全国土木弁論大会2026 奨励賞
「土木に『なんかいいな』を」 山本 麻由美
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「土木技術者です!公務員として道路の計画を立てたり、工事の管理をしたりしています」と紹介すると、「え、土木? 穴を掘りたかったの? 珍しいね。」と返されることがありました。私は、当たり前の日常を支える技術に、心から憧れを抱いてこの世界に入りました。うまく価値を言葉にできなかったもどかしさが、私のすべての原点になりました。 何気なく歩く道路も、当たり前に渡る丈夫な橋も、誰かが誇りを持って100年先を想って造り上げた「技術の結晶」です。「この素晴らしさを、もっと説得力を持って未来に、そして世界に伝えたい」その一心で、公務員を辞め、技術を言葉にする特許の世界へ、そして今は大学院で心地よい道路を研究しています。 実は、私自身も、目立つこだわりを諦めた一人です。大学生の頃、土木の予算は厳しくなり、恩師からは「物を作る時代は終わった。これからは維持管理の時代。独自の楽しさを見つけてね」と言われました。完成すれば誰にも見えなくなる、だけどしっかりと日常を支えている技術を、自分なりに工夫しながら選び取りたかったのです。でもそれは、工夫しない限り、誰にも気づかれないことでした。 でも、それだけで本当にいいのでしょうか。100年先まで街に残り続けるものを造るのに、どういう姿で残そうかというワクワク感が、今の現場から静かに消えかけているように見えたのです。 「どうぶつの森」で、こだわって街を作り歩くときのワクワクを、私は今でも日常の中で見つけます。たとえば道路を走っているときも同じです。私にとって、圏央道は〇、首都高速道路は長方形のイメージです。圏央道はなめらかに、首都高は角を折れるように曲がります。 道路のカーブには「クロソイド曲線」という、らせん状に緩やかに曲がる線形が使われることがあります。直線からいきなりカーブに入らず、体が自然に馴染むよう計算された緩やかなカーブを、一つ挟むのです。偶然ではありません。かつて技術者たちが、何度も計算し直して選び取った、地道なこだわりの結晶です。目立つわけではないけれど、その努力は確かにそこにあります。 だからこそ私は、もっと技術者がこだわっていい、そのこだわりが愛され、受け入れられる社会になってほしいと強く願っています。私にとって土木とは、つくり手の「魂のこだわり」と、使う人の「心地よさ」が響き合う、温かいコミュニケーションです。図面に書かれない「しずかな美学」を、特許で培った「言葉にする力」で掬い上げ、使う人が感じるなんとなくのときめきを、私が科学的に裏付けます。 土木に、理屈抜きの「なんかいいな」を生み出したい。こだわることが許され、愛される社会にしたい。そして、専門性を武器に、誇り高く生きる技術者たちの情熱が、100年後の街を優しく包み込む文化となるように——その架け橋となる挑戦を、私はこれからも続けます。 |