魅力ある土木の世界発信小委員会では、2023年6月からの1年間の活動成果を踏まえて、小委員会メッセージを作成しました。
魅力ある土木の世界発信小委員会メッセージ
- 現状認識
現代における土木は、生活、交通、防災、産業、エネルギー、通信、都市機能をつくり、守る使命を持ち、国民の負託を得て実現し、価値を生み出す科学技術である。専門化、効率化、大規模化が進んだいま、その企画から工事、維持管理に至るまで長期間に亘ることが多く、極めて多数の技術者、技能者がその専門性を活かして関わることとなる。一人一人が語る技術は極めて狭い領域とならざるを得ない。
- 魅力発信に向けた解決策
そこで、土木の魅力を発信するためには、その全体像を歴史的背景、経緯を踏まえて、実現する手法と効果までストーリーを持って語る者が求められる。さらに、技術者、技能者たちの仕事の魅力を伝えるためには、それぞれが自分の仕事の魅力を言語化し、それを発信することがあわせて重要であるといえる。
- 小委員会の取り組み
会長特別プロジェクトのもとに設置された本小委員会では、「自分の言葉で伝える土木」というキャッチコピーを掲げ、土木学会会員以外の土木関係者やメディア関係者、土木マニア、土木ファンにより活動してきた。具体的には、学校教育における新たな出前授業や土木イベントの試行、カードゲームなどのツールの開発、黒部ダムなどビッグプロジェクトなどのアーカイブの発掘と教育・技術伝承への活用の検討、SNSなどを通じた新たな層への発信などである。それらの活動を踏まえ以下のメッセージをとりまとめた。
小委員会メッセージ
- 自分の言葉で土木の魅力を伝えよう
- 技術のバトンをつなげよう
- 土木史に学び、未来を切り拓こう
解説
- 土木にかかわる者が、その立場、職能を活かし、仕事の使命、魅力、誇りを発信しよう。家族、友人、同僚に語り、土木の魅力を伝えよう。SNSを使って社会に発信しよう。職業として土木にかかわるすべての者たちが社会にそれぞれの立場で感じる土木の魅力が異なるのは当然であることを認め合おう。そして、時には批評を行い、よりよき土木の未来を探究しよう。「自分の言葉で伝える土木」を実践しよう。
- 土木は全員野球といわれる。上下水道により伝染病を駆逐してきた歴史のバトン、道路建設、道路改良により交通死亡事故を減らしてきた歴史のバトン。社会問題を見つけ出し、企画し、予算を獲得し、用地を取得し、掘削し、鉄筋を組み、型枠を組み、コンクリートを打設し、工事を完成させ、維持管理を続ける技術のバトン。そのバトンのすべてに責任があり魅力がある。土木を大きな山に例えると、山頂から山裾までの木々、草花、動物、昆虫すべてに光を当て、その解像度をあげ、魅力を伝えることができれば、社会の多くのひとがもっと土木の魅力を感じることになるだろう。
- 土木の歴史は、社会の変化に対応するために先人たちが知恵を絞り、ものづくりで解決してきた歴史である。空海による満濃池の改築、徳川家康による江戸の町づくり、本州と四国を陸続きにした本四架橋などすべての土木の歴史は、社会をつくり、ライフスタイルを変え、我が国を豊かにしてきた。これからの未来、地球環境問題に取り組み、少子高齢化、人口減少に対応し、災害の激甚化、構造物の老朽化に向き合って行かなければならない。先人たちがつくりあげた土木史に学び、イノベーションを起こし、未来を切り拓こう。
2024年6月
公益社団法人 土木学会
土木の魅力向上特別委員会
魅力ある土木の世界発信小委員会
委員長 松永 昭吾