道路、鉄道、空港・港湾、上下水道、ダム、橋りょう・トンネル等の様々な土木施設は、人々の日々の生活を支える社会インフラとして計画され、長期に渡り活躍している。日常の中で当たり前のように存在している土木施設だが、建設の背景や建設時の状況を知ること、あるいはその見方を変えることで新たな魅力に気づかされる。
本書では、4つの物語を構成する22の“EPISODE”の中で、厳選された写真やイラストにより、日本の「土木」の名場面が綴られている。読み進める中で、“DISCOVER DOBOKU”というタイトルの通り、土木構造物の荘厳さ・雄大さ、先人技術者から受け継がれてきたレガシー、計画・設計・施工の各段階で磨かれてきた気高い技術、アートとして捉えられる美しさ等について、発見あるいは再発見させられ、まさに「土木が好きになる」ことができる。昨今美しい土木構造物を紹介する書籍が増えてきているが、本書は施工中の状況、建設機械、FEM解析のコンター図等も取り上げ、「土木」の名場面にこだわっており、他の著書と一線を画している。
本書は、インパクトのある写真・図とポップな文章で構成され、専門技術者だけでなく一般の読者にも読み進めやすい内容となっている。土木施設や土木という仕事の意義や魅力を後世に伝えていくこと、土木分野に対する社会の関心を高めることに大いに貢献することが期待され、高く評価できる。よって、ここに土木学会出版文化賞を授与する。
吉川 弘道