土木学会中国支部賞
公益社団法人土木学会中国支部では、中国地方の土木技術の発展に貢献する優れた業績、業務などに対してその成果をたたえるとともに、土木分野の活性化、技術の向上を図ることを目的に、令和3年度より土木学会中国支部賞を設け、土木技術による中国地方の発展に寄与する著しい業績、中国地方に建設された優れた土木施設あるいは構造物の工事、中国地方の地域課題の解決に向け取り組んだ業務、あるいは技術の普及に貢献した業務などを表彰いたします。
令和3年度受賞一覧
① 中国地方の地域課題解決に向けて取り組んだ業績
(業績名)日本海側で随一のクルーズ拠点に向けた境港国際多目的ターミナル整備事業
(受賞者)国土交通省 中国地方整備局 境港湾・空港整備事務所・境港管理組合・国土交通省 中国地方整備局 港湾空港部
(所在地)鳥取県境港市
(選定理由)境港では、既存施設の物流効率化や港湾施設の老朽化への対応等、港全体の機能再編を進めることが必要不可欠となり、外港竹内南地区において、国際フェリー、クルーズ船等の旅客対応機能を集約化するとともに国内RORO船の利用にも対応した新たな国際多目的ターミナルの整備を行った。
国土交通省直轄事業で整備した岸壁(水深10m)は、国際クルーズ船の増加に速やかに対応するため、早急な整備が求められていた。しかしながら、同岸壁周辺の地質は、軟弱地盤が広く存在し、支持層が想定以上に深く、当初想定していた桟橋構造が選択肢になり得なかったため、新たにデタッチドケーソン構造を採用し、早期完成と耐震性能の確保を実現した。デタッチドケーソン構造は、接岸用の直立壁として鉄筋コンクリート製のケーソンを海中に設置する点は従来の重力式ケーソン構造と同様だが、ケーソン背後の埋立てを行わず、既設護岸との間の海上部はPC桁を架橋することによって岸壁の上部工を構築するものであり、ケーソンに対して裏込め土砂による土圧がほとんど作用しないためにケーソン重量が軽くなること、また、背後からの地震動の影響も軽減されるため、従来の重力式ケーソン構造に比べて、安価で短期間での施工が可能となる点が特徴である。
当該事業へデタッチドケーソン構造を採用により、従来工法に比べて施工期間の大幅短縮が可能となり、早期のクルーズ船利用環境の確保を実現した。
これらのことを高く評価され、土木学会中国支部賞に値するものとして認められた。
➁ 土木技術による中国地方の発展に寄与した業績
(業績名)米子自動車道 船谷川橋(PC上部工)工事
(受賞者)清水建設株式会社 広島支店土木部
(所在地)鳥取県日野郡江府町
(選定理由)船谷川橋PC上部工事は、西日本高速道路株式会社中国支社発注の工事で、米子自動車道の付加車線化事業において、一級河川の船谷川にかかるPC3径間連続ラーメン箱桁橋(波形鋼 板ウェブ)を詳細設計付きで施工した。施工は張出し架設工法にて行い、早期に本橋を完成させて舗装工事に引き渡すために、波形鋼板先行架設型の改造大型移動作業車や、PCa延長床版・PCa壁高欄を採用するなど様々な生産性向上策について取り組んだ。
受注者独自の試行的な取り組みとして、 3眼カメラを用いた配筋検査システムによる配筋検査業務の省力化、 自動緊張システムを用いた緊張作業の省力化、CIMモデルや図面をクラウド上で管理するBIM360Docsを活用した設計・施工業務の省力化などソフト・ハード面の様々な生産性向上の施策に取り組んだ。
コロナ禍ではあったが、発注者主催の現場見学会(地域住民、工業高専、高校、小学校)に協力し先端土木技術のPR活動を行い、担い手確保のための活動にも貢献した。さらには、KOSEN-REIM産学連携コンソーシアムの教材用として、橋梁工事における作業状況を動画記録として提供するなど、将来の維持管理技術者育成のための技術継承にも協力した。
これらの高速道路建設の実積が高く評価され、土木学会中国支部賞に値するものとして認められた。