1.はじめに
2.被害概要
2-1 人的被害と住家被害
2-2 土砂災害・河川災害・道路災害の概要
3.災害発生時の降雨特性
4.被災地の地形
4-1 災害状況
4-2 被災地域の形
4-2-1 標高区分
4-2-2 傾斜区分
4-3 調査区域内の崩壊跡地
4-4 五條市長殿の状況
5.被災地の質
5-1 地質・ 地質構造
5-1-1 紀伊半島の地質概況
5-1-2 調査地域の質概況 調査地域の質概況
5-1-3 今回の災害と地質構造関係について
6.各被害 事例報告
6-1 崩壊・河道閉塞
6-1-1 迫
6-1-2 北股
6-1-3 宇井
6-1-4 赤谷
6-1-5 清水
6-1-6 野尻
6-2 土石流
6-2-1 辻堂
6-2-2 長殿
6-3 地すべり
6-4 洪水による施設・構造物の被害
6-4-1 長殿発電所
6-4-2 折立橋
7.おわりに
1.はじめに
平成23年台風第12号(以下,台風12号と略記)は,8月末から9月初めにかけて,広い範囲に大雨をもたらし,紀伊半島を中心に各地で大規模な土砂災害,河川氾濫等が発生し,甚大な人的・物的損害が生じた.全国で死者78名,行方不明者16名にのぼり,和歌山,奈良,三重の3県に人的被害の約9割が集中した.近年では,台風による最大級の被害となった.
土砂災害については,全国で土石流等が92件,地すべりが28件,崖崩れが82件の発生が確認された.そのうち,奈良,和歌山,三重の3県で土石流等58件,地すべり13件,地すべり50件となり,紀伊半島において人的被害をもたらした土砂災害が多発した.
今回の災害の第一の特徴として,土砂災害,河川氾濫が多数発生し,家屋が崩壊土砂に巻き込まれ,また河川の増水によって流出するなどして,多くの尊い人命が失われたこと,また,大規模崩壊に伴う河道閉塞が17箇所で発生したことがあげられる.
第二の特徴として,その後の降雨に対して,河道閉塞による堰き止め湖の越流・決壊が懸念され,住民避難や安全監視など,周辺地域への影響が長期化する事態となったことである.
第三の特徴として,奈良,和歌山,三重の3県での崩壊土砂量は約1億m3にのぼるものと推定されたことである.これより,土砂量の面からも最大級の土砂災害であった.
降雨については,台風12号は大型で動きが遅く,台風周辺の湿った空気が紀伊半島にたえず流れ込んだ.その結果,同じ地域で長時間にわたる記録的な大雨になった.紀伊半島では降り始めの8月30日17時からの総降水量が1,800ミリを超える箇所があった.大台ケ原のような,雨が多い気候を有す地域において,記録的な大雨となったことは驚愕する事実である.
これを受けて,土木学会地盤工学委員会において,表1-1に示す調査団を組織し,行方不明者の捜索活動,被災者の救援活動,道路・橋梁等の復旧工事など現地の諸事情を考慮し,災害発生から約1か月経過した10月7日~9日の3日間,奈良県十津川村を中心に現地調査を実施した.調査範囲および調査箇所はそれぞれ図1-1および表1-2に示している.本調査では,土砂災害の発生状況や特徴について,地盤工学,応用地質学などの見地から調査した.調査結果の概要としては,砂岩頁岩の互層の地質からなる流れ盤の地質構造を有す,北西落ちの斜面において崩壊が発生していた.このことから,記録的な大雨とともに,この地域特有の地質および地質構造が崩壊の発生要因として考えられる.
本報告では,今回の調査結果をもとに,被害の概要,災害発生時の降雨特性,被災地の地形・地質,崩壊・土石流・地すべりなど各崩壊事例について速報として取りまとめた.
添付 | サイズ |
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平成23年台風第12号土砂災害調査報告書(PDF) | 3.28 MB |