現在のコンピュータの原形であるENIACと比較して,最近のパソコンの高性能さを論述し,土木技術者の業務でにはパソコン級で十分に役立つこと述べ,小型化した携帯情報端末やマルチメディアパソコン,用途を限定した低価格な専用パソコンなどの使い道に触れている.
データ通信の基本的な用語を解説し,通信媒体や伝送方式,LANなどの通信技術を概説している.
企業の情報システム形態としてクライアント/サーバが発祥した推移を分析し,その有利性,利便性を概説している.また,イントラネットなどの新技術がクライアント/サーバを凌駕する企業の新たな情報システムの形態として台頭しつつあることについて触れている.
データベースモデルを定義,操作する言語仕様の国際規格であるNDL,SQLを概説し,データベースを,以下の2つの視点から分類している.
市販ソフトが普及する源となった'70年代のOAブームに触れ,最近の市販ソフトの利用状況に言及している.
電子ファイリング機器の草分けとなった光ディスク装置の誕生から入り,カラー技術の進展による画像データベースの利用について概説している.さらに,マルチメディアの時代を向かえ,パソコンや情報関連機器の動向に触れている.
電子写植システムや卓上出版から発展した,CD-ROMを媒体とする電子出版の製作過程を概説し,その企業ニーズを分析している.
パソコン通信の基本機能である電子メールを概説し,商用データベースを検索,電子メール,電子掲示板などサービスを概説している.さらに,パソコン通信の企業ニーズと普及の課題について論述している.
インターネットの発祥から入り,代表的なサービスとなったWWWを紹介し,接続方法について概説している.また,企業ニーズとして関心が高まっているイントラネットについて触れている.
新聞の情報源としての価値に触れ,電子写植システムの副産物である記事データベースの利用や,SDIサービスを紹介している.
雑誌,図書の情報源としての特徴を,新聞と比較し,分析している.雑誌,図書に固有の検索機能であるブラウジングに触れ,文献データベース,図書データベースの活用について論述している.
人と人とのコミュニケーションによる情報収集の意義と留意点について概説している.
講演会,講習会,展示会に参加する意義と課題について概説している.
現在のコンピュータの原形は,アメリカ陸軍が武器の弾道を計算するために,18000本の真空管で回路を組み立てた電子式計算機ENIACであり,1940年代の後半に公開された.主記憶200ビット,演算速度は加算で0.2ms(1秒間に5000回)という性能であった.その後,半世紀でコンピュータは大きな成長を遂げた.同時代で最高速のコンピュータを指すスーパーコンピュータの処理性能はテラフロップス(1秒間に1兆回の浮動小数点演算を実行)に達している.市販のパソコンでも16メガバイトの主記憶と100ミップスの処理性能が当たり前の性能になっている.1ミップスとは1秒間に100 万回の機械命令を処理する速さであり,浮動小数点演算に換算すると40万回強になる.現在のパソコンの性能は1970年代中頃のスーパーコンピュータに匹敵する.
画像解析やシミュレーション,人工知能などの分野では,超並列コンピュータや光コンピュータなどの新しい方式の超高速コンピュータが求められているが,土木技術者が業務で使用するコンピュータはパソコン級で十分である.企業,学校の通信ネットワーク環境の整備が進行し,パソコンを接続してデータをやり取りできるようになった.ワープロ,表計算,プレゼ資料作成などビジネス用の市販ソフトが充実している.ソフトやデータの所在をアイコンとうい小さな絵で画面に表示しておき,マウスの矢印(ポインタ)をそこの位置に移動してボタンを押す(クリック)と処理が行なえるウインドウに切り替わる.ソフトには画面に表示されているメニューをマウスで選択しながら入出力するウインドウ操作というインタフェースが用意されている.機種やメーカーによりまだ使えるソフトに限りがあるが,データは形式を変換すれば異機種間でも受け渡せるようになってきた.なによりも,個人でも手がだせる水準まで価格が低下したことが,パソコンが普及する最大の要因となっている.
手書き文字が入力できるペンコンピュータや,これに通信端末となる機能を加え手帳サイズに小型化した携帯情報端末と呼ばれるパソコンが登場し,ビジネス分野で利用が広がっている.画像,映像や音声などパソコンの周辺機器のマルチメディア化が進行しているが,これらを一体で扱えるマルチメディアパソコンが注目されている.テレビが受像でき,ビデオ画像を表示,編集でき,ステレオで音楽CDの演奏もできるので家電製品の機能を兼ね備えたパソコンである.一般家庭の利用をターゲットにして,インターネット利用やゲーム専用など,用途を限定した低価格な専用パソコンも話題を集めている.
