橋梁の維持管理システム研究小委員会概要
1.設立趣旨
建設後50年以上が経過した橋梁は、20年後にはほとんどの地域で半数を超えるため、高齢化した橋梁の維持管理の必要性が従来から指摘されていた。また、首都高速などの都市高速の劣化と改修費、笹子トンネルの事故、静岡県の山間部橋梁の損傷事例などから、インフラの老朽化とその対策が社会問題化している。このような現状に対し、土木学会では社会インフラ維持管理・更新検討タスクフォースを設置し、インフラの維持管理・更新を学会の主要課題として検討を開始した。
構造工学委員会では、インフラの維持管理・更新に関する活動として、土木構造物共通示方書、平成23年度全国大会研究討論会、土木構造物のライフサイクルマネジメント研究委員会などで、材料に特化せず維持管理のあり方を様々な観点から検討してきている。昨年度2月には、国、地方自治体、民間会社での橋梁長寿命化修繕計画の現状を理解し、今後について考えるために、構造工学セミナー「橋梁長寿命化修繕計画の現状と今後」を開催し、多数の技術者が参加した。セミナーでは、①予防保全を理想的に語るだけでなく、老朽化の現状を踏まえた予防保全と事後保全の組合わせのあり方、②様々なレベルの自治体やインフラ事業者での維持管理のあり方、③点検要領が未整備あるいは管理者ごとの不整合の問題、④人材育成・技術伝承の必要性、⑤情報集約や共有化の必要性など、様々な論点が提示された。
構造工学委員会の特徴は特定の材料のみを検討対象としないことにある。また、インフラの維持管理の現場においても材料ごとに管理システムの区別はない。そこで、社会問題化し、今後その必要性・重要性が急速に高まる維持管理の問題に対して、土木構造物のうち、特に橋梁に特化することで、点検から維持管理に至る具体的(実践的)手法の確立を目指した検討を行う。
2.活動内容および成果
点検から維持管理に至る具体的(実践的)手法の確立として、①地方自治体の規模・地域性・技術レベルを考慮した長寿命化修繕計画の作成標準、②各機関で点検マニュアルは存在するが、その上位に位置づけられ、管理レベルも考慮可能な橋梁点検標準の作成、③点検標準だけでなく、診断・評価標準などの作成、を行うための、現状調査や作成方針を検討の柱として、以下の活動を行い、報告書の作成および講習会を行う。
・各機関の橋梁の点検マニュアルの調査と点検実態調査およびその整理
・管理者・民間点検会社、大学、学会などの維持管理技術者役割の検討
・橋梁の診断・評価に関する実態調査および整理
・橋梁に特化したライフサイクルマネジメントの提案(LCM委員会の成果を受けて)
・第一サイクルとしての橋梁の長寿命化修繕計画の実態調査およびその整理
3.活動期間
2年間(なお委員会成果に基づき、点検標準作成委員会の設置を目指す)
4.委員構成
委員長:中村光(名古屋大学)
副委員長:麻生稔彦(山口大学)
幹事長:藤山知加子(法政大学)
・コンクリート委員会、鋼構造委員会、複合構造委員会、マネジメント委員会の方に参加してもらうように依頼する。
・各管理者から委員を募る。