPCC第4次報告では、地球温暖化の緩和策に努めても、今後100年間に1.8~4℃の平均気温の上昇は避けられず、わが国は大洪水、大渇水が頻発して、防災インフラ、水資源インフラの機能が低下し、治水の安全度は、現在からほぼ半減することが予測されている。
今後の土木工学には、悪化する自然条件、社会条件を踏まえつつ、安全で豊かな国民生活を維持させ、活力ある生産経済社会を発展させるために、国土の将来像を展望して、限られた資源を有効に投資して、必要不可欠なインフラについては、着実に整備することが求められている。高度経済成長期には、道路、鉄道、港湾、都市計画、防災等の各技術が縦割りに分離して独立して計画されてきた嫌いがある。今後は国土の各地域の自然的・社会的特性に着目して、国民との合意形成をはかりながら、各技術が総合的に有機的に結びついた視点で計画する必要がある。そのためには、専門分野の知識のみならず、他部門の分野にも深い洞察力を持った技術者の活躍が望まれる。