小委員会設置の趣旨
社会基盤施設の老朽化や劣化による損傷が顕在化している状況の中,国土交通省は長さ2m以上の橋について,5年に1回の近接目視を基本とする点検を省令で規定する状況に至っている.しかし技術者不足や厳しい財政状況などから,近接目視を基本とする点検を補完できる技術として,モニタリング技術の利用が再び議論されている.土木学会構造工学委員会の「既設構造物を対象とした安全性評価研究小委員会」,「構造物ヘルスモニタリングにおける意思決定手法研究小委員会」では,モニタリングによる社会基盤施設の点検につて議論されてきた.
特に「構造物ヘルスモニタリングにおける意思決定手法研究小委員会」では,目視点検における構造物ヘルスモニタリングの位置付けや意思決定のための統計的な仕組みについて検討された.しかしながら,モニタリング結果と構造物の性能との関連性を調べるいわゆる臨床データがほとんど無いことから,構造物ヘルスモニタリングの統計的な考え方に基づく意思決定と構造物の性能との関連性評価は,課題として残された.後続の「構造ヘルスモニタリングと目視点検の融合に関する研究小委員会」では,構造物の状態に係る異質情報の融合による社会基盤施設の維持管理の効率化と対象構造物の性能評価の可能性について議論してきた.その結果,異質情報の管理および双方向をリンクする基盤(プラットフォーム)として,BIM/CIMの活用が報告された. 一方で, Society 5.0でも強調されたサイバー空間とフィジカル空間との融合を実現するためには,要素技術の精度向上と要素技術同士の有機的な繋がりについて,本格的に検討する必要性があることが提言された.
本小委員会の目的は,インフラ維持管理に活用できるサイバー空間およびフィジカル空間上の情報や要素技術を評価・分類し,情報や要素技術同士の有機的な繋がりを模索するものである.具体的には,各種モニタリングデータの特性,新・旧モニタリングデータの標準化,計測における誤差について議論を行う.それと同時に,構造物の性能予測を実現するための目視点検,センサ情報と力学情報との融合方法について検討を行う計画である.また,これらの方法論を着実に次代に普及させるための体系化についても検討を始める.
ここに示したような検討項目を小委員会の活動成果としてまとめ,構造工学技術シリーズとして出版する予定である.社会インフラの維持管理が喫緊の課題である中,本小委員会活動が橋梁の維持管理に携わる技術者・管理者の方々に少しでも役立てるよう務める所存である.
小委員会構成
役職 |
氏名 |
所属 |
委員長 |
宮森保紀 |
北海道大学 工学研究院土木工学部門 |
副委員長 |
八ツ元仁 |
阪神高速道路株式会社 管理本部 管理企画部 保全技術課 |
委員・幹事 |
竹谷晃一 |
東京科学大学 環境・社会理工学院 土木・環境工学系 |
委員・幹事 |
五井良直 |
岐阜大学 工学部社会基盤工学科 |
委員・幹事 |
北原優 |
北海道大学 工学研究院 土木工学部門 |
委員(顧問) |
北原武嗣 |
関東学院大学 理工学部 土木学系 |
委員(顧問) |
金哲佑 |
京都大学 |
委員 |
北川寛和 |
中日本高速道路株式会社 名古屋支社 多治見保全・サービスセンター |
委員 |
栗原幸也 |
東電設計株式会社 PS送電部 |
委員 |
門田峰典 |
北見工業大学 社会環境系 |
委員 |
髙瀬和男 |
京都大学 大学院地球環境学堂 客員教授 |
委員 |
河邊大剛 |
京都大学 大学院地球環境学堂 研究員 |
委員 |
脇阪大地 |
パシフィックコンサルタンツ株式会社 交通基盤事業本部 インフラマネジメント部 橋梁保全室 |
委員 |
前田純輝 |
首都高速道路株式会社 保全・交通部 点検・補修推進室 保全技術課 |
委員 |
大町正和 |
株式会社計測リサーチコンサルタント 事業推進部 |
委員 |
木本啓介 |
株式会社計測リサーチコンサルタント クリエイティブ事業部 |
委員 |
戸田圭彦 |
JIPテクノサイエンス株式会社 システム技術研究所 |
委員 |
田代大樹 |
大日本ダイヤコンサルタント株式会社 九州支社 技術第1部 構造保全計画室 |
委員 |
玉井誠司 |
清水建設株式会社 土木技術本部設計第一部 |
委員 |
豊岡亮洋 |
公益財団法人鉄道総合技術研究所 鉄道地震工学研究センター |
委員 |
井上和真 |
立命館大学 理工学部 環境都市工学科 |