アジア土木技術国際会議(CECAR)
第4回アジア土木技術国際会議(4th CECAR)開催報告
アジア土木学協会連合協議会(ACECC)担当委員会
委員長 奥村文直
はじめに
第4回アジア土木技術国際会議(4th CECAR)は、6月25日から28日にかけて台北で開催され、22の国と地域から1000名を越える参加者があり、このうち日本からの参加者は約130名であった。この大会では「持続可能なアジア」をテーマとしている。
今回の4th CECARでは、日本からは石井弓夫会長をはじめ、栢原英郎次期会長、日下部治副会長・国際委員長のほか、濱田政則前会長が特別講師として参加され、さらに歴代会長も多数参加された。プログラムでは、土木学会は2つのスペシャルフォーラムを担当し、その準備や関係者との調整、資料の取りまとめを、アジア土木学協会連合協議会(ACECC)担当委員会が中心となって行うなど、4th CECARの運営にも土木学会は貢献し、あわせて日本として積極的なプレゼンスを示すことができたと考えられる。また学会長会議での成果を「台北宣言」として取りまとめるにあたり、日本からの主張も多く盛り込まれることとなった。
4th CECARでの土木学会の関連活動を実行するにあたり、大会運営のための協賛金を21の企業および団体からご提供いただいた。また、中国土木水利工程学会、土木学会台湾分会の多大なご協力をいただいた。ここに記して感謝の意を表する次第である。
なお次回第5回アジア土木技術国際会議は、2010年8月にオーストラリア・シドニーにて開催される。
1.ACECC関連会議
(1)ACECC第15回理事会等
CECAR前日の6月24日に、計画委員会と技術調整委員会が開催され、メコン河流域開発技術委員会の活動報告を行い、また、新たに、本城岐阜大教授を委員長とする「設計コードの調和」技術委員会の設置が認められた。これらは、住吉幸彦土木学会代表等が参加した25日の理事会で正式に承認されている。
(2)ACECC学協会会長会議
25日の午後には、ACECC加盟学会の現役会長のみならず、歴代会長をも集めた会議が開催され、台北宣言の内容が検討された。
(3)Asian Summit「台北宣言」の発表
台北101(世界一の高さを誇るビル)の85階のレストランで台北宣言を発表し、署名式が行われた。台北市長も参加し、アジアの安定的な持続可能な発展のための環境への配慮などを盛り込んだ宣言である。台北宣言は、土木学会HP 「会長室から」に掲載されている。
2.開会式・表彰式(6/26)
26日の午前、開会式が開催され、開催国からの歓迎のことばが述べられた。開会式に続き、ACECC賞表彰式が行われ、故・西野文雄・東京大学名誉教授がACECC功績賞(受賞者3名)を受賞し、「新潟県中越地震からの復旧事業」(JR東日本、NEXCO東日本)がACECC技術賞(受賞プロジェクト5件)を受賞した。筆者が、表彰小委員会委員長として司会を勤めた。
3.特別講演・スペシャルフォーラム・学生エッセイ・パラレルセッション
6月26日、27日の2日間にわたり、1件の基調講演、9件の特別講演、4つのテーマのスペシャルフォーラム(SF)、学生エッセイ発表、論文発表が行われた。
(1)特別講演
日本からは、濱田政則早稲田大学教授(土木学会前会長)により、"Roles of Civil Engineers for Disaster Mitigation under Changes of Natural and Social Environment"と題する講演が行われた。
(2)スペシャルフォーラム(SF)
1)SF1:持続可能な地域・都市開発
話題提供:石井弓夫会長 タイトル:「日本の水資源政策の経過と評価」
2)SF2:2004年スマトラ島沖地震・津波-被害、教訓、減災
座長:今村文彦・東北大学教授
話題提供:藤間防衛大学校教授、幸左九州工業大学教授、濱田政則早稲田大学教授ほか
内容:ACECCに設置されたスマトラ島沖津波の技術委員会での活動報告と今後の方向性について議論が交わされた。なお、このSFは土木学会学術振興基金の助成により 運営された。
3)SF 3:アジア域内における設計基準の調和
座長:本城勇介・岐阜大学教授 コーディネーター:堀越研一・ACECC担当委員会幹事長
内容:アジア地域における設計コード調和に向けた必要性を議論し、その課題を確認することを目的としたもので、自然条件、災害条件が類似のアジア域内で共通の認識にたった設計コードの可能性について、意見が交わされた。
4)パラレルセッション(一般発表)
パラレルセッション等での発表が行われ、口頭発表159件、ポスター発表36件であった。日本からは、口頭発表45件、ポスター発表7件、合わせて52件の発表があった。
5)学生エッセイコンテスト
ACECC加盟学会から推薦された7名の学生によるエッセイ発表が行われた。日本からは、篠田陽介さん(名古屋大学工学部4年生)が、「The Duties of Civil Engineering」 と題する発表を行った。
4.ブース展示
土木学会は、協賛企業と共同で、土木学会技術賞を中心に日本の土木技術を紹介するブース展示を行った。5つのブースを連続して使用し、入り口のすぐ横という好位置であったため、多くの来場者を集めることができた。
5.台湾分会交流会(6/26)
土木学会からの参加者と、台湾在住の土木学会員の交流を深めることを目的とした交流会を開催した。石井会長をはじめとする日本からの参加者と分会関係者あわせて52名の参加があった。
6.台湾・韓国・日本VIP朝食会(6/27)
CICHEのYang会長の主催で、3カ国のVIPが集まり、インフラ整備に関する意見交換を行った。朝食会では、Yang会長のあいさつ、出席者の紹介のあと、三谷土木学会元会長による日本のインフラ整備と先進的な建設技術の紹介のプレゼンテーションが行われた。その後、出席者による活発な討議が行われ、今後とも社会資本整備の重要性を訴えていくことで意見が一致した。今度とも、3カ国で意見交換を続けることとした。
7.閉会式、ガラディナー(6/27)
(1)閉会式
閉会式では、理事会の新しい会長であるオーストラリアのミッチェル氏にACECC旗が引継がれた。
(2)ガラディナー
ガラディナーでは、韓国の土木技術者コーラス、台湾の民謡などが披露された。土木学会は日本からの参加者で「上を向いて歩こう」を熱唱し、好評を博した。
8.テクニカルビジット
28日に以下の4つのテクニカルビジットが開催された。
●世界一高いビル「台北101」見学・MRT現場視察
●アジア一長い「雪山トンネル」視察
●台湾高速鉄道で行く台中、地震研究所見学
●台湾高速鉄道で行く高雄、愛河再開発視察
おわりに
日本の土木学会が主導して1999年に創設されたACECCは参加国も増大し、活動領域を広げている。またCECARも第4回を迎え、討議内容も次第に深まりを見せている。
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【出典:土木学会誌2007年8月号98~99ページ】