公益社団法人土木学会技術推進機構アセットマネジメントシステム実装のための実践研究委員会が募集する「平成28年度 地方公共団体におけるアセットマネジメントシステムモデル事業」に応募頂き、ありがとうございました。応募いただいた事業について、①先進性、②汎用性、③実現性の観点から、委員会において審査した結果、以下の4自治体が平成28年度のモデル事業として選定されましたのでお知らせいたします。
①三重県桑名市 ・モデル事業名;高齢化する街の再生を目指したインフラ施設及び維持管理のモデル事業 ・事業の特徴;対象とする大山田地区は、1970年代後半から宅地開発が進められ、近年、住民の高齢化及びインフラ施設の老朽化が進むなど課題となっている。本事業では、インフラ施設の質を落とさず、まちづくりの方針に適した再整備と維持管理を実現するモデルの実装を目指す。具体的には、人口動態、地理的状況、地域住民の意向等を踏まえ、バリアフリー化や街路樹の間引き等の「省インフラ」を見据えた再整備・維持管理および業務委託マネジメントのモデルを構築する。そこで、本年度は、街路樹と公園植栽等を対象にモデルを構築し、次年度以降、他の施設へ展開する。 また、まちづくりの方針と地域特性の観点を踏まえた再整備・維持管理に向けて、管理者のマネジメント領域、民間事業者の現場実務領域、地域住民の三者が課題を共有する体制構築を目指す。本事業は、基礎自治体での例は少なく、先進性を有するモデルとなり得るとともに、大都市に近接した郊外都市におけるモデル例として汎用性も高い。また、対象地区と施設を絞り込むことで取り組みやすく実現性も高いと考えられる。
②東京都町田市 ・モデル事業名:町田市道路資産管理計画改訂事業 ・事業の特徴:町田市の道路資産管理計画は、2006年~2009年度に策定されたものであるが、その後予防保全型、予算平準化への転換として想定した金額と各年度の予算額に差が発生している。策定から5年以上が経過した現在では計画と実態の乖離が拡大しているものの、その影響の検証及び計画の修正には着手できていない。一方で、町田市の道路資産管理計画が対象とする道路施設のうち、橋梁、幹線・準幹線道路は対象物の数が限定されていること、施設としての重要性が高いことから、継続的に全施設の点検を実施している。そこで、これらの点検結果や毎年度の維持補修費の実績などの情報を入力することにより、維持補修費の年度別推計や予算平準化モデルの作成を、職員の手により簡便に行えるよう、現在の計画の改訂を行う。これにより、予算制約という自治体にとって普遍的な課題に対応し、経済、社会情勢に応じた運用、更新がリアルタイムで可能となる計画へと転換を図る。
③北海道津別町 ・モデル事業名:積雪寒冷地の低密度自治体におけるアセットマネジメント最適化計画策定事業 ・事業の特徴:津別町は、面積が広大(716.6k㎡)で人口が少なく(5,108人)人口密度が低い(7.1人/k㎡)ことに加え、積雪寒冷地で人口1人当たりのインフラ維持管理コスト負担が極めて大きく課題となっています(公共施設等総合管理計画も未策定で平成28年度策定予定)。公共施設等の情報、データ管理及び維持管理データのシステム化による総合的な管理手法を整備し、持続可能なアセットマネジメント手法の確立を図ります。また、築57年が経過する耐震化未済の役場本庁舎は、中心市街地の再整備計画など公共施設の統廃合や再配置計画の策定手法を本モデル事業を通じて開発することで、その他の公共施設等のアセットメネジメントも適切に行える体制を整備し、持続可能な自治体運営のための基盤を整備します。人口減少・過疎化、積雪寒冷地の課題先進地のアセットメネジメント手法を確立することで、課題解決先進地となり、他自治体の先進事例モデルとなることを目標とします。
④静岡県富士市 ・モデル事業名:持続可能なインフラマネジメントの仕組み構築を推進するためのモデル事業 ・事業の特徴:富士市では平成21年度に「富士市橋梁長寿命化修繕計画」を策定し、計画的な維持・補修による橋梁の長寿命化に取り組んできました。その後、新東名高速道路の開通に伴って、対象橋梁を拡大し、最新の点検結果や現行計画の運用上の課題を踏まえた上で、効率的かつ効果的な「富士市橋梁長寿命化修繕計画(第1回更新)」を平成26年度に策定したところであります。 当該計画については、維持管理等のサイクルを概ね回せてはいるものの、修繕工事で不調・不落があることや、計画の中で設定した財源を確保して、計画どおりにPDCAサイクルを回すことが困難になっていることなど、部分的に課題を残している状況にあります。このため、部分的に残されている課題を明確に整理した上で、課題解決に向けた方策を検討し、富士市にとって望ましいモデル事業の方式に当てはめていく業務を実施するとともに、土木インフラ全体を対象としたマネジメント体制の構築にも併せて取り組んでいくものであります。
(公益社団法人)土木学会技術推進機構
アセットマネジメントシステム実装のための実践研究委員会
委員長 小澤 一雅