互いに意思を交換するという広い意味での通信は,烽火や旗竿などを用いて古代より行なわれていたが,複数の情報処理機器が伝送媒体を介してデータを送受信するデータ通信は,コンピュータの利用とともに普及した.データ通信を行なう設備を通信ネットワークという.類似する用語には,伝達,通信,データ処理などの機能を集合した通信システム,複数のコンピュータを結合してデータ通信を行なうことで情報資源を共有するコンピュータネットワークなどがある.
データ通信は通信ネットワークに接続したコンピュータなどの端末間で,符号化したデータをやり取りする.多くの相手と通信するには共通の符号を使う必要があり,標準となる符号を取り決めた通信規約をプロコトルという.伝送媒体は有線と無線に分かれる.有線は並衡対ケーブル,同軸ケーブル,光ファイバケーブルの順に伝送速度が大きくなる.最近では,同軸ケーブルは一部を除き並衡対ケーブルに置き換えられる傾向にある.無線には地上無線や衛星通信があるが,地上無線のうち特定小電力無線通信はデータ通信ができる範囲は100m程度と狭いが,無料で通信でき,技術適合規準照明を受けた無線設備を使えば免許や資格が不要なので,建設現場では用途がある.
伝送方式にはアナログデータ伝送方式とデジタルデータ伝送方式がある.アナログデータ伝送は電話回線を利用して行なう方式であり,端末が送受信するデジタル信号をアナログ信号に変調,復調するためにモデムという変復調装置が必要となる.モデムの伝送速度は256値変調方式で28.8Kbit/sに達しているが,さらに高速化する傾向にある.モデムは最近のパソコンには内蔵されていることがある.デジタルデータ伝送は専用のデジタル伝送回線を用いる方式であり,ひずみが生じにくく伝送品質が高い.光ファイバーケーブルを媒体にすれば,最大で1.5Mbit/sの伝送速度が得られる.
企業や学校が自分の敷地やビル内に地域を限定し,自前で布設する通信ネットワークをLAN(local area network)という.LANの構成にはスター型,バス型,リング型の形態があり,順に時分割変換,CSMA/CD(carrier sense multiple access/collision detection),トークンパッシングという伝送方式が使われている.LANには伝送距離が短い,伝送帯域が広く各種の情報処理装置が接続できる,装置を用意に移動,増設できるという特徴がある.LANから一般の交換回線に接続できるので,企業,学校の全国的な通信ネットワークが構築できる.
1990年代に入るまで,大型汎用コンピュータが多数の端末を従えてホストマシンとして君臨する汎用機集中型システムの時代であった.企業では一般利用者の業務システムの作成は情報システム部が受け持っていたが,ニーズが反映されにくかったり,ビジネス環境の変化に迅速に対応できず,仕上がるころには陳腐化が始まっているなどの不満が鬱積していた.このことが,企業にクライアント/サーバというシステム形態を構築させる引き金となった.
企業の通信ネットワークとしてLANが普及し,パソコンの性能が向上すると,一般利用者が使い慣れた複数のパソコンをLANに接続し,プリンタやファイルなどが共有できるパソコンLANが普及しはじめた.これがダウンサイジングやエンドユーザコンピューティングなどの用語を産み出し,クライアント/サーバのはしりとなった.パソコンLANの中では,データ処理用と共有ファイルを格納する機器とにパソコンの役割分担が発生する.前者がクライアント,後者がサーバに位置付けられる.プリンタなど共用する装置もサーバになる.
パソコンLANの利用が拡大すると,共有するデータの量がパソコンでは賄いきれなくなってきた.一方の大型汎用コンピュータは活躍の場面が狭められ,危機感を持ったメーカはサーバに存命の道を求めた.パソコンと大型汎用コンピュータの立場が逆転し,本格的なクライアント/サーバ時代が到来した.クライアント/サーバは集中型よりコストパフォーマンスや利便性が高かい.一般利用者は情報システムに蓄積されているデータを抽出し,好みのツールで表やグラフに加工できるようになる.またたくまにクライアント/サーバは企業の情報システムの主流になった.しかし,衰えをみせず成長しているパソコンや周辺装置や分散型データベースの技術の進展,インターネットの技術を企業の情報システムに応用しようとるすイントラネットの台頭など,異変を引き起こす要因も見受けられ,クライアント/サーバといえども情報システム形態の切り札とは言い切れない.
