会長 阪田 憲次
土木学会は、4月1日より公益社団法人土木学会として新たな出発をした。2006年5月に成立した公益法人制度改革関連3法が2008年12月に施行され、土木学会は特例民法法人として移行期間に入っていた。事務局内に設けられたタスクフォースでの作業および理事会での議論を経て、2010年3月に公益社団法人として移行申請していたものが、ようやく認定されたのである。ここに至るまでの間、歴代の会長、理事および事務局職員の諸氏には大変なご苦労をおかけした。そのご努力に対し、心より御礼を申し上げたい。
さて、土木学会の諸事業は、本来、公益的なものであり、公益認定を受けることは当然のことであると思われる。ただ、上記関連3法に定められた認定基準には、認定後の学会運営上で考慮しなければならない若干の問題がある。それは、以下の2点である。
学会が行う事業は、公益目的事業と収益目的事業等とに、大きく分けられる。
1) その公益目的事業の全体に対する比率が50%以上であること、
2) 個々の公益目的事業の実施に要する費用を上回るような収入を得てはならない(収支相償)ということである。
現在、土木学会が行っている事業は、ほとんどが公益事業であり、その比率は86.7%である。また、2)の条件である収支相償を満足している。これは、換言すれば、財政が逼迫していることを意味するものである。財政再建3カ年計画を実施し、会員の皆様のご協力により、財政改善の成果が上がっているが、それも限界に近い。今後の運営においては、土木学会の諸事業の遂行を妨げることがないよう、上記の基準を守りつつ、会費および収益目的事業を含めた収入の増加を図ることが望まれる。
新しい公益法人においては、自らの責任の下で、自主的、自律的に運営を行うことができるが、それと引き替えに内部統治の徹底が求められる。総会および理事会の機能、権限が明確になり、理事には業務執行に法的な責任を持つことになる。本部と支部の一体的運営により、より緊密な連携が求められる。
公益社団法人へ移行した土木学会の運営において求められていることは、その公益性を強く意識した運営である。土木学会は、2014年に100周年を迎える。この100年間における土木学会とその会員の営為を振り返り、次の100年への展望を拓くため、土木の原点に立ち返り、「土木とは何か?」と問いなおすことを記念事業のテーマと決めた。そんなとき、東北地方太平洋沖地震がわが国を襲った。マグニチュード9.0 という巨大地震が10mを超えるような大きな津波を伴い、東北から関東へかけての広範囲の地域を蹂躙した。いま、土木学会とその会員ができること、なすべきことは多い。被災された方々と、手を携えて地域の再生を図ることである。それは、土木学会の公益性を考えることに繋がるものであり、それを行為として表すことである。公益社団法人土木学会の真価を発揮すべきときである。
公益社団法人への移行の経緯
土木学会は2011年3月30日内閣府公益認定等委員会より通知を受け、4月1日には登記を終えて新しい公益社団法人になりました。未曾有の大震災からの力強い復興に大きな貢献が求められる今、その意味は大きい。
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