(2020. 1. 28・制定)
土木学会論文集編集委員会
土木学会(JSCE)は、1999年に「土木技術者の倫理規定」を制定し(2014年改定)、成果の公表に関して、「事実に基づく客観性および他者の知的成果を尊重し、信念と良心にしたがって、論文および報告等による新たな知見の公表および政策提言を行い、専門家および公衆との共有に努める」とした。今般、当学会の論文公表に関する信頼性をさらに高めるため、土木学会論文集投稿要領、査読要領における関係者の倫理に関わる内容を整理し、土木学会論文集に関する倫理基準として制定、公表する。
1. 著者の義務
* 著者は、論文の執筆にあたり、以下の著者の義務を果たし、土木学会倫理規定(土木技術者の倫理規定)を遵守し、投稿要項に指示されるすべての条件を満たさなければならない。
* 共著者として列挙できるのは、論文の完成に有意な貢献をした者に限られる。
* 著者のうち,査読対応,論文校正を含め,掲載に至るまでの責任をもつ1名をCorresponding Authorと定めること。Corresponding Authorは筆頭著者でなくてもよい。
* 投稿論文には、土木工学および環境工学の分野に関する科学技術の進歩と発展に対して、著者の十分な貢献が含まれていなければならない。
* 著者は、一つの論文として発表することが可能なデータを断片化して複数の研究とすることはできない。関連する研究は、ひとつの原稿としてまとめるべきである。
* 論文は、明白な商業的意図を有してはならない。
* 二重投稿は許されない。
* 投稿論文において、第三者がその研究を再現し、検証し、評価するに十分な情報を提供しなければならない。また、過去の関連論文を参照できるように出典を明示するとともに、当該論文の新規性に関する十分な説明を含まなければならない。このとき、関連論文の著作権を侵害しないよう注意を払わなければならない。
* 既存の論文の批判は、学問上の主張を目的とする場合にのみ許される。その著者を個人的に攻撃する目的で批判を行ってはならない。
* 著者は、調査に関わった人の人権その他の権利を侵害してはならず、人々の生命、プライバシーおよび尊厳を保護しなければならない。
* 投稿論文にデータの捏造や改竄が含まれていてはならない。また他の論文からアイデア、方法、データまたは結果を盗用してはならない。
* 著者は、再現性等の検証のため,研究に関わるデータ,プログラムなどの保持に努めなくてはならない。
2. 査読者の義務
* 査読者の役割は、学術出版の品質を維持するために論文掲載の可否を公正に判断することにあり、以下の義務を果たさなければならない。
* 査読依頼に対して、利益相反が生じる可能性がある場合、あるいは期限内に査読を完了することが不可能と見られる場合には、直ちに辞退しなければならない。
* 査読は、著者の知的独立性を正当に尊重しつつ、原稿の品質とその真価に基づいて客観的かつ論理的に実施しなければならない。
* 査読意見は、著者がその理由を理解できるよう、明確かつ論理的に記述する。査読者の主観的な意見や好みを主張したり、著者と見解を異にする点について修正を要求してはならない。
* 査読者は、著者を個人的に批判してはならない。
* 査読者は査読依頼の事実を他者に漏らしてはならない。論文は機密文書として取り扱い、他人に当該原稿を見せたり、意見を聞いたりすることは許されない。
* 査読者が原稿に含まれる未公開情報を利用することは禁止されている。
* 査読者は、データの捏造や改竄または既存の論文からの盗用などの不正行為や不適切な行為を見つけた場合、直ちに編集委員会に報告しなければならない。
3. 編集委員会の義務
* 編集委員会は、倫理基準で言及された客観性を達成するため、査読過程の公正な管理につとめなければならない。
* 編集委員会は、投稿論文の採録/不採録の決定において、著者の人種、宗教、民族、性別、年齢、国籍、職業、所属および政治的信条を考慮してはならない。
* 投稿された原稿の著者、共著者、および利益相反の疑いがある個人は、当該論文の査読過程に関与してはならない。
* 編集委員会は、専門分野に基づいて最も適した査読者を偏ることなく選ぶものとする。投稿論文の著者もしくは主題に対して好意的または否定的な個人的偏見を持つ可能性がある人を査読者に選んではならない。
* 編集委員会は、査読過程に関する情報ならびに投稿論文および査読者の情報を他者に開示してはならない。
添付 | サイズ |
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土木学会論文集に関する倫理基準(2020年1月28日制定) | 126.42 KB |