論説委員 國生 剛治 中央大学
社会の複雑化・ソフト化により,実際の現場がどうなっているかを良く見ていない技術者が重要な判断をする場面が増え,それが社会の根幹を揺るがす問題に繋がっていることを,近年の社会インフラに関わる事故から感じることが多い。大学の教育現場でもハードからソフト化への流れによって,現場での実現象よりは理論や解析技術の学習であたかもハードを含めた全体像を知り得たような錯覚に陥る学生が輩出されているのではないだろうか。コンサルタント技術者は現場に行って実際の現象を見るよりはマニュアルとPCを相手に既成ソフトで得られた解をそのまま設計値とし,発注側もその信頼度の評価力もないということになっていないか。大学だけでなく社会全体で,現場で実際に何が起こっているかを大切にする風土を育て,特に重要な判断をする幹部技術者は優秀さに加え現場の鬼と言われるような人物が選ばれるような風土を広めていくことが必要である。
(2014年11月版)
第90回論説(2) 現場第一主義の技術者を如何に育てるか
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