車両が橋梁上を走行することによって橋梁から発生する振動・騒音問題は,交通量,橋梁形 式,立地条件等の様々な要因が複雑に絡み合っているために解決が困難である.対策方法としてすべての事例に対して同じ方法を用いるのではなく,現況の要因 を分析し,コストや施工方法等の制約条件を考慮し,様々な対策方法を検討することによって最も効果のある方法を採用することが理想的であると考えられる.
しかしながら,これまで既設橋梁に対する振動・騒音対策の事例は,失敗・成功に拘らず様々 なデータが蓄積されているにも拘らず,実際には諸事情により公表されないことが多く,別の事例に活かされず,同じ失敗を繰り返すこともある.また,十分な 現況の要因分析や対策方法の検討を行わず対策の施工を行っている現状も見受けられる.
このような状況に対して,これまでの「鋼橋の振動・騒音に関する環境負荷低減工法の評価検討小委員会」の活動成果を踏まえ,既設橋梁に対する振 動・騒音対策の事例から問題を生じやすい橋梁の要因分析を行い,まとめることで有用な傾向を見出し,その情報をまとめ,提供することが重要であると考えら れる.
さらに,それらのデータをもとに,新設橋梁に対しては計画・設計段階において,また既設橋梁に対しては供用期間において発生が懸念される振動・騒音を予測 し,快適な橋梁周辺環境を提供できる使用性能を有した橋梁の計画・設計および維持管理に活用できるような情報をまとめることが重要である.また,それらの データを提供することが今後の振動・騒音問題に対する予防になるものと考えられる.
本小委員会では,性能設計へと移行しつつある状況において,新設橋梁に対しては振動や騒音問題を生じにくい新設橋梁を建設するための計画・設計・ 施工上の“使用性能評価項目”を,既設橋梁に対しては供用中に振動や騒音問題を生じさせないための維持管理上の“使用性能評価項目”を構築し,それらを技 術資料として刊行することを目的として活動する.また,活動期間は目標として2年間とする.