データベースは,情報を蓄積し多目的に活用するために,DBMS(database management system)と呼ばれるソフトツールを用いて構築される情報システムである.DBMSは1960年代に登場している古参の情報技術だが,1987年に ISO(国際標準化機構)が NDL,SQLという,それぞれネットワーク型とリレーショナル型のデータベースモデルを定義,操作する2つの言語仕様を国際規格に制定した.SQLは表形式のデータを集合演算で操作できるシンプルなデータ構造の言語仕様であり,分散型の情報システムの核となるので,SQLに準拠するデータベースツールの利用が広まった.日本ではNDLはJIS X 3004-1987,SQLはJIS X 3005-1990として国家規格に認定されている.データバンクという類似語があり,データベースと混同して用いられているが,こちらは集積されたデータ群を指し,DBMSを活用していなくてもよい.情報提供機関をデータバンクということもある.
提供する情報の種類から,データベースは文献データベースとファクトデータベースに大別できる.文献データベースは文献抄録やバックナンバーなど文献の案内情報を提供する.会社や機関などのガイダンスを提供するデータベースも広義の文献データベースである.ファクトデータベースは地図や観測データなど情報の本体を提供する.論文や新聞記事,辞典などの全文データベースもファクトデータベースに含まれる.
データベースは所有者あるいは利用者の範囲からも分類できる.商用データベースは,情報提供機関が不特定多数の利用者に有料で情報サービスを行なう目的で作成したものである.登録制で交換回線を介し,利用者の端末から情報検索できるオンラインのデータベースが多い.日本科学技術情報センター(JICST)のJOISや日本建設情報総合センター(JACIC)のJACIC-NETなど,日本では2000件を越える商用データベースが利用できる.また,パソコン通信から複数の商用データベースに接続できるゲートウェイサービスも定着してきた.
企業や団体などで内部利用するために作成するデータベースをインハウスデータベースという.社内データベース,業界データベースなどがこれにあたる.学術情報センターのNACSISのような学術データベースもこの範疇である.NACSISにあるGAKKAIというデータベースには,土木学会全国大会の講演集の抄録が収録されている.パソコン級でも使える簡易なデータベースツールが市販されており,部署や個人レベルの情報を整理するために使用されるケースもある.こうした個別利用のためのデータベースは,インハウスデータベースとは別枠で考えたほうがよい.
一般の工業製品にないコンピュータの特徴ひとつに,ソフトウェアを切り換えると様々な用途に使用できることが挙げられる.ソフトウェアがないとコンピュータはほとんど役に立たない.まだソフトウェアの機能や種類が不足していた1970年代頃までは,電算化を進める企業は競ってソフトウェアを自社開発した.建設企業では大型計算機に載せる構造計算や工程計画など,技術や施工管理の分野のソフトウェアが開発された.
1980年代になり,パソコン,ワープロ,ファクシミリがオフィスに普及しはじめると,OA化の考え方が企業・組織に定着するようになり,文書作成や表計算など,業種や職種を問わず使えるビジネス用の市販ソフトが売上を伸ばした.小規模なコンピュータの性能が高まると,EWSやパソコンで動く建設分野向けの技術計算ソフトが販売されるようになった.市販ソフトは機能がバージョンアップするし,使い勝手も工夫されているので,自社開発ソフトから市販ソフトに入れ替えた建設企業が多い.初期にはハードウェアの附属品とみられていたソフトウェアが,この頃になって,ようやく商品として認められた.
1990年代に入ると,データベースから取り込んだ情報をマウスとウインドウ操作で加工できる市販ソフトが登場し,クライアント/サーバが企業のシステム形態の主流となる下地となった.市販ソフトはビジネス文書の作成,作表などの情報加工,電子メールによる情報連絡などに使用されており,ビジネスマンの必需品となった.コンピュータを利用する情報活用の手始めは,市販ソフトの使い方を身に付けることである.
