土木構造物は人々の日常生活に不可欠な社会インフラであり、工事実施には近隣住民および工事に携わる関係者の、相互の協力と理解が必要である。本書では土木工事の準備から完成までの流れ、現場での高度な施工・安全・環境配慮の技術が多数のイラストで分かりやすく説明されている。本書を一読することで、様々な人々の工事への理解が深まることだろう。
序章でまず、計画から施工に至る土木工事共通の流れを説明している。続いて橋・トンネル・道路・河川構造物とダム・鉄道の地下駅・港・海上空港の、施工開始から完成までを、施工順序に従って説いている。最後に環境への取組と、土木技術者の将来展望を扱い、土木工事をより広く紹介している。
鳥瞰図イラストは美しく見やすい。現場の雰囲気が自然にかつ迫力をもって描かれていることに感心させられる。文章記述とイラストが絶妙なバランスで分かりやすく表現されている。イラストレーターと技術者執筆陣とのすばらしい協力関係の結果であろう。分かりづらい専門的事項・用語も、視覚的に容易に理解できるようになっている。土木技術者も専門分野以外の工事を理解するために1冊備えていても良いのではないか。
本書は土木工事に対する社会の関心を高めること、および土木技術者の専門的教養を高めることに寄与するものである。よって、ここに土木学会出版文化賞を授与する。