社会安全研究会中間報告発表に当たって
3.11東日本大震災は、安全安心な国づくりを営々として進めてきた我々科学・技術者に対する国民の信頼に大きな疑念を生じさせることになった。大きく損なわれた科学・技術者に対する信頼をどのように回復するべきか、土木学会では東日本大震災特別委員会の特別活動として「社会安全研究会」を設け、この一年間にわたり続けられてきた“社会安全”についての様々な議論を集約し、さらなる具体的な議論へと発展させて、社会安全に向けて責任を果たすべく中間的な取りまとめを行った。
土木界では今までは防災という枠組みの中でかつ設計者・計画者の立場から議論が中心となっていた。しかし国民・市民の命を守ることという究極の目標を視点に据えたとき、設計者・事業者の立場を超えて、システム安全にかかわる事業者の立場や自らを市民の立場から見ることへと発展しなければいけない。このため社会安全という幅広い概念を現す言葉を用いて、土木の総合性、市民工学への原点回帰をめざし、安全を総体として捉える哲学・計画論を構築し、社会的な運動論へと発展させるという目的を示すこととした。
本とりまとめは、有識者へのインタビューを含め、多様な考え方を例示的にまとめたものであり、今後更に論理を整理のうえ、社会安全の思想・哲学、更に地域BCPなどの構築に役立てて実施に移していこうと考えている。中間報告の形で発表したのは、少しでも早く、多くの土木技術者がここに示した考え方を参考にしつつ、それぞれの関係する事業の真の安全性向上に寄与してゆくことを期待しているからである。さらに土木技術者は自己の技術の範囲内で工夫改善を実施するだけでなく、さらに市民の立場を含む広範な視点から、連携の必要な他分野の専門家とも手を携えて行動を起こしてゆくことも必要である。本中間報告がこのような、新しい技術者意識の変革のきっかけとなることを期待する。
2012年7月
社会安全研究会 委員長 山本卓朗
添付 | サイズ |
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東日本大震災特別委員会 社会安全研究会中間とりまとめ 「技術者への信頼を回復するために」(PDF) | 2.17 MB |
付属資料1 土木学会誌会長メッセージ(PDF) | 5.73 MB |
付属資料2 シンポジウム講演資料(PDF) | 19.38 MB |
付属資料3 有識者会議土木学会誌記事(PDF) | 5.91 MB |