日本語では計算機と訳されるコンピュータの得意分野は計算である.文章作成ソフトも文字を数値に換算して文書を編集している.数値,文字データを処理していたコンピュータが,書類や写真などをそのままのイメージで扱うようになったのは,1980年代の前半に光ディスクというコンパクトで大容量の記憶媒体が登場したからである.光ディスクは,まず民生用に音楽やビデオ映像を再生する記憶媒体として普及した.同じ頃,日本で光ディスク装置という電子ファイリング機器が誕生した.アルファベットに代表される欧米の文字と比べると,漢字は種類が多くコンピュータに入力する手間がかかるので,書類をそのまま入力してしまうという発想である.光ディスク装置に収録される情報はイメージ情報と呼ばれる.
初期の光ディスク装置は中型コンピュータ並みのサイズと価格であり,モノクロのイメージ情報であった.モノクロならカラー化するよりも大量の書類が収録できるのは事実であるが,カラー情報を入出力する部分を製品化する技術が未成熟であったという事情もある.例えば,カラー情報を復元するためのカラープリンタはまだ高価であった.当時の光ディスク装置は,会社あるいは部門で共同利用する情報機器であった.
その後,光ディスク装置は小型化し価格も低下した.カラーを精細に印刷できる安価なカラープリンタや,カラー写真などの画像情報を読み取れるカラースキャナも出現した.画像情報を小さく圧縮し,もとのサイズに復元する画像処理技術が進み,パソコン版の画像データベースソフトが市販されるようになった.そこで,パソコンにこうした周辺機器を接続し,市販ソフトを操作すると,個人レベルでも画像データベースが作成できるようになった.勿論,画像データを扱うとなるとそれなりの技術が必要となり,プロや専門書に頼らなければ素人の手におえない部分もある.しかし,建設分野は図面,図書類が有効な伝達媒体となり,施工確認などの場面で写真類も多用されている.こうした情報を画像データベースに収録し電子化することの意義は大きい.
光ディスク装置は着脱可能な補助記憶装置としても使用されるようになった.撮影したカラー写真を,パソコンに画像データとしてそのまま読み込ませるデジタルカメラも安価になった.さらに,音声や動画などもパソコンで扱えるようになった.俗にいうマルチメディアの時代であり,パソコンがマルチメディアを牽引している.
電子写植システム(computer type-setting system)や卓上出版(disktop publishing)の導入により,新聞や雑誌などの出版物をコンピュータで編集することは常識となっている.さらに,編集作業ばかりでなく出版物そのものが電子化されている.このように,コンピュータを利用して出版に電子的な工程を組み入れることを電子出版(electronic publishing)という.出版する媒体は紙やインターネットでもよいが,最近ではCD-ROM(compact disk-read only memory)を媒体とする電子出版が盛んであり,雑誌に付録として添えられるケースが増えている.
CD-ROMは直径12cmの薄い円盤である.読み取り専用なので記録が壊れず,非接触で再生するので磨耗しない.音声,動画を加えたマルチメディアな出版物が制作でき,索引検索,全文検索など多用な検索機能を付加できる.複製が容易で,単位情報あたりの価格が安い.
CD-ROMの出版は,原稿となる情報を制作する前半の工程と,それを原板に記録し複製,製品化する後半の工程に分かれる.シナリオを企画し,素材を制作,編集して電子媒体に収容するまでの前半は作品の正否にかかわる工程である.画像や動画を制作するソフトツールや,オーサリングツールという編集ツールが市販されているので,一般利用者がこの工程に参画できる.
電子出版には,出版業が書籍や雑誌を発行する以外にも企業ニーズがある.作業マニュアル類を映像を付けて電子化できるし,機関誌のバックナンバーを収録して配付すれば企業広告になる.建設企業では,施工事例やパンフレット類を電子化すればビジュアルな営業資料となる.地図やCADで使用する機材,部品を電子化すれば可搬型のデータ源となる.さらに,発想や工夫次第で,いかようにも用途が広げられる.CD-ROMの情報は,読み取り装置があれば手持ちのパソコンで参照できる.
通信ネットワークに接続したパソコン間で情報をやり取りするのがパソコン通信である.日本では1980年代の中頃,交換回線を介し互いにメッセージを交換する形態で,パソコン愛好家の間で始まった.その後,パソコン通信を媒介する複数のサービス会社が出現し,現在では70万人の会員が参加している会社がある.
電子メールはパソコン通信の基本機能である.ファイル転送でメッセージやデータなどの電子情報を相手先のメールボックスに発信でき,受手側は都合のよいときに閲覧できる.相手が不在でも連絡の手筈がつけられる.発信時刻を特定したり,複数の相手に同時にメッセージを発信することもできる.電子メールは郵便に代わる電子の私書箱である.
