国土基盤モデル小委員会は,コンピュータシステムを中心とした情報基盤と道路やダムのような実社会基盤を情報電子技術によって統合化した「国土基盤モデル」に関する調査研究を行う目的で平成18年に設立された.設立からの活動経緯は以下のとおり.
・第1期:平成18年6月 ~ 平成20年5月
・第2期:平成20年6月 ~ 平成22年5月
・第3期:平成22年6月 ~ 平成24年5月
・第4期:平成24年6月 ~ 平成26年5月
・第5期:平成26年6月 ~ 平成28年5月(継続中)
1.研究活動の目的
ここ20年程の間に,パソコン,インターネット,3次元CAD/CG,各種ソフトウェア等の情報技術が大幅に進化してきたことにより,「サイバーワールド(サイバースペース)」と呼ばれる仮想現実の情報世界が形成されつつある.サイバーワールドでは土木構造物や都市・自然空間をコンピュータ上に表現し,様々なシミュレーションを行い,センサーデータや情報を一般に公開することにより共有し,オープンな議論をすることができる.こうしたサイバーワールドは,土木構造物の計画,設計,施工,維持管理の効率化を図るとともに,利用者等への情報提供や各種支援も行う情報基盤になり得ると考えられる.
一方,土木構造物等の社会基盤施設は現実世界のもの,すなわち実社会基盤であるから,サイバーワールドが現実から遊離したものでは意味がない.そこで,測量,センサーネットワークやICタグ(RFID)等によって,情報基盤と実社会基盤を融合することが重要だと考えられる.さらに,情報基盤から実社会基盤の人々や機器類等に指令や支援といった各種情報を与えることにより,全体として安全・安心で快適な社会や経済発展につながり,実社会基盤がその価値を向上あるいは創造することが可能になる新しいモデル「国土基盤モデル」を構築することが,将来のために重要な課題だと考えられる.国土基盤モデルは,サイバーワールドの情報基盤と実社会基盤を情報により統合化した国土の基盤となり得るモデルと定義する.新規の建設工事額が減少する中,国土基盤モデルにより既存の社会基盤に新しい価値を創造させることが,土木技術が将来生き残り,繁栄していくための重要な一つの手段であると考えられる.
そこで,本小委員会では,国土基盤モデルの実現に必要な3要素,すなわち,1)サイバーワールドを形成するために必要な情報基盤モデル,2)実社会基盤におけるセンサー類,および3)サイバーワールドと実社会基盤をリンクするための技術,に関する調査研究を行い,今後の国土基盤モデルがいかなる形態をなすべきなのかを,理論と実践に立脚し,実装(インプリメンテーション)を意識しながら,産官学で検討の上,世に対して提言していきたい.
2.研究活動の範囲
本小委員会の研究活動の範囲は,以下の通りである.
① 国土基盤モデルに関する情報収集
② 国土基盤モデルのビジョン, 将来像の策定
③ 国土基盤モデルによる価値創造・価値向上の提案
④ 国土基盤モデルのプロトタイプの実装によるデモンストレーション
以上