2015年1月23日
公益社団法人 土木学会
原子力土木委員会委員長 丸山 久一
土木学会が世界にさきがけて刊行した「原子力発電所の津波評価技術」(2002)1)について、東日本大震災での東京電力福島第一原子力発電所の事故に関連して、不十分な理解の下での言説がみられました。それに関しては、既に2011年5月に阪田会長2)、2012年8月には小野会長3)から説明がされています。ここでは、2002年以降の活動を含めて、現在の活動状況を報告します。
1. 「原子力発電所の津波評価技術」(2002)について
「原子力発電所の津波評価技術」(2002)は,「七省庁の手引」(1998)4)に謳われている「既往最大に因われず最新の研究成果から最大規模の津波も計算して対象津波を選定する」という考え方を具体化する一つの手法として提案されたものです。当時,これと同等の手法は世界に見当たらず,この手法はIAEA(国際原子力機関)5)やU.S.NRC(米国原子力規制委員会) 6)にも引用されており、国際的にも認められていたものです。
2. 2002年以降の活動
「原子力発電所の津波評価技術」(2002)策定以降も調査研究活動を継続し,最新のリスク評価手法である確率論的な津波水位推計手法の研究,津波が構造物などに及ぼす波力・波圧に関する研究,津波による地形変化に関する研究等に取り組んでおり,その成果は論文として公表されています。確率論的な津波水位推計手法は「確率論的津波ハザード解析の方法」7)として,土木学会のウェブページにおいて公開されています。
3. 東日本大震災以降の活動
東日本大震災以降は,この巨大津波災害の情報の収集と整理を行うとともに,関連する他学会と連携して新たな津波推計技術の検討を行っています。最新の津波推計の考え方および技術情報をとりまとめ,2015年度に改訂版を発刊する予定です。
1) 「原子力発電所の津波評価技術」(原子力土木委員会 津波評価部会、平成14年2月発行)のPDF版は http://committees.jsce.or.jp/ceofnp/node/5 からダウンロードできます。
2) 「土木学会原子力土木委員会津波評価部会策定の報告書 「原子力発電所の津波評価技術」について」 (平成23年5月10日、土木学会会長名)http://committees.jsce.or.jp/jsceoffice/node/36
3) 「土木学会原子力土木委員会津波評価部会策定の報告書「原子力発電所の津波評価技術」について」(平成24年8月7日、土木学会会長名)http://committees.jsce.or.jp/jsceoffice/node/48
4) 1993年の北海道南西沖地震津波による奥尻島の被害を受けて1998年に公開された「地域防災計画における津波対策強化の手引き」(国の関連7省庁)ここで閲覧することができます。
5) IAEA: Meteorological and Hydrological Hazards in Site Evaluation for Nuclear Installations, Draft Safety Guide, DS417, 2011. PDF版は http://www-pub.iaea.org/MTCD/publications/PDF/Pub1506_web.pdfからダウンロードできます。
6) U.S. NRC: Tsunami Hazard Assessment at Nuclear Power Plant Sites in the United States of America - Final Report (NUREG/CR-6966), 2009. PDF版はhttp://www.nrc.gov/reading-rm/doc-collections/nuregs/contract/cr6966/からダウンロードできます。
7) 「確率論的津波ハザード解析の方法」(原子力土木委員会 津波評価部会、平成23年9月公開)のPDF版はhttp://committees.jsce.or.jp/ceofnp/node/39 からダウンロードできます。