環境システム委員会2025-2026年度の活動に向けての所信
2025年4月
委員長 齊藤 修(地球環境戦略研究機関)
人間と環境との間の様々な課題についてシステム論の視点から俯瞰的に課題解決に向けた研究を進めること、これが環境システム研究の目指してきたことだと思います。特定の学術領域を基盤にするというより、むしろその時代その時代で求められる重要課題に応じて、その課題解決に必要な方法や多様な学術知を駆使するという学際性と動的な可変性が環境システム研究の特徴と言えるかもしれません。昨今では、カーボンニュートラル、循環経済、ネイチャーポジティブ、DX、GX、AIなど、様々なキーワードが飛び交っていますが、それらの部分最適を進めるのではなく、より俯瞰的な視点から全体最適に近づけるような解決策を提示していくのが環境システム研究にとっては肝要です。こうした基本認識をより深め、広く共有していくため、今期の委員長就任にあたり、ふたつの目標を設定したいと思います。
- 環境システム研究の最前線をまとめた教科書的な書籍の出版
ひとつめは、環境システム研究の最前線をまとめた教科書的な書籍(日本語)の出版です。環境システム委員会では1997年に『環境システム: その理念と基礎手法』を出版していますが、残念ながらその続編は出版できていません。最初の出版から30周年となる2026年度末を目標に新しい書籍出版に向けた準備を進めたいと思います。まずは日本語での書籍化を先行して進め、その次にはその英訳版の出版も進めて、留学生の教科書としても活用してもらえるようにしたいと思っています。書籍化に向けて各種小委員会横断的なワーキンググループを組織していきますので、是非ともご協力のほどよろしくお願い申し上げます。
- 国際シンポジウムの開催
ふたつめは、例年10月から11月に実施している環境システム研究発表会の開催前後、または開催期間中に国際シンポジウムを開催することです。これまで環境システム委員会では主に日本語ベースでの環境システムシンポジウム、地域シンポジウムなどを実施してきました。また、国際連携小委員会が中心となって既存国際学会での企画セッションの実施等が進められてきました。今期は2年間のうちいずれかの研究発表会の前後または期間中に国際シンポジウムを本委員会主催、他の関連研究プロジェクト共催のようなかたちでオンラインとオンサイトのハイブリッド方式で実施し、動画アーカイブを含めて国際的に発信していきたいと考えています。また、各大学の留学生を中心とした研究発表のセッションをこの国際シンポジウムに組み込みたいと思います。さらに、この国際シンポジウムでの発表内容を、ひとつめの目標である書籍の英語版に組み込むことも目指したいです。
これらふたつの目標はやや野心的すぎるかもしれませんが、いずれも本委員会のさらなる発展、活性化、深化には必要だと考えています。2年間という短い期間では達成できないかもしれませんが、達成に向けてできるだけ意欲的に取り組んでいく所存です。委員の皆様にはご負担をおかけしてしまうかもしれませんが、どうか一緒に汗をかいていただければと思っています。これまでの委員長と同様に、是非皆様のアイデアとご協力を頂きながら進めていきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。