刊行にあたって 公益社団法人 土木学会 第106代会長 小林 潔司
土木学会は大正3(1914)年11月24日に工学会(明治12(1879)年創立、昭和5(1930)年に日本工学会に改称)から独立し、平成26年11月24日に創立100周年を迎えた。日本工学会時代を含めると140年近くもの長い歴史を持つ学会である。
公益信託土木学会学術交流基金は、土木学会創立75周年(1989年)記念事業の一つとして、昭和天皇が崩御された昭和64(1989)年1月7日の前日、6日に設立された。昭和時代の最終日の前日である。それから30年、平成31(2019)年1月6日に丸30年の節目を迎えた。この基金は、国際社会との積極的な学術交流の展開を図るため、会員ならびに関係諸団体の方々からいただいた3億円余の寄付金(出捐金)をその財源とし、土木学会を委託者、三菱UFJ信託銀行を受託者として設立された特定公益信託である。
この30年間に1億円を超える果実を得て、約1億8千万円が助成金として各種助成事業に配賦された。経済環境の変動に伴い、当初期待された継続的な果実を確保することはできず、助成事業の進展とともに信託財産の減少傾向が続いている。しかし、土木学会の平成時代30年間の国際交流活動は学術交流基金の助成事業と密接不可分な関係にあり、この基金が土木学会の国際交流活動を支えてきたことは事実である。特に、基金設立後6年目の平成7(1995)年には「国際部門」が設置され、平成24(2012)年4月には土木界全体にかかる国際化の課題に取り組むため「国際センター」が設置された。まさに土木学会における国際化に向けた取り組みはこの基金の設立を機に新たなステージに一歩踏み出したと言えよう。
『公益信託土木学会学術交流基金の30 年』と題する本書は、基金設立30周年を記念して事務局が中心となって編纂したものである。関係委員会の膨大な資料を読み解き、基金設立の経緯から基金による助成事業の変遷、基金の活用方針の変遷、財務状況の変遷、土木学会の国際化に向けた取り組みの中での基金の役割と成果など、いくつかの章立てにより過去30年間の基金に関する記録が余すところなく紹介されている。
この基金が丸30年の節目を迎えることができたのは、受託者側の学術交流基金運営委員会の方々のご指導の賜物であることは言うまでもないが、土木学会において学術交流基金を担当する学術交流基金管理委員会の委員各位の尽力の賜物でもある。ここに謝意を表したい。
土木学会の国際化はまだ道半ばであり、今後も力を入れていく必要があると思っている。関係の方々におかれては、本書をひもとくことにより基金の設立時の原点も思い起こしていただき、次の20年、30年さらに基金が活用されるようさらなるご尽力をお願いしたい。会員諸氏におかれても、引き続き土木学会の国際化の歩みを温かく見守っていただくとともに、折節にぜひお力添えをいただければ幸いである。
◇『公益信託土木学会学術交流基金の30年』の目次構成
第1章 学術交流基金設立30周年に寄せるメッセージ
第2章 学術交流基金設立までの経緯
第3章 助成事業の変遷
3.1 助成事業の概要
3.2 各年度の助成事業計画
3.3 助成事業の記録
3.4 助成事業例の紹介
第4章 学術交流基金の活用方針の変遷
4.1 規程に見る助成対象の変遷
4.2 学術交流基金の運用に係る方針策定
4.3 国際化3ヶ年計画
第5章 財務状況の変遷
5.1 学術交流基金の元本
5.2 学術交流基金の収益構成
5.3 助成のための元本取り崩し
5.4 信託財産の国債への運用替え
第6章 学術交流基金の役割と成果
6.1 土木学会における国際化に向けた取り組み
6.2 土木学会国際センターの設置
6.3 土木学会国際センターの活動概要
6.4 学術交流基金の役割と成果
第7章 資料集
7.1 寄付者名簿
7.2 歴代運営委員会委員
7.3 歴代管理委員会委員
7.4 学術交流(海外派遣、日本招聘)助成者一覧
編集を終えて
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≪本件に関するお問い合わせ≫
土木学会 国際センター 事務局 学術交流基金管理委員会担当
TEL:03-3355-3452 FAX:03-5379-0125
Eメール:iad@jsce.or.jp