1998年にマニラで開催されたアジア土木技術国際会議の成功を踏まえ、主催したJSCE(日本)、ASCE(アメリカ)およびPICE(フィリピン)の3学会が、アジア地域の学協会の連合組織を設立するための準備を進めた。その後、CICHE(台湾)およびKSCE(韓国)を加えた5団体により、1999年9月27日に“アジア土木学協会連合協議会(Asian Civil Engineering Coordinating Council: ACECC)”が正式に発足した。
ACECCの主たる役割は、アジア地域の土木学協会をコーディネートする連合組織として、アジア土木技術国際会議(Civil Engineering Conference in Asian Region:CECAR)を継続的に主催するとともに、多国間連携のもと、アジア地域が抱える社会資本整備や土木技術に関する課題を討議し問題解決を図ることである。現在は、発足時の上記5団体の他、IE Australia.(現EA、オーストラリア)、VFCEA(ベトナム)、MACE(モンゴル)、HAKI(インドネシア)、ICE, I(インド)、IEB(バングラデシュ)、IEP(パキスタン)、NEA(ネパール)、Fed.MES(ミャンマー)、MD-RSCE(ロシア)、ENZ (ニュージーランド)、IESL(スリランカ)が加盟し、17団体により構成されている。
アジア土木学会連合協議会(ACECC)加盟学会一覧(2024年1月現在)
国名 | 略称 | 加盟学協会(アルファベット順) |
米国 | ASCE | American Society of Civil Engineers |
台湾 | CICHE | Chinese Institute of Civil and Hydraulic Engineering |
オーストラリア | EA | Engineers Australia |
ニュージーランド | ENZ | Engineering New Zealand |
ミャンマー | Fed. MES | Federation of Myanmar Engineering Society |
インドネシア | HAKI | Indonesian Society of Civil and Structural Engineers |
バングラデシュ | IEB | Institution of Engineers, Bangladesh |
パキスタン | IEP | Institution of Engineers, Pakistan |
スリランカ | IESL | Institution of Engineers Sri Lanka |
インド | ICE, I | Institution of Civil Engineers India |
日本 | JSCE | Japan Society of Civil Engineers |
韓国 | KSCE | Korean Society of Civil Engineers |
モンゴル | MACE | Mongolian Association of Civil Engineers |
ロシア | MD-RSCE | Moscow Department of the Russian Society of Civil Engineering |
ネパール | NEA | Nepal Engineers’ Association |
フィリピン | PICE | Philippine Institute of Civil Engineers |
ベトナム | VFCEA | Vietnam Federation of Civil Engineering Associations |
【オブザーバ】 | ||
カンボジア | CACE | Cambodian Association of Civil Engineers |
◆ACECCのホームページはコチラ
◆ACECCの目的
ACECCの目的は、定款(Constitution)に以下のように定められている。
1. 土木および関連分野での科学技術の発展
To promote and advance the science and practice of civil engineering and related professions for sustainable development in the Asian region.
2. あらゆる分野の技術者間の情報交換
To encourage communication between persons in charge of scientific and technical responsibility for any field of civil engineering.
3. インフラ整備とマネジメント、環境の保全、防災などの活動の活発化
To improve, extend and enhance activities such as infrastructure construction and management, preservation of the precious environment and natural disaster prevention.
4. メンバー学協会間の意見・情報交換
To foster exchange of ideas among the member societies/institutions.
5. 地域、国家、国際的の活動を支援と協力
To cooperate with any regional, national and international organizations to support their work, as the ACECC deems necessary.
6. メンバー学協会の活動強化に対するアドバイス
To provide advice to member societies/institutions to strengthen their domestic activities.
7. ACECC主催のアジア土木技術国際会議(CECAR)の3年毎の開催
To achieve the above objectives, international conferences called the Civil Engineering Conference in the Asian Region (CECAR) will be held on a triennial basis as the main activity of the ACECC.