パソコン通信は電子メールだけでなく様々なサービスを提供する.パソコン通信をゲートウェイにしてオンラインの商用データベースを検索できる.電子掲示板は不特定多数の利用者に電子メールを貼り紙として公開する.パブリックドメインと呼ばれる著作権を放棄したソフトウェアも掲載されており,自分のパソコンに取り込むことができる.電子掲示板を応用したフォーラムという電子会議に参加でき,同好の仲間と特定のテーマについて,時間や空間に束縛されることなく意見交換できる.パソコン通信は,利用者が自主的に参加するヨコ型社会のコミュニケーションを形成する.
通信ネットワークが整った企業は,このパソコン通信を業務で使い始めた.電子メールや掲示板は書類削減や効率化を図るには格好のツールである.スケジュール管理ソフトや施設利用管理ソフトなどと組み合わせれば,企業に新しいコミュニケーション環境が出現する.反面,階層型組織の情報伝達機能がマヒしたり,対話,触れ合いの機会が欠乏する弊害が生じている.過渡期ということもあり,従来型のコミュニケーションとパソコン通信のような電子情報によるコミュニケーションは,試行錯誤を経てやがて企業の内で共存することになろう.
インターネットの母体は,1969年に米国防省の資金援助により,学術研究者が情報交換するための研究用ネットワークとして開発がはじまったARPAネットにある.1990年代に商用の用途にも使えるようになり,世界中に散在する大小のネットワークが相互に接続する巨大なネットワークに発達した.その生い立ちからも分かるように,パソコン通信にあるサービスはひととおり提供している.
パソコン通信とは一味ちがうインターネットならではの特徴は,TCP/IP(transmission control protocol/internet protocol)というプロコトルを使って自由に接続できることと,WWW(world wide web)に掲載されるホームページによる情報提供サービスである.ホームページはHTML(hyper text markup language)言語でハイパーテキストの構造にリンクさせた文書,画像,音声,映像,プログラムなどのデータであり,WWWサーバに配置される.利用者はHTTP(hypertext transfer protocol)を利用しこれにアクセスし,WWWブラウザというクライアントソフトウェアで表示する.多様な形式の情報を手軽に受発信できるので,インターネットの代名詞になったサービスである.
インターネットには,専用回線で繋ぐ方法と,プロバイダという媒介サービス会社に会員登録しダイヤルアップで接続する方法がある.前者は常に接続状態を保てるので,いつでも自由にインターネットが使えるが,費用がかさむので企業利用に向いている.後者は使いたい時だけ公衆回線でプロバイダにダイヤルアップし,インターネットに入る.この方法は料金も手軽であり,個人でも利用できる.プロバイダの多くは,個人用にホームページを開設できるディスクスペースを用意しているので,個人が世界に向けて情報発信できる.
成長を続けるインターネットの技術を応用し,情報システムを再構築し,企業内や企業間で情報共有を果たそうとするイントラネットに関心が高まっている.イントラネットには情報の制作から,共有,発信までをWWWブラウザをベースにした同じ環境で行える優位性があり,クライアント/サーバに代わる企業の次世代の情報システムに成長する可能性がある.そこを狙って,大手のデータベース・ベンダやソフトウェア・メーカが関連ツールの開発,提供を始めている.
新聞は最新の情報を記事にして,速く,安く,継続して提供する有用な情報媒体である.国内の日刊新聞の発行部数は7千万部を超えており,企業,個人に広く利用されている.企業では産業,業界の動向や,ライバル企業の活動を察知したり,市場のニーズを把握するための情報源として活用されている.購読している新聞から関連記事を切り抜き,回覧や掲示している企業も多い.
新聞の制作工程が電子写植システムにより電子化されたので,新聞記事を副産物として集積する記事データベースが増加した.主要な新聞の記事なら,パソコン通信などを媒介にして,オンラインで検索できる.また,特定のテーマを扱った記事にアンテナを張っておきたいなら,SDI(selective dissemination of information)サービスが利用できる.キーワードを登録しておけば,記事データベースに該当する記事の登録,更新があると,自動的にリストを編集し提供してくれる.SDIサービスやオンライン検索を利用すれば,有料ではあるが,切り抜きやファイリングの煩わしさから開放される.見落としもなければ,ファイルに入れたはずの記事が行方不明になることもない.
