趣旨
2006年に改正された教育基本法では、「公共の精神」「環境の保全」「伝統と文化の尊重」等が初等中等教育の基本目標として具体的に掲げられている。こうした基本目標を達成するための主要テーマの一つとして、河川や交通、都市・地域や防災に関わる土木における種々の営みを挙げることができる。土木は、例えば公共のために各種事業を成すものであるという点に着目すれば公共の精神の涵養に繋がり得るものであり、河川や道、町並み等が長い歴史の中で整えられてきたという点に着目すれば「伝統と文化の尊重」に繋がり得る。そして「環境の保存」については、そのための各種の河川や環境保全のための諸事業がその題材として考えられるところである。さらには、現実の構造物を取り扱う土木工学は、生活感ある形での理科教育にも援用できる可能性も考えられる。これらの点から、土木が学校教育に直接・間接に貢献しうる可能性は大きい。
一方、社会基盤整備が遅れ、多くの国民がその必要性を肌で感じていたかつての時代とは異なり、現代では、社会基盤の計画、建設、維持、活用等の土木関連の諸営為が、「人の手」によって日夜続けられていることを知らない国民が増加している。ところが、この無関心は、社会資本の質的な劣化を直接的にもたらす重大な社会問題となっている。なぜなら、道や川、そして、まちの形などの様々な社会資本は、それらに対する国民ひとりひとりの関心、ひいては、国民ひとりひとりの主体的な参画があってはじめて良質なるものと成り得るものだからである。それ故、現代社会においては、適切な社会資本の整備と運営のためにも、国民の公民的資質、ないしはシティズンシップを高める教育が強く求められているのである。
ここで、全国の「全て」の児童・生徒が、道や川、まちといった土木が取り扱っている種々の社会基盤に、日常生活の中で「毎日」触れているという事実に着目するのなら、そのあり方に関心を持ち、その計画や維持、活用などに主体的に参加することを促す教育は、児童・生徒のシティズンシップの涵養教育を行う上でまたとない機会を提供するものとなるとも言えるであろう。
本小委員会は、以上の認識の下、新しい教育基本法の考え方を十分に踏まえつつ、初等中等教育における児童・生徒のシティズンシップ教育に資することを企図し、道や川、まちといった様々な社会基盤・公共財を題材とした初等中等教育のあり方を考え、そしてそれを具体的に実践していくことを目的とするものである。そして、その目的の下、「全国」の土木と学校教育の双方の専門家と実践者が集まり、種々の研究発表、事例紹介を行い、討議する場として「土木と学校教育会議(通称として、土木と学校教育フォーラムを使用)」を設置し、それを定期的に開催・運営していくことを主たる活動とするものである。
活動にあたっては、上記趣旨において述べたように、「全国の土木と学校教育の双方の専門家と実践者が集まり、種々の研究発表、事例紹介を行い、討議する場としての"土木と学校教育会議(通称として、土木と学校教育フォーラムを使用)"の設置・運営」を主たる活動とする一方で、土木を題材とした各種教育のあり方の検討とその実践を進めることを目途とした以下のような諸活動もあわせて推進していくものである。