◆ACECCの組織
ACECCの最高決定機関として、年1~2回理事会(ECM)を開催しており、その下に財務委員会(FCM)、技術調整委員会(TCCM)、企画委員会(PCM)、CECAR組織委員会(LOC)が設置されている。
技術調整委員会は、ACECC加盟国を中心として組織化される各技術委員会(Technical Committee:TC)を統括するものであり、今までに27のTCが設置された(下図参照)。
日本(JSCE)はACECCの加盟国の中でも極めて活発な活動をしている。土木学会はこれら27のTCのうち、活動中の2つのTCを含め9つのTCを担当してきた。
◆ACECCの活動
1.Technical Committee
2001年に最初のTCが設けられて以来、現在までに25件のTCが設置されている。内、17件のTCが終了し、10件のTCが活動中である。JSCEが担当する活動中のTCは、2015年3月のECMで承認された防災に関するTCである。日本(JSCE)はACECCの加盟国の中でも極めて活発な活動をしており、27のTCのうち、活動中のTCを含め9つのTCを担当してきた。
2.表彰制度
ACECCはSubcommittee on ACECC Awardsを設置し、「Civil Engineering Project Award(プロジェクト賞)」および「Civil Engineering Achievement Award(功績賞)」の二つのカテゴリーの表彰を行っている。2007年の4th CECAR開催時に第1回目の表彰が行われ、以後、CECAR開催の際に表彰が行われている。
土木学会推薦候補の表彰は以下のとおりである。
会議名 | 賞の名称 | 受賞プロジェクト・受賞者 |
4th CECAR (2007) |
プロジェクト賞 |
新潟県中越地震からの復旧事業(JR東日本、NEXCO東日本) 西野文雄(東京大学名誉教授) |
5th CECAR (2010) |
プロジェクト賞 |
バリビーチ海岸保全プロジェクト(日本工営) 中村英夫(東京都市大学学長、東京大学名誉教授) |
6th CECAR (2013) |
プロジェクト賞 |
新東名高速道路の建設(NEXCO中日本) 岡田 宏(海外鉄道技術協力協会最高顧問) |
7th CECAR (2016) |
プロジェクト賞 |
中央環状線 山手トンネルの建設(首都高速道路) 住吉幸彦(日本支承協会顧問、セントラルコンサルタント元会長) |
8th CECAR (2019) |
プロジェクト賞 |
新宿駅南口地区基盤整備事業-三層の人工地盤からなる交通結節点を民間ビルと一体で実現へ(国土交通省東京国道事務所、JR東日本)) 石井弓夫(建設技術研究所名誉顧問) |
9th CECAR |
プロジェクト賞 功績賞 TC賞 |
阿蘇大橋地区斜面防災対策工事(国土交通省九州地方整備局・熊谷組 ) 日下部治氏(元ACECC Chair、国際圧入学会専務理事、東京工業大学名誉教授) TC21 Transdisciplinary Approach for Building Societal Resilience to Disasters |
3.その他の活動
a)英文報告集(e-publication)の発行(JSCE提案)
アジアの社会資本整備に寄与する実務に重点をおいた情報(論文、技術報告、活動報告)を紹介することを目的としており、ACECC web-siteに掲載することにより、アジア諸国のための土木技術情報の掲示板としての機能を果すことが意図されている。
b)加盟団体の増強策の検討
現在、土木工学に特化した団体を持たないアジアの国々の工学会に対し、ACECCへの加盟を勧めている。工学会の中の土木部門だけが参加するケースもあり、三つの会費レベルを定めている。
4.アジア土木技術国際会議(CECAR)
定款の目的の中の第7項に記載されているアジア土木技術国際会議(CECAR)は、ACECCの主要活動の一つであり、3年に一度、アジアの1,000人を超える産官学の研究者、技術者らが一堂に会する会議として、その注目度を高めている。
土木学会は、同会議に第1回大会から積極的に関与し、ACECC担当委員会を通じての支援を行い、会議には多くの日本人技術者が参加している。また、第2回大会が2001年に東京で開催された。
2007年6月に台湾・台北市で開催された第4回CECARは「持続可能なアジアのために」をメインテーマとし、1,000人を超える参加があった。また期間中に各学協会会長による「Asian Summit」が開催され、「持続可能な発展に関する台北宣言」が世界に向けて発信された。4th CECARにおいて、土木学会からは論文投稿(52編)をはじめ、「アジア域内における設計基準の調和」および「2004年インド洋沖スマトラ島地震および津波災害」をテーマとするスペシャルフォーラムを企画・運営した。
2010年8月には第5回CECARがオーストラリア・シドニーで、2013年8月には第6回CECARがインドネシア・ジャカルタで、2016年8月には、第7回CECARが米国・ハワイで開催された。2019年には日本で第8回CECARが開催され、2022年はインドのゴアで第9回CECARが開催された。第10回CECARは2025年に韓国・済州島で開催予定である。
添付 | サイズ |
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