問題意識をもって新聞を読めば,小さな記事にも目が止まる.テーマを時系列で整理すると社会や業界の動きが見える.分析する手腕があれば,新聞から独自の調査レポートが作成できる.論文や研究報告などと組み合わせれば,利用価値がさらに高まる.
企業,学校は業界誌や学会誌,専門誌などの定期刊行物を購読している.論文集や研究報告,レポートなど学術的,技術的な図書も所蔵している.こうした雑誌,図書は,新聞と比べると鮮度は劣るが,内容が掘り下げられており,情報量も豊富である.話題性のあるテーマが特集になることも多く,知識をまとめて吸収できる.論文の執筆で文末に引用文献や参考文献を記すのが慣習となっているように,研究成果を公表するために欠かせない情報源である.ただし,記述の内容には著作者の考えや編集者の意向が反映することがあるので心すべきである.
雑誌,図書にはブラウジングという固有の機能がある.ブラウジングの語源は,牛が草原の牧草を舐めるように食べていく様にあり,雑誌や図書をめくりながら情報を探索すると,意図していない有益な情報に巡り合えるという利点である.インターネットの表示ツールであるブラウザの語源も同じである.
雑誌や図書は貯まるとかさばる.発行の種類が多く,手元にない雑誌,図書に求める情報が掲載されていることもある.そこで,商用データベースのサービスが開始された初期の頃から,雑誌,図書の抄録や著者,発行者などの案内情報を提供する文献データベースが存在している.多くの文献データベースはオンラインで検索できる.しかし,案内情報は二次的な情報であり,本文を読むには原資料を入手する必要がある.
雑誌や図書の現物が大量に所蔵されているのは,企業や学校,公共機関などの図書館である.多くの図書館には図書データベースがあり,閲覧したい蔵書を使用者が自分で検索し求めることができる.しかし,図書データベースの登録作業はタイムラグが生じるので,新刊書は書店で探すほうが手っ取り早いことがある.出版にも新聞と同様に電子写植システムが導入されたので,辞書や辞典,名簿類などの全文データベースが増えている.全文データベースなら文献データベースや図書データベースの助けはいらない.
どんなデータベースでも情報が入力されなければ役に立たない.コンピュータがなくても,適切な人物とコンタクトがとれると,ホットな情報が入ることがある.人間には情報を選別し組み換える能力があるので,人伝ての情報は正確さが欠けたり,誇張されたりするが,うまくあてはまるとジャストな情報に化けることがあり,対話は誰にでも利用できる情報ツールである.
しかし,信頼がないと相手が口を開いてくれない.面識がなければコンタクトもとれない.日頃から企業,組織の内外に人脈のネットワークを広げておく必要がある.情報を必要とする時に,コンタクトをとる相手を誰にするかは自分で判断する.そして,人からもらった情報は,自分の責任で活用せねばならない.
最近では,市販ソフトを利用して,相手の連絡先や趣味などをパソコンに入力し,個人データベースにすることができる.また,対話で見つけたヒントを忘れないうちに携帯端末にさり気なくメモしている人もいる.確かに,コンピュータは便利な情報ツールである.しかし,人間はコンピュータの支配者であり,頭脳は臨機応変に機転をきかす最上のコンピュータである.くれぐれもコンピュータの下僕とならぬよう肝に命じておく必要がある.
人を募る催しが連日,各所で開催されている.講演会では有識者や研究者が講師となり,時宜にあったテーマや研究成果などの最新情報が聴衆に発信される.講習会では業務や日常生活で役立つ事象の取り扱い方やノウハウなどが伝授され,展示会は書物や広告では表現しきれない実物に触れることができる.情報を肌で体験,体得するために人は集う.そこで,人との交流が芽生え新たな人脈が形成されるケースもある.
土木学会は全国大会を学術講演の年中行事にしている.各委員会が主催するシンポジウムや研修会,セミナーなどは,学術研究者や企業人が専門分野の先端情報や実用例を知る絶好の機会となる.会合や委員会活動は特定のメンバが情報を作りだすところであるが,その過程で参加者から通常のルートでは聞くことのない情報を入手できることがある.
催しには主催する側の狙いがある.それが参加者のニーズに合致しないと無駄足となることもある.目的や問題意識をもたない参加者には,折角の催しが休息の場となる.情報活用の基本はニーズの実現にある.ニーズが伴わない情報はノイズとして利用者を通過する.面白そうだから,皆が行くから,習慣になっているからなどと曖昧な理由で参加するのではなく,ニーズを持って催しに参加することが肝心である.