全国土木弁論大会2023「有馬優杯」 奨励賞
「今、日本が危ない!」 杉本政明
今から私がお話しする5つの情報は、ある国の特徴を表しています。どこの国を表しているか分かるでしょうか。国の食糧自給率が低く、大部分を輸入に依存している。 年々税金が上がり、税金を上げなければ国が破綻する。国民の給料は上がらないのに対し、物価はどんどん上がっている。国内のGDPが30年前から伸びていない。世界有数の借金大国であり、その額は1000兆円を超えている。もうお気づきの方もいらっしゃるかもしれません。そう答えは「日本」です。 なぜ今、日本人の私がこのような形で日本を紹介したのか。それは現在日本が置かれている状況が厳しいものであるからです。 「失われた30年」。みなさんも一度は必ずこの言葉を耳にされたことがあるはずです。 日本は戦後、高度経済成長に突入しました。そして当時のGDPは世界第2位にまで発展しました。しかし、そこから30年もの間GDPは全く伸びていないのです。GDPの成長率の低さは深刻で、世界的にみても遅れをとっています。 失われた30年は私たちにも影響を与えています。現在の日本人の賃金は30年前から上がっていません。しかし、給料は上がらないのに対して物価はどんどん上がっています。食料の値段も日に日に高騰し、食料を手に入れるということへのハードルは日を追うごとに高くなっているのです。 食料の確保は非常に重要です。 今から5年前、私は食料確保の重要性を痛感する、ある一つの体験をしました。 2018年9月、私は家族で北海道に旅行で訪れました。ところが旅行の最中に、北海道胆振東部地震が発生しました。地震の影響で私たちも大規模な停電に見舞われました。さらに追い討ちをかけるように新たな問題が発生しました。その問題とは食糧の確保です。近くのコンビニエンスストアからはほとんどの食糧が消え、食糧の入手が困難な状況となりました。幸いにも私達の訪れていた地域は人口が少なかっため、少し離れたスーパーまで車を走らせて、わずかに売れ残っていたカップ麺を何とか入手すること出来ました。しかし、もし人口がさらに多い街では食糧の入手がとても難しい状況であったはずです。 このことから、私が得た教訓は非常時に備えるということの大切さです。そんなことは当たり前だ、誰でも分かることだと思われる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、頭では理解していても実際に体験しなければ実感を得るということには繋がりづらいのも事実ではないでしょうか。例えばメディアによって報じられる自然災害の映像では災害の様子が頭で理解できても「自分の住んでいる地域は大丈夫だ」、と少なからず心の片隅では対岸の火事のように思われてしまったことがある方もいらっしゃるのではないでしょうか。私は北海道胆振東部地震を実際に体験したことで改めてこの教訓を得ました。今回のテーマである私たちが命をまもるためにできることは、非常時を見据えた日々の食料の貯蓄であると私は考えます。災害を回避した後に襲ってくるのは食糧の問題です。私たちは人間である以上、食糧が無くては命をつなぐことは出来ません。現在の日本は厳しい状況下に置かれています。最初にお話しした経済の衰退や物価の上昇により、食糧の入手が困難になることも有り得ない話ではありません。もしも今後物価が上昇し続ければ、私たちが食糧を得ることはさらに困難になります。食糧の値段が上がり、買うことができなくなれば空腹に襲われ生きていくことも難しくなります。 また災害時には、食糧を求めて人々が殺到して 店頭から食料が入手できなくなることも現実に起こることなのです。昨今、食料危機の問題が世界中で度々話題になっています。日本も他人事ではありません。 食料危機、という言葉を耳にすると地球上のどこか遠い国の問題のように思われる方もいらっしゃるかもしれません。しかし日本の食料危機は既に始まっています。それは物価の上昇という静かな形で日々進行しているのです。 幸いにも、現代の日本では物価が上昇しているとはいえまだ何とか食料を入手できる状況にあります。 食糧の確保が可能である今だからこそ、非常時への準備をスタートさせるべきであります。 日本の危機は既に始まっています。 日本が置かれている状況は日々厳しさを増していると言わざるを得ません。 この厳しい状況から目を背けず、いざという時のために備え続けることが私たちが命をまもるためにできることなのです。 |