1.断層変位による社会基盤施設の被害事例
1999年台湾集々地震によるコンクリートダムの被害例およびトルコ・コジャエリ地震による高速道路跨道橋の落橋などの事例を紹介する。
我国で断層変位によって社会基盤施設が直接的に被害を受けた事例は少ないが、1923年関東地震および1978年伊豆大島近海地震による鉄道トンネルの被害事例および1995年兵庫県南部地震による明石海峡大橋の例を紹介する。
2.社会基盤施設の断層変位への対策事例
東海道新幹線の富士川橋梁の対策および山陽新幹線新神戸駅駅舎の断層変位対策を紹介するとともに、海外での事例としてニュージーランド南島のコンクリート重力式ダム(クライドダム)および米国オークランド市の水道幹線の対策について述べる。
3.原子力発電所の断層変位に対する安全性検討への所感
土木学会の原子力土木委員会断層変位小委員会において、断層変位が原子炉建屋等の構造物、施設にどのような被害を発生させるかを検討していることは大いに評価される。解析や前提条件設定の精度を今後一層改良し、原子力発電所に要求される機能「止める」「冷やす」「閉じこめる」にどのような定量的影響を与えるのかを検討すべきである。断層変位小委員会で検討した内容については、土木学会の共通認識とするとともに、土木学会のみならず、原子力学会、機械学会、建築学会などの関連学会とも連携して、それらの成果を社会・マスコミ等に発信していくべきであると考える。
「京」計算機のような大規模並列計算を利用することで,詳細なモデルを高速に解くことや,極めて多数のケースを解くことが可能になった.このようなHigh Performance Computing (HPC) を応用することで,実験・観測では難しかった予測が可能となる場合もある.例えば,有限要素法による100億自由度の非線形動的問題の解析がHPCの応用の一つである.強震動や地表断層変位が直近の構造物に対する影響を評価する断層問題に対しても,HPCによる予測が新しい貢献をする可能性がある.本講演では,耐震・防災に関する地震工学の問題に対するHPCの応用例を示すとともに,断層問題に対するHPCの応用の可能性を説明する.